樺太からモンゴル国境、東南アジアの島々まで、日本軍の行くところ、軍医たちの姿があった。
15編の短編小説が収録されていて、すべて違う舞台・主人公ですが、すべて軍医が主人公です。
膨大な資料(学術論文含む)を背景に、まるで体験してきたかでもあるようなリアルさで迫ってきます。
作者が現役の医師であることもあって、医療行為などは自分の体験ももとになっているのでしょう。
薬も食料も不足する中で、栄養不足、伝染病、重傷者と対峙した医師たちの苦闘の物語となります。
原爆・空襲の現場から、米軍・ソ連軍侵攻の中、病院に踏みとどまって職務を全うする医師たちの姿がそこにありました。
それは無力感との闘いの中で勝ち取らなければならない使命感に感動を覚えました。