ロリータファッション、少し古くはロリコン(ロリータコンプレックス)の語源となった小説です。
十九世紀ころの古い小説だと思っていましたが、1955年に刊行されたけっこう新しい作品だったのは意外でした。
正直、偏見から一生読むことはない本の一冊だと思っていましたが、新潮文庫の百冊に入ったことから、そんなに文学しているの? という好奇心で読了にいたりました。
確かに、序盤は、ロリコンの語源にふさわしい内容(エロチックという意味ではなく少女称賛ということ)です。
中年男がローティーンの少女のすばらしさを語るのですが、読者はそんな話を誰も読みたくないので、作者としては読者の興味を引くために、謎を置き、ユーモアを交え、下品で俗物的な興味本位な引きまでして、涙ぐましい小説テクニックを見せてくれます。
最後まで読むと、幻想に生きる男と、現実に生きる女の姿だったかなと思いました。
主人公はストーカーの素質が十分で、ストーカーなら超えない一線を越える犯罪者なのだから始末が悪いヤツなのです。
物語の最後は、主人公の自己中心的な独善で、なんとなく後味が悪くないように言いくるめられて終わるところは、苦笑いしか起きません。
毛色が変わった後味が残ります。
しかし、読者の期待を上手に裏切り続けるストーリー展開や、謎のかけ方など、小説テクニックとして参考になりますし、何といってもいろいろな魅力的な少女の描写などはラノベ作家志望の人には一読の価値があります。
そういう意味ではクロート好みの小説なのでしょう。