ホスピスを中心とした静かな町。
中央の黄身の部分に公園があり、あとはホスピスと住宅地くらいしかない。
いつも曇っていて卵の中から殻(空)を見るとこんな感じかもしれないとは、主人公の談。
自分が最期を穏やかに迎えたいと思っている人も多いと思いますが、卵町はそんな願いを叶えてくれるところのようです。
商店もないので、元気な人には住みにくい町なのですが、この町で最期を迎える人にとっては静かなよい町なのです。
主人公は、母が亡くなる直前に、結婚前に共に働いていた卵町の友人に自分が死んだことを伝えてほしいと言う遺言を果たすため、卵町へやってくることから始まります。
卵町では個人のプライバシーを厳守しており、なかなか捜索が進まず、その間にキーとなる人物たちに出会います。
母の友人に会って、母の過去を知ることとなりますが、日数がかかっているため卵町自体に離れがたい感情が芽生えていきます。
そして、卵町の一年に一度のフェスティバルの日に奇跡が起こるのです。
あまり評価されていない作品ですが、ホスピスについて興味があったので楽しく読めましたし、一つの終末施設の提言としてもよい小説だと思いました。