ちゃ~すが・タマ(冷や汗日記)

冷や汗かきかきの挨拶などを順次掲載

岸宣仁『財務官僚の出世と人事』文春新書

2010年09月05日 00時17分44秒 | 
東京への出張中、新幹線の中でよんだ。

読売新聞記者であった著者による、大蔵省、財務省の取材の経験をもとに官僚の出世を巡る攻防と財務省の仕事の中身の一端を記したもの。
8月末に概算要求が出され、財務省の査定と政策コンテストの動向を見つめる立場から、官僚の出世なども含めて泥臭い、人間の仕事としても見ておきたい。財務省は、守りの官庁故に、その官僚は若い内から言質を与えない会話の訓練を受けているかのように口が堅いという。守りの姿勢と官僚主義との因果関係は、身近なものとしても感じられる。しかし、「理」と「情」という観点からの人物評などもあり、人間くさかったり、懐の深さだったり、人間的な味であったり…そんなところも大事なのかなとも思える。

はじめに
第1章 10年に1人の大物次官・斉藤次郎
第2章 花の41年組
第3章 大蔵一家のドン・山口組
第4章 大蔵vs日銀
第5章 非主流の国際派とミスター円
第6章 入省成績と出世の相関関係
おわりに

雨宮昭一『占領と改革』岩波新書

2010年09月04日 14時27分18秒 | 
雨宮昭一『占領と改革』岩波新書

新書編集部平田賢一の紹介

これまで戦後改革を語る時、新憲法制定、財閥解体、農地改革、女性参政権、教育の民主化など一連の戦後改革は連合国総司令部(GHQ)の占領政策によるものといわれてきた。しかし、この本では、GHQの占領政策は戦後改革を促進はしたが、その原点は戦時中の総力戦体制の時代に培われていたと主張する。

 日本近現代史研究をふりかえってみると、研究状況はそのような流れになってきているようである。早くも1960年代には大正デモクラシーを戦後改革の先駆とみる見方が出はじめ、日本人自らによる改革の底流があったことを示した。さらに80年代後半に入ると、敗戦前の総力戦体制の時代の政治や社会の中にこそ戦後改革への道が準備されていたことを主張する研究が登場してきた。雨宮『戦時戦後体制論』(1997)は、その成果の一つといわれている。このような考え方はまだ一般にはあまり浸透していないが、研究レヴェルでは一つのパラダイム転換をおこしたものといわれている。
 本書はそのような斬新な視角から、占領と改革の時代にかんする最新の研究成果をふまえて、戦後改革がどのようにおこなわれたのか、その実態を描きだしている。戦後とは何だったのかを考えなおす一冊。

目次
はじめに
第1章 戦後国際体制の形成と日本の敗戦
1 総力戦体制と敗戦
2 戦後国際体制の形成
3 敗戦への道
第2章 非軍事化と民主化
1 占領体制の形成
2 占領改革の実施
3 東京裁判と戦争責任
4 民主化政策の諸相
第3章 新憲法の形成へ
1 憲法改正をめぐって
2 アメリカ政府とGHQ
3 GHQの憲法草案
4 国内の諸憲法案と憲法体制の成立
第4章 政党勢力と大衆運動
1 敗戦と日本の指導者たち
2 敗戦前後の政党再編
3 GHQと公職追放
4 自由主義派と協同主義派
第5章 中道内閣の展開と自由主義派の結集
1 片山連立内閣の時代
2 芦田中道内閣の成立
3 冷戦と占領政策の転換
4 ドッジ・ラインと社会の再編
第6章 戦後体制の形成
1 諸勢力の体制構想
2 一九五〇年代の日本社会
おわりに
 あとがき
 参考文献/略年表/索引