ちゃ~すが・タマ(冷や汗日記)

冷や汗かきかきの挨拶などを順次掲載

小杉健治『声なき叫び』2016年

2018年06月29日 15時56分20秒 | 

小杉健治『声なき叫び』双葉社、2016年

「自転車で蛇行運転をしていた青年が、警察官に捕まり、取り押さえられているときに死亡した。
警察官の暴行を目撃した複数の人間がいるにもかかわらず、県警は正当な職務だと主張するのだった。
青年の父親の依頼で水木弁護士が動いたのだが……。 」

ここまで、警察・検察、そして裁判所はやるかというほどの書きぶり・・・。しかし、現実にあった知的障害のある青年を襲った事件に素材をとっている。安永健太さんの事件であり、警察に暴行をうけて死亡した安永さんの事件である。

2007年9月25日、佐賀でおきた安永健太さん死亡事件は、2012年9月、刑事事件の判決で警察側の無罪が確定しました。しかし、刑事事件が無罪でも、民事訴訟において警察の行為が違法と認定される場合はあります。そのためご遺族は民事訴訟での審理を求めましたが、2014年2月佐賀地裁判決、2015年12月福岡高裁判決はいずれも警察に違法はないとの判決を下しました.「障害」の本質とは何かを問い、障害者権利条約を批准した国にふさわしい結論を切に願います。そのため2015年12月25日、ご遺族は最高裁判所に上告しました。


黒柳徹子『小さいころに置いてきたもの』新潮文庫

2018年06月17日 00時26分30秒 | 

引き続き、黒柳徹子本

『小さいころに置いてきたもの』(もともとは、2009年に新潮社より刊行されたもの、文庫版は2012年)を読んだ。パンダのはなしやらパチンコの話などが多いが、赤塚不二夫の思いでッ話は漫画家赤塚の人柄が偲ばれて印象深い)。

立ったぞ!!/サプライズパーティ/女流作家/四十五年ぶりのハワイ/彼の青空/久世光彦さんⅡ/西アフリカ・コートジボワール報告/女流作家M・Mさん/いびき/「本当に、いいんですね」/世にもおもしろいエキストラがいた/なんと難しい決断/英国貴族の年越し/アンゴラ報告/ホロビッツさんのハンカチ/ヤンキースタジアム/赤塚不二夫さんのこと/好奇心から生まれるもの/『窓ぎわのトットちゃん』/父のことを少々/ネパールのヤモリ/解説笹本恒子

こうして、目次を書いてみると、何が書いてあったのか記憶がないところが多い。すぐわすれる。探偵ナイトスクープも次の朝になったら、おもしろかったという感覚は残っているのだが、なにがあったのか忘れている。それでいいか! そういえば、『トットの欠落帖』は読んだか?まだ読んでないなら読まねば!


阿久悠『無名時代』集英社文庫

2018年06月13日 22時01分35秒 | 

大野松雄さんの聞き取りをしているので、音楽や音について考えることが多くなった。

ふと、本屋で見つけたのが、阿久悠『無名時代』(集英社文庫、2018年、元の本は1992年に刊行されている)。以前、重松清の『星をつくった男 阿久悠とその時代』(講談社文庫)を読んでいたことが伏線にもなっていたのだが・・。とにかく、阿久悠が阿久悠になる前の自伝的小説。戦後の五〇年代末から六〇年代はじめのころ、広告会社に就職してからの出来事が記されている。「あとがき」には次のようなものがある。

外圧が存在する場として、ぼくには、広告代理店に就職したことが実に幸いだった。/ここでは、毎日、何かを求められた。求められて、「出来ません」「知りません」が禁句であるから応えようとつとめ、時には無茶もあったが、思いがけない才能を発見することもあった。とうてい自分自身では見つけられない死角の才能―たとえば、詩をかくなどということもそうである―を引きずり出してくれたのも、外圧である。/・・・さらに、それに加えて、六〇年代という時代環境も、毎日毎日に外圧を潜ませて叩いてくれた。/不況の中で蜃気楼のような夢の生活が語られ始めた不思議な時代、テレビというメディアの普及によって、価値観の地殻変動が始まった頃で、形は違うが不確かさにおいて現在に似ている(pp.322-323)

阿久悠の作詞した曲をなぞって、その力を描いた水野良樹の「解説」も印象に残った。


かこさとし『未来のだるまちゃんへ』(文春文庫、2016年)

2018年06月05日 14時30分38秒 | 絵本

加古里子、2018年5月2日逝去。本屋でもちょっとした追悼のコーナーがあり、そこで、かこさとし『未来のだるまちゃんへ』(文春文庫、2016年)をみつけた。自伝的な読み物、子どもへの思いがこめられている。さっそくよんで、講義でも取り上げることとした。

目次

はじめに

第一章 僕が子どもだった頃

子どもたちが先生だった/だるまちゃんには子どもたちの姿が宿っている/だるまどんと不肖の父/大人と子どものすれ違い/里山のふるさと/自然が教えてくれたこと/なつを先生のおっぱい/戦争のあしおと/状況と銀ちゃんのこと/東京の子供たち/あんちゃんの思い出/僕の最初のお師匠さん/のらくろ敵討ち/マインファータ、マインファータ

第二章 大人と子どものあいだ

飛行機乗りになりたかった/麻植の音楽と中村草田男先生のこと/裏側から知った戦争、兄の死/そして敗戦/僕も人生に迷っていた/ガンちゃんとデンマーク体操/ふたたび、絵を描く/子どもほど、正直な観客はいない/紙芝居と絵本の違い

第三章 大切なことは、すべて子どもたちに教わった―セツルメントの子どもたち

セツルメントの子どもたち/子どもは鋭い観察者/絵描き遊びが教えてくれたこと/個性って、何だろう/「へのへのもへじ」を世界遺産に/観察者としての覚書/子どもの秘めた思い/成長とは、自発的に花開くこと/戦後の絵本業界/生きた題材とは/

第四章 人間対人間の勝負―絵本作家として

紙芝居だった『どろぼうがっこう』/人間はみんなプチ悪/絵本作家になる/家庭人として/世の中の裏を知る/二足のわらじ/人生の残り時間

第五章 これからを生きる子どもたちへ

四〇年ぶりの続編/この世界の端っこで/見取り図を描く/震災と原発/これからを生きる子どもたちへ

あとがき/文庫版あとがき/解説 加古さんとだるまちゃん(中川季枝子)

授業論で絵本をとりあげるところで、『だるまちゃんシリーズ』『からすのパン屋さん』を紹介して、世界を広げる想像力、それと同時に、その絵本の背景となったものを読み取ることの重要性を強調した。

家に帰って、何気なくテレビを見ているとNHKの「プロフェッショナル」で加古里子がとりあげられていた。九一歳の終わりから九二歳へ、その一ヶ月間、カメラが密着した。その撮影が終わって、二一日後、加古はこの世を去った。あらためて、冥福を祈ることとなった。

現代思想や太陽のかこさとしの特集なども興味深い。買った太陽の本がどこかにはいって見当たらない―困ったことだ!


おくればせながら、黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』(講談社、1981年)

2018年06月05日 14時00分48秒 | 

おくればせながら、黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』(講談社、1981年)を・・・。資料として配付したりしているのだが、通して読んでみると、戦中にこんな学校があったのかと感慨を禁じ得ない。1944年頃までの短い2年間くらいの間のこと・・・。実に多様な子どもたちをうけとめた。ダイバーシティ、障害のある子どもとインクルージョン、子どもの自由とニーズ、インクルーシブ教育、多文化共生、子どもの願いなど、現代的な教育としても考えさせられることが多い。

内容(目次)

はじめての駅/窓ぎわのトットちゃん*/新しい学校/気にいったわ/校長先生/お弁当/今日から学校に行く/電車の教室/授業*/海のものと山のもの/よく噛めよ/散歩/校歌/もどしとけよ/名前のこと/落語/電車が来る/プール*/通知簿/夏休みが始まった/大冒険*/肝試し/練習所/リトミック*/一生のお願い/一番悪い洋服/高橋君*/とびこんじゃダメ!/「それからさあー」/ふざけただけなんだ/運動会/小林一茶/手でお話し*/泉岳寺/マサオちゃーん/おさげ/サンキュー/図書室/しっぽ/二度目の春/白鳥の湖/畠の先生/はんごうすいさん/「本当は、いい子なんだよ」*/お嫁さん/ボロ学校/リボン/お見舞い/元気の皮/英語の子*/学芸会/はくぼく/康明ちゃんが死んだ*/スパイ/ヴァイオリン/約束/ロッキーが、いなくなった/茶話会/さよなら、さよなら/あとがき