加古里子、2018年5月2日逝去。本屋でもちょっとした追悼のコーナーがあり、そこで、かこさとし『未来のだるまちゃんへ』(文春文庫、2016年)をみつけた。自伝的な読み物、子どもへの思いがこめられている。さっそくよんで、講義でも取り上げることとした。
目次
はじめに
第一章 僕が子どもだった頃
子どもたちが先生だった/だるまちゃんには子どもたちの姿が宿っている/だるまどんと不肖の父/大人と子どものすれ違い/里山のふるさと/自然が教えてくれたこと/なつを先生のおっぱい/戦争のあしおと/状況と銀ちゃんのこと/東京の子供たち/あんちゃんの思い出/僕の最初のお師匠さん/のらくろ敵討ち/マインファータ、マインファータ
第二章 大人と子どものあいだ
飛行機乗りになりたかった/麻植の音楽と中村草田男先生のこと/裏側から知った戦争、兄の死/そして敗戦/僕も人生に迷っていた/ガンちゃんとデンマーク体操/ふたたび、絵を描く/子どもほど、正直な観客はいない/紙芝居と絵本の違い
第三章 大切なことは、すべて子どもたちに教わった―セツルメントの子どもたち
セツルメントの子どもたち/子どもは鋭い観察者/絵描き遊びが教えてくれたこと/個性って、何だろう/「へのへのもへじ」を世界遺産に/観察者としての覚書/子どもの秘めた思い/成長とは、自発的に花開くこと/戦後の絵本業界/生きた題材とは/
第四章 人間対人間の勝負―絵本作家として
紙芝居だった『どろぼうがっこう』/人間はみんなプチ悪/絵本作家になる/家庭人として/世の中の裏を知る/二足のわらじ/人生の残り時間
第五章 これからを生きる子どもたちへ
四〇年ぶりの続編/この世界の端っこで/見取り図を描く/震災と原発/これからを生きる子どもたちへ
あとがき/文庫版あとがき/解説 加古さんとだるまちゃん(中川季枝子)
授業論で絵本をとりあげるところで、『だるまちゃんシリーズ』『からすのパン屋さん』を紹介して、世界を広げる想像力、それと同時に、その絵本の背景となったものを読み取ることの重要性を強調した。
家に帰って、何気なくテレビを見ているとNHKの「プロフェッショナル」で加古里子がとりあげられていた。九一歳の終わりから九二歳へ、その一ヶ月間、カメラが密着した。その撮影が終わって、二一日後、加古はこの世を去った。あらためて、冥福を祈ることとなった。
現代思想や太陽のかこさとしの特集なども興味深い。買った太陽の本がどこかにはいって見当たらない―困ったことだ!