ちゃ~すが・タマ(冷や汗日記)

冷や汗かきかきの挨拶などを順次掲載

黒柳徹子『トットひとり』(新潮文庫、文庫版は2017年11月発行)

2018年05月24日 23時04分49秒 | 

黒柳徹子『トットひとり』を文庫版で読んだ。新潮文庫版は2017年11月発行、なお、もともとは、新潮社から、2015年に刊行されたもの。

文庫版には、あとがきにかえてとして、「永六輔さんへの弔辞」が掲載されている。

とびらに 私が好きだった人たち、

私を理解してくれた人たち、

そして、

私と同じ匂いを持った人たちに― とあった。

わかれの時の思いを書いたもの。内容は次のようなもの

私の遅れてきた青春について―山田修司(TBSディレクター・プロデューサー、「ザ・ベストテン」を作った人)と「ザ・ベストテン」の思いで 

霞町マンションBの2ー向田邦子の思い出

「ねえ,一回どう?」―森繁久弥の思い出

私の母さん、私の兄ちゃん―沢村偵子と渥美清の思い出

初詣でー初詣に行っていた仲間たちのこと(末盛憲彦(ディレクター)、永六輔、中村八代、渥美清、坂本九)

泰明ちゃんが教えてくれたことー「窓ぎわのトットちゃん」に登場する小児マヒの泰明ちゃんのこと

「そのままが、いいんです!」ー「ヤン坊ニン坊トン坊」と飯沢匡、文学座にはいりたい、文学座研究所との関係など、忙しくなったとき(「死ぬよ」といわれたこと)

三八歳だったーアメリカ・ニューヨークでの演劇の学び

徹子のヘア―「タマネギヘア」のこと

ある喜劇女優の死ー賀原奈津子の思い出(文学座から、NLT(劇団)へ)

二人の喜劇作家の親―井上ひさしとつかこうへい

幕が上がるとき―杉浦直樹(セイ兄ちゃん)

文庫版後あとがきにかえて―永六輔

別れとは、だれも直面するもの、それを実感させる文章が続く。しかも、鮮明な思い出とともに、それぞれの人が浮かび上がる。沢村の戦前の治安維持法での拘留中のことなども織り交ぜながら、笑いのエピソードもふんだんに盛り込まれている。しゃべるように書いているのだが、それは、記憶とその物語に彩られ、また、よく聞いているし、学んでいることがわかる。このような文章が書けるのは、どうしてだろうと思ってしまう。

 


黒柳徹子『小さいときから考えてきたこと』新潮文庫

2018年05月12日 22時29分57秒 | 

1ヶ月に一回、シニアの方たちとゼミをしている。
昨年度は、発達と教育の源流をたどるということで、イタールやセガン、障害児教育の歴史をやってみた。シニアの方には、なかなか、興味を持続させるのも難しかった。
ことしは、もっと身近なものをとりあげてとおもって、黒柳徹子の「窓ぎわのトットちゃん」をテキストにして、教育実践と子ども、その背景について考えてみようとおもった。
それで、黒柳徹子の書いたものを読んでいるが、それはそれでとても面白いし、黒柳のしゃべっていることと書いていることが共振して、考えさせられることもおおい。

黒柳徹子『小さいときから 考えてきたこと』(新潮文庫、もともとは平成13年発行のもの)を読んだが、とても考えさせられることが多かった。

目次
赤い松葉杖*
黄色い花束
本を読むことについて
さようならセゾン劇場
アイボ・グレーちゃんと暮して
二〇〇〇年の初日の出
ベートーベンさんのおかげです
ドックス・イヤー事件
私ってLDだったの?*
お父さんから、お母さんを引く???
あなたは低能!!*
リベリア報告
リベリアのシシャモ
サンタクロースさん
祖父のこと
グリーティング・カード
チューインガム
芝居の旅
オバタリアン
お説教
本当の幸せとは?
私の母さん、私の兄ちゃん
アフガニスタン報告**
対談 希望とまごころの歌 なかにし礼・黒柳徹子

最後のアフガニスタン報告は子どもの権利条約に照らし合わせながら、若い人たちに読んでもらいたい。


菅原潤『京都学派』講談社現代新書

2018年05月09日 00時14分47秒 | 
菅原潤『京都学派』(講談社現代新書、2018年)

京都学派に関する人と流れをたどっただけのようなものだった。

プロローグ なぜ今、京都学派なのか
1.それは東大から始まった
2.京都学派の成立 西田幾多郎と田辺元
3.京都学派の展開 京大四天王の活躍と三木清
4.戦後の京都学派と新京都学派
エピローグ 自文化礼賛を越えて
読書案内
あとがき

京大四天王ばかりが強調されているが、木村素衛は、一度も出てこない。
驚異深いのは、波多野精一についてである(pp.42~に少し書いてある)。そこでは、東大のエリートとしての波多野についてのべている。東大では、井上哲次郎の儒教を中心としたキリスト教ぎらいの哲学が主流。キリスト教関係を中心とする宗教哲学を研究する波多野やアメリカ経由元良勇次郎などがいたが、波多野は京大へ。しかし、日本哲学の自立的確立をめざすのが西田幾多郎、波多野は京大では非西田系の位置づけ。
糸賀一雄は、波多野の最後の弟子。木村とは在学中交わりはなしといわれている。しかし、衣笠第二小学校への代用教員としての赴任では、伊東茂光からの連絡があったとのこと。木村と伊東の関係からは、波多野から木村へ、糸賀のことが頼まれていたのではないか?その後、池田太郎との関係で、木村と糸賀は急速に親交を深めるのだが・・・。

重松清『あの歌がきこえる』(新潮文庫)

2018年05月06日 21時17分29秒 | 

重松清『あの歌がきこえる』(新潮文庫)
なぜ、この本を読もうと思ったのか?覚えていない。
読んでみて、高等学校から大学に行く頃の歌と絡めた青春小説。
重松清は、1963年生まれ。岡山から早稲田大学教育学部を経て、出版社勤務。その後、執筆生活に。

歌と関連した目次は以下

いつか街であったなら
戦争を知らない子供たち
オクラホマ・ミキサー
案山子
好きだった人
旅人よ
風を感じて
DESTITY
いなせなロコモーション
スターティング・オーヴァー
さよなら
トランジスタ・ラジオ

内容は記憶がない。印象が薄いということか? ちょっと、甘酸っぱく、ちょっと胸がつまる感覚だけが残っている。


佐藤優『同志社大学新学部 私はいかに学び、考え、議論したか』

2018年05月06日 21時09分07秒 | 
佐藤優『同志社大学新学部 私はいかに学び、考え、議論したか』(光文社新書、2015年)
1970年代後半に、同志社大学神学部での学び、議論、そして、外務省に入省するまでの曲折を書いている。
大学時代での思考と志向・試行を考えてみたいと思った。
佐藤の立場は、おそらくこの時期、同じ同志社大学にいた百田尚樹と対照的な関係になろう。考え方や行動も、対照的かもしれない。

「学校3」と「トミーの夕焼け」

2018年05月06日 18時28分29秒 | 映画
「特別支援教育研究センター」の源流と『トミーの夕焼け』

本学に着任して10年目の1998年に公開された映画が、山田洋次の『学校Ⅲ』だった。山田洋次の学校シリーズは、それ以前に、夜間中学校、そして養護学校を描いてきた。そのシリーズの第三弾の映画で、職業訓練校を舞台にした映画だった。リストラされた自閉症の息子をもつシングルマザーを、大竹しのぶが好演した。バブル崩壊後の失われた10年、リストラ、倒産などの社会の状況のなかで女性の自立と学び、自閉症のある息子との生活、学ぶ仲間との関係、病気や将来への不安など、職業訓練校に学ぶ主人公、そしてその学びの仲間たちの生き様や揺れが描かれている。
 公開当時、障害児学教室の先生方の間でも話題になったのだが、それは、『学校Ⅲ』の原作になった『トミーの夕焼け』(1997年)に関わっていた。『トミーの夕焼け』は、自閉症の息子の視点から母親の姿が描かれる短編集だが、その作者・鶴島緋紗子さんと本学の特別支援教育の源流となった故柳川光章先生の関わりのことだった。柳川先生は、臨床心理学の立場から1966年の養護学校教員養成課程の設置の中心を担われた。学生指導を含めて教育相談や「治療教室」などでの療育活動、僻地での調査活動など様々な活動を行っていった。『トミーの夕焼け』作者とはその中での出会いだったのだろう。柳川先生は、研究や教育、相談活動で自閉症(当時「情緒障害」)にこだわっていたが、作者との関係も自閉症の子どもの養育や教育に関わるものだったのだろうと想像される。
柳川先生が推進された本学の障害児学教室の構想や足跡にもその思いが感じ取られる。教室では概算要求で、附属養護学校の設置が準備されたのだが、残念ながら諸般の事情で実現がなされなかった。情緒障害教育特別専攻科の設置なども要求されたのだが、これも柳川先生が現職の間には実現しなかった。その中で、保護者や現場の先生方の教育相談、療育教室などの取り組みを継承し、発展させるべく構想されたのが「障害児教育実践研究センター」だった。しかし、これもまた国立大学時代には実現されず、大学が法人化されて以降、特殊教育から特別支援教育への転換のなかでようやく「特別支援教育研究センター」として設置されたのだった。
本学に障害児教育の教員養成の組織的な取り組みがはじまって、一昨年50周年の行事を行うことができた。そして、2017年には特別支援教育研究センターが設置されて10周年だった。これまで、様々な思いが込められ、様々なエピソードが織りなされた歴史があった。教員養成と教育相談・支援などセンターと教室は、次の10年の最初の一歩を本年度歩み始めたことになる。また今後新たな歴史を紡いでいくことになる。これからも、多くの皆さんとともに力強く歩んでいくことを期するとともに、関係者の方々のご指導ご鞭撻をお願いする次第である。

「特別支援教育研究センターニュース」