黒柳徹子『トットひとり』を文庫版で読んだ。新潮文庫版は2017年11月発行、なお、もともとは、新潮社から、2015年に刊行されたもの。
文庫版には、あとがきにかえてとして、「永六輔さんへの弔辞」が掲載されている。
とびらに 私が好きだった人たち、
私を理解してくれた人たち、
そして、
私と同じ匂いを持った人たちに― とあった。
わかれの時の思いを書いたもの。内容は次のようなもの
私の遅れてきた青春について―山田修司(TBSディレクター・プロデューサー、「ザ・ベストテン」を作った人)と「ザ・ベストテン」の思いで
霞町マンションBの2ー向田邦子の思い出
「ねえ,一回どう?」―森繁久弥の思い出
私の母さん、私の兄ちゃん―沢村偵子と渥美清の思い出
初詣でー初詣に行っていた仲間たちのこと(末盛憲彦(ディレクター)、永六輔、中村八代、渥美清、坂本九)
泰明ちゃんが教えてくれたことー「窓ぎわのトットちゃん」に登場する小児マヒの泰明ちゃんのこと
「そのままが、いいんです!」ー「ヤン坊ニン坊トン坊」と飯沢匡、文学座にはいりたい、文学座研究所との関係など、忙しくなったとき(「死ぬよ」といわれたこと)
三八歳だったーアメリカ・ニューヨークでの演劇の学び
徹子のヘア―「タマネギヘア」のこと
ある喜劇女優の死ー賀原奈津子の思い出(文学座から、NLT(劇団)へ)
二人の喜劇作家の親―井上ひさしとつかこうへい
幕が上がるとき―杉浦直樹(セイ兄ちゃん)
文庫版後あとがきにかえて―永六輔
別れとは、だれも直面するもの、それを実感させる文章が続く。しかも、鮮明な思い出とともに、それぞれの人が浮かび上がる。沢村の戦前の治安維持法での拘留中のことなども織り交ぜながら、笑いのエピソードもふんだんに盛り込まれている。しゃべるように書いているのだが、それは、記憶とその物語に彩られ、また、よく聞いているし、学んでいることがわかる。このような文章が書けるのは、どうしてだろうと思ってしまう。