ちゃ~すが・タマ(冷や汗日記)

冷や汗かきかきの挨拶などを順次掲載

久保寺健彦『青少年のための小説入門』集英社、2018年

2018年10月26日 22時15分00秒 | 

これはおもしろかった。さっそく、講義で紹介した。

帯には、つぎのように書かれている。

「小説は無力だって言ってたけど、そんなことないよね?」

いじめられっ子の中学生・一真は、万引きを強要された店でヤンキーの登と出会う。一真のピンチを救った登は「小説の朗読をしてくれ」と不思議な提案を持ちかけた。名作小説をともに読むうち、いつしか二人はほんの面白さに熱狂しはじめる―。

ディスレクシアの登、いじめられ、万引きを強要される真一、不登校のかすみ、介護が必要となってくるばあちゃんなどなどの登場人物、その人物像とこれまでの暮らしの過程を想像する。読む本の中に『アルジャーノンに花束を』もある。最後まで読んで、はじめにもどると思わず・・・。

朗読という行為について、映画『愛を読む人』『朗読者』)、そして書くということは映画『アイリスへの手紙』に思いは広がった。

講義でどのように使うかを考えてみたい。


鏑木蓮『エンドロール』ハヤカワ文庫

2018年10月22日 09時07分26秒 | 

鏑木蓮『エンドロール』を読んだ。もともとは、『知らない町』というタイトルで、東日本大震災の直前に出された本のようだ。後半部分の「廃村」を探す場面やその手助けをする文化財修復を学ぶ学生さんの情景が、東日本大震災後の東北の課題と関わってくるのは、偶然か。

発端は、「孤独死」から。その老人の人生の片付けに居合わせ、そのにあった、古い映画雑誌とノートと八ミリフィルムを手にする映画の製作をめざす主人公。遺品や本の整理、そしてフィルムのデジタル化に関わっているので、自分の仕事と重なってしまう。そのような興味で読み進められたが、戦争の時期の回転魚雷のような特攻作戦で死んだ戦友のこととなる。いまでいうと、九十歳を越える人たちの体験を核としていることとなる。そういう意味では、なかなか今の人たちが実感をもつって読み進めるのは難しいのかも知れない。

このような小説みたいな仕事をしている自分を実感した。そんなうまくはいかないのだが。