この間、自分の若干の吃音を感じている。新しい環境に入ったこともあって、緊張するとうまくしゃべることが出来ないし、そのことを意識してしまう。司会者、料理研究家などなど、吃音の有名人もたくさんいるようだが、なかなかやっかいなものである。この1月、同時期、2つの本が出された。3月、4月と少しずつ読みながら、そうだなあ・・・、困ってしまうなあ・・・なぜなのかなあ・・といろいろ考えるところがある。いずれの著者も吃音の当事者。以下は、アマゾンの本の紹介とそれぞれの目次。
近藤 雄生『吃音: 伝えられないもどかしさ』(新潮社、 2019年1月)
国内に100万人―それぞれを孤独に追いやる「どもる」ことの軋轢とは。頭の中に伝えたい言葉ははっきりとあるのに、相手に伝える前に詰まってしまう―それが吃音である。店での注文や電話の着信に怯え、コミュニケーションがうまくいかないことで、離職、家庭の危機、時に自殺にまで追い込まれることさえある。自らも悩んだ著者が、80人以上に丹念に話を聞き、当事者の現実に迫るノンフィクションである。
目次
プロローグ 18年前
第1章 死の際に立ちながら
マリリン・モンローの悩み
100万人が持つ問題
『バリバラ』番組収録
髙橋啓太の35年
訓練開始
第2章 ただ“普通に”話すために
治療と解明への歴史
治すのか 受け入れるのか
羽佐田竜二の方法
叶わなかった殉職
変化の兆し
第3章 伝えられないもどかしさ
追いつめられたエンジニア
歯科医師の意志
電話番を外してほしい
人生を変えた軽微な事故
吃音者同士のつながり
初めてのスピーチ
吃音だけのせいではない
第4章 新人看護師の死
あまりにも辛い別れ
吃音者に対しての職場のあり方
断念した夢の先
ひどくちらかった部屋
みんなに追いつきたい
唯一の動く姿と声
第5章 言葉を取り戻した先に
うまく話したいとは思わない場所
訓練の果て
吃音がよくなったとしても
第6章 私自身に起きた突然の変化
進路としての旅
神様みたいな存在
「一杯珈琲」
吃音とはいったい何か
第七章 “そのまま”のわが子を愛せるように
子どもの吃音
小さな文字で埋めつくされた連絡帳
なんとかしてあげたいという思い
五年後の表情の変化
エピローグ たどりついた現実
あとがき
菊池良和『吃音の世界』(光文社新書、2019年1月)
吃音は、最初の語を繰り返す「連発」(ぼ、ぼ、ぼ、ぼくは)と、最初の言葉を引き伸ばす「伸発」(ぼ―――くは)と、言葉が強制的に発話阻害される「難発」(………ぼくは)の三種類がある。吃音症の人は100人に1人の割合で存在し、日本では約120万人、世界では約7000万人いると言われている。近年、吃音の専門教育を受けた国家資格である言語聴覚士の誕生、障害者の暮らしやすい社会へ向けた市民の意識の変化、そして発達障害者支援法や障害者差別解消法の成立といった時代の変化の中で、吃音者をめぐる状況にも変化が生じている。幼少期から吃音で悩み苦しんできた医師が、吃音の当事者のみならず、私たちがより多様な社会を生きるためのヒントを伝える。
目次
まえがき
第1章 私の吃音体験
1・1 三つの症状
1・2 吃音の不思議
1・3 吃音を隠す努力
1・4 医者になる決心
1・5 吃音恐怖症
1・6 医師になる
第2章 吃音の発症の原因
2・1 吃音はいつ始まるのか
2・2 悪者は母親?
2・3 一八〇度の転換
2・4 急激な言語発達の〝副産物〟
第3章 吃音治療の歴史と現在
3・1 吃音治療の始まり
3・2 「吃音を治す」から「吃音とどう生きるか」へ
3・3 吃音の軽減法
3・4 薬物療法
3・5 吃音は軽減していく
第4章 吃音外来
4・1 年中 ――「吃音」という共通語を使う
4・2 年長 ―― 吃音はママのせい?
4・3 小学校一年生 ―― 吃音はそのうち治る?
4・4 小学校高学年 ―― 誤解されやすい二面性の疾患
4・5 高校一年生の女子 ―― 高まる社交不安障害
4・6 二〇歳 ―― 難しい就職活動
4・7 四〇代 ―― 吃音で退職を迫られる
第5章 吃音と社会のこれから
5・1 吃音者の社交不安障害
5・2 聞く力
5・3 時代の変化と吃音
あとがき