空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

「ジュバランド」カテゴリ新設のお知らせと2009年9月末のキスマユ事情

2009-09-28 18:56:04 | 「ジュバランド」
 ジュバランド(参照:日本語版Wikipediaないし英語版Wikipedia)はソマリア最南部,Gedo,下Jubba,中Jubbaの3県を含む地域。中心都市はキスマユKismayo。

 この地域は独立性が高いようで,Wikipediaにもありますよう,一時は独立を宣言しさえしたようです。これは2006年末以来のバイドア-モガディシュ暫定政府の「統治下」でも変わらず,あのYusuf大統領をして,キスマユは暫定政府の指導下にない,とさえ言わしめました。

 そののち,アルシャバブ勢力がキスマユを押さえ,Gedo県をも手中に収めました―Hizbul Islam勢力と合同しつつ。エチオピア軍がソマリア国内に駐留していたころもジュバランド方面,特に下・中Jubba方面には手を出さず,そしてキスマユのアルシャバブは,この自律的な地位をもつ地域の支配にこの世の春を謳歌したようです。

Garowe Online Somalia: Kismayo Islamists reject Uganda leader's plans Sep 23, 2009 - 11:51:46 PM

 Uganda大統領がキスマユまでのAMISOM展開構想を公言したことに対抗し,キスマユのアルシャバブ報道担当Sheikh Hassan Yakubはウガンダ大統領は国際社会からのソマリア復興基金をかすめ取ろうとしているのだと非難,さらには去年8月以来のキスマユ・イスラミスト政権を"Islamic Walaayah of Jubba"と改名したと宣言しました。

 これに対して,先頃からアルシャバブとの不和が伝えられたRas Kamboni旅団(及びAnole)は反発しました。アルシャバブはキスマユ共同統治の約束を反故にしたからです。この記事の段階では内部情報として,Hizbul Islamの政治指導者たちがアルシャバブとRas Kamboni-Anoleグループとの仲介の努力をしているとされます。

Garowe Online Somalia: Islamist leader snubs Al Shabaab rulers in Kismayo Sep 24, 2009 - 3:51:18 PM

 Ras Kamboni及びAnoleは2009年1月にはHizbul Islamに(発展的に)加入した建前ですが,Ras KamboniのトップHassan Turkiはソマリア・イスラミスト運動の古兵。ソマリア南部の神秘的な抵抗指導者であってその名前は独立の権威があるものと思われ,とてもHizbul Islamは一枚板とは言えません。

 そのHassan Turkiは,一時戦死報道が流れましたが,キスマユのアルシャバブのこの背信にコメントを発しました―南部ではなく,首都モガディシュで,です!

 記者会見でSheikh Hassan "Turki" Abdullahiは,キスマユの新政体を「受け入れないであろう」と語りました。「私はキスマユの新政権を認めないだろう。そしてわたしは以前の体制を支持する者だ。それは如何なる特定グループにも贔屓をしなかったものだが」。

「我々は新政体について問い合わせを受けなかったのだ。我々は無視されたと思っているし,アルシャバブはともにキスマユを支配しようという約束を反故にした」。

 Turkiは(キスマユの)アルシャバブ指導者たちに,Hizbul Islamに対するバイアスをやめよと語ります―ともに”西欧の傀儡”たるモガディシュ政府を打ち破らんと戦うはずの両派なのですから。

 キスマユは良港と国際空港とを持つ,ソマリア有数の都市です。南中部ソマリアに限れば,第二位の都市でしょう。そこからアガる実入りは相当なもののはずです。
 よしアルシャバブは全国的闘争のために多額の資金を要し,キスマユの収益に頼るところ大であってどうしても手放すわけにはいかなかったのだとしても―その同盟者たちも全国的闘争を共に闘ってきているのです。やはりキスマユの支配を独り握り続ける正統性はないものと言わざるを得ません。

 また,キスマユ事情には氏族間の問題も絡みます。

 アルシャバブは比較的氏族にとらわれない運動であって(a multi-clan faction,複数氏族からなる,というのが直訳でしょうが),その支持はジュバ地域外から得ています(that primarily draws support from the outside,中心となるのはHawiyeであろうか)。他方,Ras Kamboni旅団やAnoleは南部地付きの勢力であって,その支持は中Jubbaおよび下JubbaのDarod氏族からのもの。

 アルシャバブはBarre Hiraleを追放するにあたって同盟した地元氏族民兵指揮者を暗殺し(→「 Salah "OJ" Hassan ― 30の銃弾と共に釈放された男」),地元のジュバ谷連合の元指導者を暗殺氏もしています(→「 Abdirahman Ahmed "Waldiire"」)。

 権益の配分のない地元勢力が堪忍袋の緒を切らしかかったという説明も可能です。

 こうした中,対立の構図は特にキスマユ中心に集中し,キスマユに武器・兵員が流れ込み,他方モガディシュのイスラミストたちは寧ろTurkiへの敬意を表明しました:

Garowe Online Somalia: Fighters and weapons 'pour into Kismayo' Sep 26, 2009 - 11:41:14 PM

 日曜日(昨日),モガディシュのアルシャバブ報道担当者Sheikh Ali "Dheere" MohamudはラジオでSheikh Turki はソマリアにおけるイスラミスト運動の「設立者の一人だ」と称賛しました。「我々はSheikh Hassan Turkiを称賛する―彼はソマリアにおける聖戦の父であり,そして我々(アルシャバブ)は協同のための用意ができていると宣言する」。

 但し,Hizbul Islam議長Sheikh Hassan Dahir Aweysはキスマユでの不和に公的にコメントを出すことはしていない由。

 Sheikh Ali "Dheere" Mohamudはアルシャバブ・Hizbul Islam間の戦闘の可能性を低く見積もります。
 未確認情報として,Sheikh Turkiのモガディシュ訪問はHizbul Islam及びアルシャバブ上級指揮者たちとの会談のためであるとされます。大いにあり得ることでしょう―それこそ最大の目的でしょう。

 ですが,この報道の時点でキスマユには武器・戦闘員が流れ込み,市南部にHizbul Islamが,北部にアルシャバブが拠点を構えているとされます。そしてHizbul Islamはアルシャバブを撤退に追い込みました:

Garowe Online Breaking News: Somalia: Al Shabaab withdraw from Kismayo Sep 27, 2009 - 6:15:11 PM

 Ras Kamboni Brigade及びAnoleの兵がKismayoに流入,土曜夜アルシャバブを「平和裏の離脱to peacefully leave」に追い込んだ由。アルシャバブの一部は警察署に居残るものの,市中は平穏であるという。

 しかしアルシャバブはKismayo北の農業都市Jamameにて再編成中と。

 キスマユに進出したHizbul Islamの指導者はSheikh Ahmed "Madobe" Mohamed。記事中に曰くa key ally of Sheikh Turki。Hizbul Islamは市中の主要拠点を制圧し終えた模様。

 ―Turkiはキスマユをめぐる政治闘争に勝利したようです。キスマユを退去したアルシャバブが今後どのように動くか―田舎に割拠する小集団に転落するか,Turkiに対して戦端を開くか? なお予断を許さぬものかと思うのです。

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