●遺伝子制御異常でもがんに iPS細胞使い京大解明
中日 2014年2月14日 02時02分
がんは、遺伝子が傷つくなどの変異の積み重ねによってできると考えられてきたが、遺伝子を制御する仕組みの異常によっても引き起こされることを、京都大のチームが人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った実験で確認した。特に子どものがんの主な原因ではないかといい、将来的にはがん細胞を正常な細胞にする薬の開発につながる可能性があるという。13日付米科学誌「セル」の電子版に発表された。
チームは、細胞を初期化させiPS細胞を作製する際に使う4つの遺伝子をマウスに投与、腎臓の変化をみた。7日間投与し続けた後、初期化が不完全な状態で7日間放置したところ、腎臓に腫瘍ができた。腫瘍の細胞は小児腎臓がんの腎芽腫によく似ていた。遺伝子そのものに傷などは見つからなかった。このため遺伝子の変異ががんの主な原因ではなかったことが確認できた。遺伝子を制御する仕組みの異常でがんが発症したと考えられるという。
チームの山田泰広教授(腫瘍病理学)は「小児では遺伝子の変化が少ない。小児がんの多くは、遺伝子制御の異常が原因ではないか。細胞を正常な状態に戻せる可能性がでてきた」と指摘。中心メンバーの一人でもある岐阜大大学院生の大西紘太郎さん(幹細胞生物学)は「今後は大人のがんでも遺伝子制御の異常とがん発症の関連を明らかにしていきたい」と話している。
◆血小板の大量生産方法を開発
ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から輸血など医療現場で使用できるだけの大量の血小板を生産する方法を京都大のチームが開発した。献血者不足が懸念される中、安定的に血小板を供給することが可能になるという。13日付米科学誌電子版で発表した。
血小板は血液の中にあり出血時に止血する作用がある。これまでも血小板を作製する技術は開発されていたが、効率が悪く医療現場での使用は難しかった。
ヒトのiPS細胞から分化させた「造血前駆細胞」に2遺伝子を働かせ血小板のもとになる「巨核球」を作製。今回はさらに巨核球に特別な1遺伝子を働かせた。すると巨核球を5カ月間以上、増え続けさせることができた。これまでは2カ月程度までしか増え続けさせることができず、1回の輸血に必要な量の100分の1にあたる約10億個の血小板しかできなかったが、今回の方法だと必要な量である1千億個の確保が可能になるという。
巨核球は冷凍保存することも可能で、巨核球をストックすることで血小板を安定して供給できるようになるという。京都大の江藤浩之教授(再生医療)は「数年後の臨床研究と10年後の実用化を目指している」としている。 (中日新聞)
●遺伝子異常ないがん作製 京大グループ成功、iPS技術応用印刷用画面を開く
京都 2014年02月14日 0
iPS(人工多能性幹)細胞を作製する技術を使って生きたマウスでがんの状態を作り出すことに、京都大iPS細胞研究所のグループが成功した。遺伝子が傷つくことによってできる一般的ながんとは異なっており、このタイプである小児がんなどの仕組みの解明や治療法の開発につながる成果という。米科学誌セルで14日発表する。
iPS細胞は、体細胞に四つの遺伝子(山中4因子)などを入れ、受精卵に近い状態にまで戻して作製する。山田泰広教授や大学院生の大西紘太郎さん、蝉克憲研究員らのグループは、特定の薬剤に反応して山中4因子が働くように遺伝子操作したマウスを使い、体内で細胞をiPS化させる実験をした。
薬剤を1カ月近く投与するとがんはできなかったが、途中でやめると、腎臓については小児がんの腎芽腫と似た腫瘍ができることを見つけた。このがんには遺伝子の異常はなく、グループは細胞が受精卵の状態まで戻る初期化が中途半端だったのが、がん化の原因とみている。
人の小児がんは、他のがんに比べて遺伝子の傷が少ないことが分かっている。山田教授は、今回のようながんについて「体内での初期化はSTAP細胞のように外的な刺激で起こっていることも考えられる」とした上で、「遺伝子の傷の蓄積でできるがんでは傷を全て治すのは非常に難しいが、今回のような場合は薬剤で治療できる可能性がある」と話している。
●がん発生の別のメカニズム突き止める
NHK 2月14日 4時10分
がん発生の別のメカニズム突き止める
がんは遺伝子の異常が積み重なって出来ると一般に考えられていますが、これとは別のメカニズムがあることを京都大学のグループがiPS細胞に関連した実験で突き止めました。
京都大学iPS細胞研究所の山田泰広教授のグループは、生きたマウスの体内でiPS細胞を作り出す実験を行い、その際、通常28日間行う特定の遺伝子を活性化させる作業を1週間で止めました。
そしてマウスの体内を詳しく調べたところ、iPS細胞が出来る代わりにがん細胞が出来ていたということです。
がんは遺伝子の異常が積み重なって出来ると一般に考えられていますが、今回出来たがん細胞には、そうした遺伝子の異常がありませんでした。
研究グループは、遺伝子の異常が積み重なるのとは別のがん発生のメカニズムがあるとしていて、山田教授は「今後、ヒトの細胞でも同じことが起きるかを調べ、がんの原因解明や治療法の開発につなげたい」と話しています。
|