tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

コーヒー

2007-03-25 21:16:51 | old good things

コーヒーをはじめて飲んだのは、幼稚園生の頃に友達のお誕生パーティに招かれてのことだったと思う。造り酒屋のボンボンの大きなお屋敷に招かれた近所の悪たれガキども3人。いろんなご馳走とともに、コーヒー糖と称して角砂糖の内にひとつまみの粉末を封入したものがソーサーに添えられていた。このコーヒー糖を、お湯に溶かすと1杯のコーヒーとなるらしい。生まれてはじめて見るそれに、いったいそれが何なのか分からずに内気なぼくはモジモジしていた。そして、それをお湯に溶かして、生まれて始めて味わったコーヒーの香味は、田舎育ちの幼少のぼくをすっかり心酔させた。その時のあいまいな記憶によれば、マーガリンを食べたのもその時が初めてだったのかもしれない。パンケーキか何かに添えられていたのだろう黄色いクリーム状のそれを口に入れて、予想外の味覚に吐き出すこともかなわず困っていたのをかすかに覚えているような気がする。
よその家で食べたはじめての食べ物と言えばまだある。商店を営んでいて、田舎を配達して回る父の水色のダットサンのトラックの助手席に座り、あちこちに連れてってもらった。毎日のように父にくっ付いて行ったので、まだ幼稚園にも行く前のことだと思う。父の商談にお供するぼくは、父の店の広告塔だったのかもしれない。配達に行く先々で可愛がられた。とある配達先で、ミカンを駄賃にもらった。ぼくは、ミカンの食べ方がわからなくて、ひとしきりモジモジした。皮ごと食べたら、みんなに笑われるかもしれないと・・・。目の前のみかんを恨めしげに見ていたら遠慮しないでと勧められたので、思い切ってどうやって食べるのかを聞いたらしい。家に帰ってから、<恥をかいた>と父が母に苦笑まじりに話したのを覚えている。
ジャリ道しかなかった田舎のことゆえ流通がままならなかった当時は、ミカンはバナナと同じように滅多に食べられない高級フルーツだったのだろうか。あるいは、我が家が極端に貧乏で、コーヒーや、マーガリン、ミカンなどの食べ物を入手できなかったのだろうか?ふり返れば、母は父の商売の手伝いをしていて忙しく、年少の頃よりぼくは通いで来ていた姉やに育てられた。裕福とは言えないだろうが、当時の我が家は決してお金に困っていたとは思えない。恐らくは、食べ物については贅沢を一切しなかった母によるところが多いと思われる。
さて、このコーヒー糖。大正時代に発明された日本で最初のインスタントコーヒーだ。その後、インスタントコーヒーはスプレードライ製法、フリーズドドライ製法で製造され格段に味と香りが良くなり、1960年に森永製菓によって販売されてから各家庭に広まった。ようやく、我が家でもインスタントコーヒーを飲みだしたのは、初めてコーヒー糖を飲んだ時から数年あとのことである。パンがかたまりで3斤分売られていた時代で、包丁で切るそれはいつもいびつな切り口をしていた。スライスされたパンが売られるようになったのは、ぼくが小学生の頃のことだ。干しぶどうの入った食パンがぼくの大好物だった。学校給食の無い日に持っていったぶどうパンのサンドイッチに、昼食の時間が待ち遠しかったのを思い出す。はっきりとは覚えていないが、小学校の頃も朝食はパンだったのだろう。

コーヒーに含まれるカフェイン。取り過ぎるといろいろ問題が生じらしい。映画アルマゲドンでは、小惑星の衝突による予想被害規模を簡潔に説明することができないNASAの職員が、<カフェインの採り過ぎか?>とビリー・ボブ・ソーントン扮するNASAの司令官にいなされる。毎日4~5杯のコーヒーを飲んでいるぼくも、会話していてときどき言葉につまることがあるからカフェインを少しセーブしなければならないかもしれない。
ベティ・ブルー BETTY BLUE  (37 2 LE MATIN)  題の『朝、摂氏37度』とは女性が最も妊娠しやすい体温のことを言う。情熱的な若い女ベティ・ブルーと作家を目ざす青年の愛を描く映画だ。製作はクローディー・オサール。フィリップ・ジャンのベストセラー小説を基に彼自らが脚色。1986年の映画なのでいまからざっと20年前。この映画を観てカフェオレボールを知った。その後、カフェオレボールの存在を忘れていたが、2005年のトランスポーターを見てまた思い出した。ぶっきらぼうな主人公が、顧客からあずかった荷物(女性)にカフェオレを勧める。この時に使う食器が日本のどんぶりほどのカフェオレボール。食器に取っ手はついていない。フランス人は貧乏で満足に朝食が摂れなかったので、大きなカフェオレボールに一杯甘いカフェオレを飲んでおなかを満たしていたらしい・・・。我が家では、もう不要となった子供用のご飯茶碗にカフェオレを入れて雰囲気だけを楽しんでいる。

フランスでも、さすがにどんな小さなホテルに泊まっても、コンチネンタルブレックファーストに出てくるのは、カフェオレボールではなく普通の取っ手のついたコーヒー茶碗だ。コーヒーとミルクがそれぞれ白磁性のサーバーに入っていてたっぷり飲むことができる。そして、ホテルのレストランに限らず街中のカフェでも、コーヒーの付け合せに包装された小さなチョコレートが出てくる。チョコはスイス製やベルギー製の一口サイズのやつ。最初は、コーヒーにチョコを入れて飲めばいいものやら、わからずにやはりモジモジしてしまった。食べ方や飲み方がわからないと固まってしまうのは、小さい頃からほとんど変わっていない。

大人気の幻のコーヒー!コピ・ルアックは『かもめ食堂』でもでてくる。Kopiはコーヒー、Luakはイタチを意味するらしい。ルアックは、ジャコウネコ科バームシャベット属のリスを大きくしたような雑食動物。コピ・ルアクやカペ・アラミドは、独特の複雑な香味を持つと言われており、煎り過ぎて香りが飛ばないように、浅煎りで飲むのがよいとされる。一説によると、ジャコウネコ腸内の消化酵素の働きや腸内細菌による発酵によって、コーヒーに独特の香味が加わるという。世界で最も高価なコーヒーとして知られており、500グラムにつき約300米ドルの価格で販売されている。ネットで探すと日本でも買えるようだ。100gで2500円(送料別)・・・って、買えない。食べ物で贅沢ができないのは母親ゆずりなんすね・・・。GPSパーソナルナビは考えもしないで買っちまったのに。

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