tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

冬の函館へ

2009-02-16 21:09:32 | プチ放浪 都会編

 
 
 
 

【撮影地】青森県青森市/北海道函館市(2009.2月撮影)
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”東京の人は、どうも食ひ物をほしがりすぎる。私は自身古くさい人間のせゐか、武士は食はねど高楊枝などといふ、ちよつとやけくそにも似たあの馬鹿々々しい痩せ我慢の姿を滑稽に思ひながらも愛してゐるのである。何もことさらに楊枝まで使つてみせなくてもよささうに思はれるのだが、そこが男の意地である。”
(太宰治「津軽」より)

終戦からはや60年以上が過ぎ、戦後まもなくの食糧不足は、ひと昔もふた昔も昔のことだというのに、戦後生まれの人々はいまだに貪欲に食べ物を求め続けているのだろうか。インターネットにあふれる飲食の情報を目にするたびにそう思う。
もっとも、旅の指南書とも言える旅行ガイドブック自体が、その土地がどんな印象を与えたのか、どんな旅だったのか、そんな話をさておいて、どこの店がうまかったという話で全てがくくられている。東京には無い食べ物は無いと錯覚を与えるほど、種々雑多な飲食店が建ち並ぶ東京で、人々は食べ物がなかった大昔の記憶をにじませて、癒されることの無い飢餓感にいつも身を置きつづけているのだろうか。
観光地は観光地で、そうした客相手に、ぶったくりの商いをふっかけている。おそらくは上野のアメ横で買えばもっと安く手に入れられる食品が、観光地価格ということで何倍にも値がつりあがっている。どうだろう。1日の客の数を考えれば、シーズンによっては食品の鮮度は現地よりもアメ横の方が勝ってないとは限らない。

こんど函館へ出かけるに当つて、”心にきめた事が一つあつた。それは、食ひ物に淡泊なれ、といふ事であつた。私は別に聖者でもなし・・・”(太宰治「津軽」より)
松尾芭蕉翁にならって、生まれ故郷の津軽を旅した太宰治の文庫本を片手に携えて、ぼくは、冬の北海道へ旅立った。


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