【撮影地】岐阜県大野郡白川村(2009.2月撮影)
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夕暮れを狙って、萩町城跡から白川郷萩町集落を見下ろした。ライトアップが始まるこの時間、小高い萩町城跡の広場は、三脚立てて構えているカメラマンたちでいっぱいだった。その列 の後ろに並んで、少しだけ肌寒い山間の静かな夕暮れを待つ。
段々、暗くなってきて、家々に明かりが灯りだす。ライトアップされた家々は、闇の中でまぶしいほどに輝き、宝石のように浮かび上がると、それを待っていた観光客たちから思わずため息がもれた。思い出したようにカメラのシャッター音が響き、どの顔も満足そうだった。
ぼくの横にいた中年の女性が、手に持ったコンデジで格闘している。人と人の隙間から、広角で集落を撮ろうとしているのだが、どうしても前方の大きな桜の木の枝がじゃまをしてしまうようだった。
「撮りましょうか?」
ぼくはコンデジを受け取ると、前でカメラを構えている人の肩越しにカメラを構えた。ぼく立っていた場所で、唯一、桜の木の枝をなんとかかわして、全景を見晴るかすアングルが確保できる空間だった。
徐々に闇は濃くなっていた。集落の灯りはさらにくっきりと見えてくる。だが、それと同時に、ぼくはその美しい風景に割り切れないものを感じていた。
闇を切り裂くライトの灯り。空の雲を焦がすほど、煌々と辺りを照らしている。昔なら、見ることのできなかった夜景。
ライトアップしているがゆえに、それは幻想的で多くの観光客を集めることができるだろう。しかし、それはまた、観光のための景色であって、昔からの山里の景色ではない。都会のネオンと見まがうばかりの、いくつもの灯り。
・・・ぼくが追い求めていた景色ではなかった。
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