「カメラマンさんも待っているだろう・・・」
なかなか5m直下の水面へ、ダイビングする決心がつかない少年に対して仲間たちから声がかかる。
ぼくがカメラに、こけおどしのような大口径のレンズを付けていたからだ。
もちろん、カメラのストラップは手首に巻きつけるいつものスタイル。
少年たちが水面に飛び込む様子を、傍で撮っていたぼくは苦笑するしかない。
これが、首からカメラをぶら下げていたら、あるいはコンデジか携帯だったら、「カメラマン」じゃなく、「カメラのおじさん」、「デジイチおやじ」、「カメラオタク」とか呼ばれていたかも知れない。
ここでも、「撮るぞ」オーラを発していたから「カメラマンさん」と呼ばれたのだろう。
・・・悪い気はしない。素直ないい子たちだ。
その少年は何度か踏み出しかけて、その度に頭をうなだれて、午後の光を反射している海に背を向けた。
飛び込む勇気が沸いてこないのだ。巣立ちの日の小さな雛が見ず知らぬ大空の憧れを抱くと同時に、知らない世界に底知れない恐怖を覚えるように。
だが、いつの日か巣立ちの時はやってくる。
仲間たちが痺れを切らして駆け寄る。それでも少年は飛び出せない。
親友の一人なのだろか。その少年だけが残り、彼につきそう。
・・・ぼくはその場所に居合わせた。
夏の日の彼・らに対して、ぼくは声をかけることができないでいた。
それは、その少年の胸の内側が痛いほど感じられたからだ。
親友に見守られて、少年はついに飛んだ。日がかなり傾いた夕暮れ間近の時。
水面に広がる波紋。そして波間に顔だした少年に、少年たちが喝采の声をあげた。
やがて、みんなに迎えられて岸にたどり着いた少年に、ぼくは声をかけた。
「かっこよかったよ」
照れくさそうに笑った少年の笑顔がまぶしかった。ぼくの心は熱くなった。
・・・夏は誰もがトムソーヤになれる。。
No, I won't be afraid
Oh, I won't be afraid
Just as long as you stand
stand by me,
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