民事月報令和5年3月号に,大村健祐「相続登記の促進に向けた法定相続情報証明制度の課題」がある。
曰く,
「令和3年度は申出件数が約20万件,一覧図の交付通数が約138万件となっており」
「申出件数に対して一覧図の写しを添付してされた相続登記の申請件数の割合は50%を下回っており」
「令和3年度の相続その他一般承継による所有権の移転の登記の申請件数は約120万件であったことに対して,一覧図の写しを添付した相続登記の申請件数は約8万5千件であった。つまり,一覧図の写しを添付した相続登記の申請件数は,相続登記の申請件数全体のうち1割に満たない数しかなく・・・」
国税庁が公表している数字によれば,令和3年分における被相続人数(死亡者数)は143万9856人であるから,申出件数が約20万件であれば,約13.9%の利用があったということになる。まずまずではないだろうか。
持ち家率は,約60%といわれているから,単純計算では,持ち家を有する被相続人数は約86万4000人である。
司法書士が相続登記に関わる場合,概ね,
(1)全ての相続手続のポータルとして相談を受ける場合(「相続手続は何から始めたらいいの?」というケース)
(2)全ての相続手続の最後の手続として相続登記の申請の相談を受ける場合(預金の払戻しや相続税の申告等を全て終えてから相続登記を考えるケース)
のいずれかである。
前者(1)においては,「まずは預金の払戻しから」というケースが多いので,「とりあえず法定相続情報一覧図の写しの交付を受けましょう」となりやすい。
しかし,後者(2)においては,不動産登記の管轄が複数である場合(それほど多くはない。)でない限り,一覧図の写しの交付を受けるニーズはないのである。
そして,実感としては,圧倒的に,後者(2)のケースが多いように思われる。
私の事務所では,一覧図の写しを添付した相続登記の申請件数は,相続登記の申請件数全体のうち約20%程度であり,平均よりは多いといえるが,申出を代理した件数と同程度の持込件数(本人や他士業者が交付を受けたもの)があることから,それを差し引くと,必ずしも多いとは言い難い。
司法書士界としては,「司法書士が全ての相続手続のポータルとして相談を受ける」が理想であるが。
とまれ,申請サイドから考える「課題」としては,
・ 「一覧図の写しを添付した相続登記の申請」も,そうではない相続登記の申請と比して,登記完了までの日数は変わらないのは,何故?である。戸籍事項証明書等の調査がいらないのであれば,即日完了でもいいと思うくらいであるが,概ね登記完了予定日まできっちり日数を要している感である。もっと短期間に手続を了してもらえないのであれば,制度を利用するメリットは小さいのではないか。
・ 一覧図の写しの交付の申出から交付を受けるまでに概ね1週間程度を要している。もっと短期間に手続を了してもらえないのであれば,制度を利用するメリットは小さいのではないか。
・ 管轄が複数(例えば,3か所)である場合,3つの登記所で申請書の調査が重複してされることになり,全ての登記が完了するまでに相当の日数(1か月以上)を要することになる。3の管轄の一括申請を可能とし,申請をポータルで受理した登記所が責任調査を行い,他の2の登記所には調査結果を通知する等により,重複した調査をなくせば,スピーディーに登記完了に至ることができるものと思われる。おそらく登記所においても,このような未来予想図を描いているのではないだろうか。
一覧図の写しの交付の申出及び相続登記の申請のいずれも,本人申請(俗に「セルフ登記」と呼ばれているらしい。)が激増していると言われ,登記所の負担も比例的以上に増加していると聞く。司法書士界としても全面的に協力したいと思う(個人の感想です。)が,そのためには,もっとスピード感が欲しいところである。
曰く,
「令和3年度は申出件数が約20万件,一覧図の交付通数が約138万件となっており」
「申出件数に対して一覧図の写しを添付してされた相続登記の申請件数の割合は50%を下回っており」
「令和3年度の相続その他一般承継による所有権の移転の登記の申請件数は約120万件であったことに対して,一覧図の写しを添付した相続登記の申請件数は約8万5千件であった。つまり,一覧図の写しを添付した相続登記の申請件数は,相続登記の申請件数全体のうち1割に満たない数しかなく・・・」
国税庁が公表している数字によれば,令和3年分における被相続人数(死亡者数)は143万9856人であるから,申出件数が約20万件であれば,約13.9%の利用があったということになる。まずまずではないだろうか。
持ち家率は,約60%といわれているから,単純計算では,持ち家を有する被相続人数は約86万4000人である。
司法書士が相続登記に関わる場合,概ね,
(1)全ての相続手続のポータルとして相談を受ける場合(「相続手続は何から始めたらいいの?」というケース)
(2)全ての相続手続の最後の手続として相続登記の申請の相談を受ける場合(預金の払戻しや相続税の申告等を全て終えてから相続登記を考えるケース)
のいずれかである。
前者(1)においては,「まずは預金の払戻しから」というケースが多いので,「とりあえず法定相続情報一覧図の写しの交付を受けましょう」となりやすい。
しかし,後者(2)においては,不動産登記の管轄が複数である場合(それほど多くはない。)でない限り,一覧図の写しの交付を受けるニーズはないのである。
そして,実感としては,圧倒的に,後者(2)のケースが多いように思われる。
私の事務所では,一覧図の写しを添付した相続登記の申請件数は,相続登記の申請件数全体のうち約20%程度であり,平均よりは多いといえるが,申出を代理した件数と同程度の持込件数(本人や他士業者が交付を受けたもの)があることから,それを差し引くと,必ずしも多いとは言い難い。
司法書士界としては,「司法書士が全ての相続手続のポータルとして相談を受ける」が理想であるが。
とまれ,申請サイドから考える「課題」としては,
・ 「一覧図の写しを添付した相続登記の申請」も,そうではない相続登記の申請と比して,登記完了までの日数は変わらないのは,何故?である。戸籍事項証明書等の調査がいらないのであれば,即日完了でもいいと思うくらいであるが,概ね登記完了予定日まできっちり日数を要している感である。もっと短期間に手続を了してもらえないのであれば,制度を利用するメリットは小さいのではないか。
・ 一覧図の写しの交付の申出から交付を受けるまでに概ね1週間程度を要している。もっと短期間に手続を了してもらえないのであれば,制度を利用するメリットは小さいのではないか。
・ 管轄が複数(例えば,3か所)である場合,3つの登記所で申請書の調査が重複してされることになり,全ての登記が完了するまでに相当の日数(1か月以上)を要することになる。3の管轄の一括申請を可能とし,申請をポータルで受理した登記所が責任調査を行い,他の2の登記所には調査結果を通知する等により,重複した調査をなくせば,スピーディーに登記完了に至ることができるものと思われる。おそらく登記所においても,このような未来予想図を描いているのではないだろうか。
一覧図の写しの交付の申出及び相続登記の申請のいずれも,本人申請(俗に「セルフ登記」と呼ばれているらしい。)が激増していると言われ,登記所の負担も比例的以上に増加していると聞く。司法書士界としても全面的に協力したいと思う(個人の感想です。)が,そのためには,もっとスピード感が欲しいところである。