司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

決算の確定日と官報公告掲載日の先後にご注意(補遺)&公告の内容は「登記アドレス」を

2023-04-06 16:15:51 | 会社法(改正商法等)
 ある上場企業(12月決算)が,資本金の額の減少の手続を行うにあたり,

2月15日 決算取締役会での計算書類の承認
3月24日 官報公告及び電子公告
3月29日 定時株主総会で計算書類の報告
3月31日 有価証券報告書の提出
5月 1日 効力発生日

というスケジュールを立てたようである。

cf.  官報
https://kanpou.npb.go.jp/20230324/20230324h00943/20230324h009430031f.html

電子公告
https://kozoimages.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wp-content/uploads/2023/03/22140705/4f7e15390189d641f0e3931805d3a533-2.pdf

 この株式会社は,会計監査人設置会社であり,会社法第439条前段に規定する場合にあっては,取締役会の承認(会社法第436条第3項)により決算が確定する。すなわち12月期決算である当該株式会社の「最終事業年度」(会社法第2条第24号)は,今年2月15日の取締役会の承認を受けた時点で,「令和4年1月1日~令和4年12月31日」ということになる。

 したがって,当該株式会社においては,取締役会の承認による確定後,3月31日に有価証券報告書の提出がされるまでの間は,最終事業年度に関する貸借対照表が公告又は公開されていない状態にあることになる。

 すなわち,

「会計監査人設置会社において,会社法第439条前段に規定する場合にあっては・・・取締役会の承認により決算が確定した後,定時株主総会までの間に組織再編を行う等により債権者保護手続の公告又は催告をする際の「最終事業年度に係る貸借対照表に関する事項」については,新たな最終事業年度に係る貸借対照表についての掲載場所等を記載できない(有価証券報告書提出会社にあっては、「有価証券報告書提出済み」と記載できない。)ことになり,「貸借対照表の要旨の内容」を掲載する必要があるので注意を要する。官報掲載の手続は,掲載予定日の2~3週間前には行う必要があるから,きわめて困難な問題を生ずる。」

cf. 平成20年5月15日付け「決算の確定日と官報公告掲載日の先後にご注意」

 本件株式会社は,定款で定める公告方法が「電子公告」であることから,確定した決算情報にたどり着けるようにと,自社HPの「決算短信欄」のリンクを公告に掲載したものであるようであるが,上記のとおり,「貸借対照表の要旨の内容」を掲載すべきであった。

 なお,有価証券報告書提出会社については,計算書類の公告に関する規定(会社法第440条第1項~第3項)が適用除外となっているので,本件株式会社が自社のHPに計算書類を掲載したとしても,何の意味も持つものではない。

 蛇足ながら,上記「決算短信欄」には,連結情報しか掲載されておらず,単体としての計算書類が掲載されていないというのも・・・(本件においては,全く問題にならないわけであるが。)。


 ところで,電子公告採用会社が公告に掲載するアドレスは,いわゆる「登記アドレス」である必要がある。

「例えば,会社の合併等において,債権者保護手続として官報に公告を載せる場合に,定款で定める公告方法が電子公告である株式会社は,「会社法第911条第3項第28号イに掲げる事項」をその内容としなければならない(会社法施行規則第188条第1号ハ等)。
 この場合の「会社法第911条第3項第28号イに掲げる事項」は,「登記されたアドレス」を意味するので注意を要する。
 官報のパンフレット等に,「公告が掲載されているホームページ等のアドレス」とあることから誤解が生ずるのかもしれないが,合併公告等に際して,誤って決算公告を掲載したアドレスをダイレクトに載せている株式会社が散見される。しかし,合併公告の内容として掲載するURLの末尾が「pdf」で終わることは,本来あり得ないものである。
 決算公告に辿り着ければよい,という善解もあり得るのかもしれないが,基本としては,法令遵守で,「登記されたアドレス」を掲載すべきである。」(拙編著「会社合併の理論・実務と書式(第3版)」(民事法研究会)500頁以下)


 スケジュールとしては,債権者保護手続の公告掲載を4月1日以降として,効力発生日も5月中旬あたりにセットすれば,公告の内容も「有価証券報告書提出済み」で何の問題もなかったはずである。

 気を付けましょう。次の論文も参考になります。

cf. 土井万二「最近の債権者保護手続の傾向と問題点」月刊登記情報2018年9月号(金融財政事情研究会)
https://e-koukoku.co.jp/pdf/touki-jouhou-2018_09.pdf
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中止イベントのチケット代の返金求め消費者団体が提訴

2023-04-06 11:50:01 | 消費者問題
NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20230405/2000072524.html

「消費者支援機構関西」が,消費者裁判手続特例法に基づき提訴した。

cf. 特定非営利活動法人消費者支援機構関西
http://www.kc-s.or.jp/detail.php?n_id=10001249
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国民生活センター,「消費者トラブルFAQ」を開設

2023-04-05 14:55:10 | 消費者問題
消費者トラブルFAQ by 国民生活センター
https://www.faq.kokusen.go.jp/?site_domain=default

「このサイトは、消費者トラブルにあわれた方に対して、FAQ(frequently asked questions)形式で、トラブル解決を支援する情報を提供するとともに、相談窓口等を案内するものです。
 消費者トラブルにあわれた方が、時間や場所を問わず、まずはご自身で解決方法を調べ、そしてご自身で解決を図ることができるような環境を作っていくことは非常に重要であり、本FAQサイトはこうした消費者による自己解決を支援するための有効なツールになると考えています。
 本FAQサイトの開設は、消費生活相談業務DX(デジタルトランスフォーメーション)の取組みの一環であり、DXの本格実施に先立つ実証実験として実施するものです。今後、本FAQサイトの利用状況や利用者からのご意見等を分析して、順次掲載するFAQ数を増やしていきつつ、消費者にとって、より探しやすく、理解しやすく、そして役に立つFAQサイトとなるように検討してまいります。」
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20230403_1.html
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取締役の選任議案,賛成が50.59%

2023-04-05 14:45:35 | 会社法(改正商法等)
時事ドットコムニュース
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023040400784&g=eco

 キヤノン株式会社の代表取締役会長兼社長についてであるが。

 ちなみに,3月総会なので,電子提供措置がとられている。

cf. キヤノン株式会社
https://global.canon/ja/ir/share/meeting.html
※ 臨時報告書(議決権行使の結果報告)を御参照。
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労働者協同組合の設立状況

2023-04-05 13:57:31 | 法人制度
労働者協同組合の設立状況 by 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32442.html

「労働者協同組合法が施行され半年が経過し、計34法人が全国各地に設立されました(令和5年4月1日時点で厚生労働省において把握しているものに限る。)。」
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活動実態のない「不活動宗教法人」を判断する基準

2023-04-05 09:25:40 | 法人制度
朝日新聞記事
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15602152.html?iref=mor_articlelink05

「活動実態のない「不活動宗教法人」を判断する基準を文化庁が示し、3月31日付で各都道府県に通知した・・・・・文化庁によると全国に約18万の宗教法人があり、2021年末時点で3348の不活動宗教法人が確認されている。」(上掲記事)

 下記の通知の別紙として示されている。

cf. 「宗務行政の適正な遂行について(通知)」(令和5年3月31日付け4文宗務90号)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/shukyohojin/93862801.html
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羽生九段が日本将棋連盟の会長に

2023-04-04 21:43:17 | 法人制度
朝日新聞記事
https://digital.asahi.com/articles/ASR445KGBR44UCVL014.html?pn=3&unlock=1#continuehere


「今月26日の投票は信任投票となり、過半数を得た後に6月9日の通常総会で正式承認される。選出された理事らによる互選を経て、羽生新会長が選出されることになりそうだ。」(上掲記事)

 日本将棋連盟は,公益社団法人であるので,法律的には,社員総会の決議によって理事として選任された後,理事会の決議によって代表理事(会長)に選定されるという運びである。
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相続税の申告漏れが後を絶たない

2023-04-04 19:25:55 | 税務関係
讀賣新聞記事
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230403-OYT1T50217/

「申告漏れ」というよりも,「無申告」や「遺産隠し」であるが。

cf. 令和3事務年度における相続税の調査等の状況
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2022/sozoku_chosa/index.htm
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オンラインにより交付請求された証明書を登記所で受け取る場合の取扱い

2023-04-04 16:48:34 | 法務省&法務局関係
オンラインにより交付請求された証明書を登記所で受け取る場合の取扱いについて(不動産登記関係)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00056.html

「オンラインによる登記事項証明書等の交付請求制度では、当該証明書を登記所で受け取る方法を選択することができますが、不動産登記規則(平成17年法務省令第18号)第197条の2(同規則第200条第4項及び第201条第4項において準用する場合を含みます。)の規定に基づき、当該証明書を受け取る者がその権限を有する者(請求者又はその使者)であることを確認するために登記所へ申告していただく法務大臣が定める事項は、以下のとおりとすることとされましたので、お知らせします。」

cf. オンラインにより交付請求された証明書を登記所で受け取る場合の取扱いについて(商業・法人登記関係)
https://www.moj.go.jp/content/001393402.pdf
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「商業登記等事務取扱手続準則」の一部改正

2023-04-04 16:37:59 | 会社法(改正商法等)
商業・法人登記関係の主な通達等
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

「商業登記等事務取扱手続準則」(平成17年3月2日民商第500号通達)の改正(令和5年3月23日付け法務省民商第65号民事局長通達)後の準則が公表されている。

 どこが変わった?
 
 直近の改正からすると,「不動産登記規則等の一部を改正する省令」(令和5年法務省令第6号)による「登記事項証明書等の交付の請求の方法」(商業登記規則第107条第5項及び第6項)の改正によるものであろうか?
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不動産登記簿の附属書類(登記申請書及び添付書面)の閲覧請求の手続

2023-04-03 16:42:00 | 不動産登記法その他
令和5年4月1日から登記簿の附属書類(登記申請書及び添付書面)の閲覧請求の手続が変わります。
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000001_00021.html

 民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)の施行に伴う不動産登記事務の取扱い(登記簿の附属書類の閲覧関係。令和5年4月1日施行)である。

 改正前は,申請人以外の者については,「利害関係を有する部分に限る」(改正前第121条第2項ただし書)であったが,改正後は,「正当な理由があるとき」に,「正当な理由があると認められる部分に限る」(改正後第121条第3項)ということになった。

 改正前は,「利害関係」が解釈に委ねられており,事例ごとに登記官が個別に判断せざるを得ないことの不都合があったことから,「正当な理由」と改正されたものと説明されている(中込一洋「実務解説改正物権法」(弘文堂)210頁参照)。

 通達(令和5年3月28日付け法務省民二第537号法務省民事局長通達)においては,

「この「正当な理由がある」とは、請求人において登記簿の附属書類を閲覧することに理由があり、かつ、その理由に正当性があることをいう。具体的には、登記簿の附属書類中の個々の書類に含まれる情報の内容、重要度なども考慮しつつ、その閲覧が認められる程度の正当性があるかどうかを個別に判断することになる。」

とされ,「一般に,正当な理由があると認められる場合」と「一般に,正当な理由があると認められない場合」について,例示がされている。

 詳細は,通達(上掲サイトにリンクあり)を御確認ください。


不動産登記法
(登記簿の附属書類の写しの交付等)
第百二十一条 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記簿の附属書類(電磁的記録を含む。以下同じ。)のうち政令で定める図面の全部又は一部の写し(これらの図面が電磁的記録に記録されているときは、当該記録された情報の内容を証明した書面)の交付を請求することができる。
2 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記簿の附属書類のうち前項の図面(電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの。次項において同じ。)の閲覧を請求することができる。
3 何人も、正当な理由があるときは、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、登記簿の附属書類(第一項の図面を除き、電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの。次項において同じ。)の全部又は一部(その正当な理由があると認められる部分に限る。)の閲覧を請求することができる。
4 前項の規定にかかわらず、登記を申請した者は、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類の閲覧を請求することができる。
5 第百十九条第三項から第五項までの規定は、登記簿の附属書類について準用する。
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土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ

2023-04-03 14:16:43 | 不動産登記法その他
土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0020003-124_01.pdf

「令和5年度の税制改正により、「土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減(租税特別措置法第72条第1項)」の登録免許税の税率の軽減措置について、その適用期限が令和8年3月31日まで3年延長されました。」
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施設において申請人等と直接面談ができない状況下における司法書士による本人確認情報の作成について

2023-04-02 10:50:16 | 不動産登記法その他
「司法書士による本人確認情報の作成について(回答)」(令和5年3月30日付け法務省民事局民事第二課長回答)が発出されている。

【趣旨】
 施設において申請人等と直接面談ができない状況下において、資格者代理人が施設に直接赴き、申請人等とは直接接触しない施設内の別室等においてテレビ会議を用いて本人確認を行った場合において、以下の【要件】を満たしているときは、不動産登記規則第72条の本人確認情報に該当するものとして差し支えない。

【要件】
・ 面識がある場合においても、面識がない場合においても、資格者代理人が現に赴いた施設の別室に申請人等がおり、当該施設内で映像と音声の送受信により相手方と相互に通話をし、直接面談と変わらない状態で意思の疎通や本人の確認ができること。
・ テレビ会議による面談を行ったやむを得ない事由が、申請人等の入所する施設から、健康上の理由等により直接面談が困難であるとの要請があったものであり、本人確認情報の内容として、テレビ会議による面談を実施する合理的理由が明らかにされていること。
・ 施設におけるテレビ会議による面談に同席した施設の職員や申請人等の家族等から、画面越しに映された申請人等が本人に相違ない旨を資格者代理人が聴取して、本人に間違いないという判断をした理由が本人確認情報の内容として具体的に明らかにされていること。
・ 資格者代理人が申請人等の氏名を知らず、又は当該申請人等と面識がない場合には、施設の職員又は申請人等の家族等から、不動産登記規則第 72 条第2項各号に掲げる本人確認書類の原本の提示をあらかじめ受け、かつ、提示された当該書類の内容を直接確認しなければならないこと(同条第1項第3号)。
・ 資格者代理人が行った本人確認情報の提供について、登記官がその内容を相当と認めること。
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遺贈によって不動産を取得した場合の所有権移転登記の単独申請

2023-04-01 09:52:45 | 不動産登記法その他
相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ(登記手続ハンドブック)
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000001_00014.html

「遺贈」のハンドブックが更新された。


「遺贈によって不動産を取得した場合の所有権移転登記の申請を検討されている相続人の方は、こちらのご案内をご覧ください。
 法律改正により、令和5年4月1日から、遺贈により不動産を取得した相続人(受遺者=登記権利者)は、単独で所有権の移転の登記を申請することができるようになります。
 なお、令和5年4月1日より前に開始した相続により遺贈を受けた相続人(受遺者)についても同様に、令和5年4月1日からは、単独で所有権の移転の登記を申請することができるようになります。
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