tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本の官庁統計は大丈夫か

2021年12月15日 15時50分29秒 | 政治
残念なことですがまた官庁統計で不祥事が明らかになりました。
国土交通省が主管する「建設工事受注動態統計」です。先に問題になった厚生労働省の「毎月勤労統計」も「基幹統計」、今回の「建設工事受注動態統計)も基幹統計で統計法により、違反すれば罰則があるという重要な統計です。

全国の建設事業者を母集団にしたサンプリング調査ですが、毎月調査なので、多分毎月調査票に記入して提出というのが手間なのでしょう、きちんと調査票が返ってこないというのが問題の原点のようです。

デジタル化すれば問題ないのでしょうが、「必ず鉛筆またはシャーペン」で「調査票に記入する」のが大変なので、ついつい遅れて、2、3か月溜めたりということになることもあるのでしょう。

マスコミによれば、そういう時は受け付けた地方自治体の担当者が、その分は、提出した月の受注として書き換え、前の1、2か月の分の調査票の受注は消ゴムで消してゼロにするようにという本章からの指示が出ていたとのことです。

結局、毎月統計が発表されていても月次の数字の動きは宛にならないことになるわけです。「提出が遅れたが毎月の正確な数字を書いた事業者のデータ」は無視され、月々の統計数字は提出月の受注となり、月次統計は実体を示さない無意味なものになります。

それでも、年統計の場合は、1年の合計ですからまあ何とか実態に近いものになるでしょうが、もう1つ大変奇妙な事があります。

それは、全国から上がってきたデータを纏める国交省では、調査票に回答しない事業者の分をゼロではなく、回答しないが受注はあったはずだという仮定で、「毎月回答してきた事業者の受注額の平均を推定値として計上する」というルールにしていたというのです。

これでどういう事が起きるかと考えれば、先ず、毎月の統計は纏め報告の月は膨らむので月々の変動は不正確なものだということになります。

そして回答のない事業者については、その月の平均の受注額があったと仮定しますから、回答の無い事業者の分は統計上説明できない誤差が出ることになります。無回答は中小に多いでしょうから、平均は上振れか?)

若し、纏め提出した事業者の、消ゴムで消した数字がゼロでなくて、回答がなかったといった事になっていると二重集計の可能性も出てきます。

統計は沢山ありますが、基幹統計は特に重要です。日本全体を表す「国民経済計算」は多くの基幹統計の集大成として作られるものです。誤ったものを積み上げれば誤った日本の姿が出来上がります。それを判断材料に政策を打てば効果には狂いが出ます。

正確な調査、正確な報告、正確な集計、正確なシステム設計、全てが揃わなければならないのですが、統計不祥事の起きるのは調査、報告、集計といった手間のかかる部分のようです。

折りしもデジタル庁が出来ました、「集計用紙に鉛筆かシャーペンで」、「消しゴムで消せるように」などと言っている時代ではないようです。
今後の国会論議に期待します。