tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

来春闘の経団連原案の賃上げ方針

2021年12月01日 17時03分10秒 | 労働問題
今日から師走、あと1か月で年が変われば、コロナ不況の中ですが、日本の労使の年中行事「春闘」の時期に入ります。

昨日、来春闘の経営側の方針についての日本経団連の原案がマスコミ報道されました。

それによりますと岸田政権の賃上げ奨励、賃上げ減税導入といった意向を忖度したのでしょうか
(収益が拡大している企業の基本給については)「ベースアップの実施を含めた新しい資本主義の起動にふさわしい賃金引き上げが望まれる」
という形で、賃金引上げに前向き対処の姿勢が示されているとのことです。

政府は賃上げを促進すれば、消費不振が解消されて、景気上昇の効果が起きいと考えているようで、経団連もその趣旨には賛成という事なのでしょう。

企業にとっての問題は「それならどのくらい上げればいいのか」という事になるのでしょうが、それについては
「コロナ禍が長期化し業績のばらつきが拡大する中、一律的な検討でなく各社の実情に適した賃金決定を行うことが重要」
としているとのことです。

コロナ禍の中でも好業績の企業もあるようですが、多くは業績不振に悩んでいるようですから、そういうところは無理をしないでという配慮でしょうか。

これでも経営側の方針と言えない事はないですが、企業はどう判断するのでしょうか。

以前は経営側は、基本原理として「生産性基準原理」を掲げ、日本経済の生産性の上昇に整合した賃金の引き上げを目指すべきという理論的にも現実的にも、明確な基準を示し、その上で、個々の企業は自社の状況を勘案して判断をすることを要請していました。

更に連合もこの考え方を理解し、今でも、それをベースにした形での賃上げ要求基準を組んでいるようです。

上記経団連の方針では、業績順調な企業だけが賃上げをし、政府はそれを支援して賃上げした企業には減税をするという事になり、賃金を中心に格差社会化がますます進むという結果になりかねません。

「新自由主義」ではそれを放置して、賃金の高い所が出ればその影響が均霑するといった「トリクルダウン仮説」などというのもありましたが、そうはならない事が実証されたのが現実です。

そこで出てきたのが、サプライチェーン、バリューチェーン全体に行き渡る付加価値の配分が重要という論議があり、労使が基本的にはその考え方を尊重する姿勢を取ったはずでした。

春闘におけるこうした労使の理論的、合理的な論争が、安倍政権の「官製春闘」の中でどこかに消えてっしまったという感じを受けています。

そして今「新しい資本主義」が岸田政権から打ち出されましたが、岸田政権、経団連、連合の、三者の関係が、いかなる方向へ日本を引っ張るのか、試されるところではないでしょうか。

「新しい資本主義」が、GDPの過半を占める雇用者報酬(日本経済の賃金の総額)の中での格差化を促進するような賃金決定を容認するようなことは、まさかないと思いますが、何か違和感のある情報が多いので、大変気になっているところです。