tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2022年度政府経済見通しを見る

2021年12月24日 23時10分45秒 | 経済
昨日、閣議了解版の2022年度「政府経済見通し」が発表になりました。
オミクロン変異株の市中感染が出たりしているので、この先の感染状況次第で、日本経済もどうなるか解りませんが、矢張り政府経済見通しは、一つの重要な指標でしょう。

一番大事な「実質経済成長率」を見ますと、
2020年度(実績)     -4.5%
2021年度(実績見込み)  2.6%  
2022年度(見遠し)    3.2%
となっています。

昨年度は、コロナという未経験なパンデミックで最悪、今年度は、コロナ禍でも何とか経済活動を確保したという面もあり、年度後半には感染状況も大分収まり、何とかプラス成長に持ち込み、さて来年度は、な何とか本格回復に持っていきたいという願望も感じる数字です。

民間経済研究機関の発表している「実質経済成長率」の数字を拾ってみますと、
大和総研の4.0%が最も強気で三井住友アセットマネジメント2.9%、第一生命2.9%、三菱UFJ銀行2.8%、三井住友信託銀行2.7%、ニッセイ基礎研究所2.5%といった具合で、政府見通しは強気の方です。

政府の強気を支える経済活動の分野は、民間最終消費支出4.0%、民間企業設備5.1%、財貨・ビスの輸出5.1%で、民間住宅建設は0.9%で昨年度の-0.5%よりは回復ですが、どちらかというと低調との見通しです。

寄与度で見ますと、実質成長率3.2%のうち、民間需要が3.0、貿易黒字0.2で、官公需要は0.0で中立となっています。政府の梃子入れで景気回復ではなく、民間需要と貿易黒字が経済成長を引っ張るという形の見通しになっています。

コロナ対策で、この2年ほど赤字国債を沢山出して、財政支出で経済を支えましたから、もうこれ以上は出来ないというところでしょう。

「実質経済成長率」政府見通しの中身を見ますと、2022年の日本経済が、巧にコロナ(オミクロン変異株)対策に成功すれば、ホッと一息ついた国民が日常、更には非日常の経済活動を活発にし、達成可能の範囲ではないかといった感じです。

ところで、実際の経済活動は、名目値で行われるので、最近些か上ずっている物価の動きを政府はどう見ているのでしょうか。

物価の主要な統計は、消費者物価指数と企業物価指数ですから見てみますと消費者物価指数上昇率は今年度の-0.1%から来年度は0.9%の上昇になり、企業物価指数は今年度の6.5%の大幅上昇から2.0%と鎮静化の見通しです。

2022年度の名目成長率は3.6%で、実質の3.2%との差0.4%がGDPデフレータ(総合物価指数)の上昇率という事になります。

という事で、今年は企業物価指数がこのところ9%も上がって、消費者物価指数もこのところ加工食品などの値上げが目立つので、今年の分はどうかと改めてみてみました。

今年の実績見込みでは企業物価指数は6.5%の上昇、消費者物価指数は‐0.1%と値下がりですが、企業物価指数の上昇が、どのくらいGDPデフレータを押し上げているかを見てみますと「ビックリ!」。GDPデフレータは‐0.8%と下がっているのです。

これは明らかに異常です。企業物価指数が上がっていて、消費者物価指数が僅か0.1%のマイナスで、この両者を3対7程度(7が消費者物価)で合成したのがGDPデフレータというのが常識ですから(輸出物価指数もプラスです)-0.8は異常です。

ミスプリかと思いましたが、たしかに2021年度のGDP成長率は実質2.6%、名目1.7%で、GDPデフレータが大きく下落し、実質成長率が名目成長率を0.9%上回っています。この数字については、更に検討する必要があるように思います。