tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

アメリカ経済の問題点、日本を走らす

2022年06月13日 17時04分26秒 | 経済
週明けの今日、円レートは135円7銭を記録、これは24年ぶりの円安だそうです。
原因は言わずと知れたアメリカのインフレ急伸を抑える金融引き締めと、日本銀行の異次元緩和継続のギャップです。

しかもこれが一過性のものではなく、アメリカのインフレ退治には時間がかかり、インフレと金融引き締めの戦いが長期に亘るのではないかという見方が出、これにマネーマーケットが反応、先週金曜日のダウ平均は880ドルの値下がりとなり、連続3日の下げで計1700ドルの下落という惨状です。

アメリカの動きを追って東京市場も今日は830円ほど下げて、円安なのに輸出産業の自動車も大幅下げが多いようです。
これから少しづつ良くなるのだろうかと、コロナの終息を望みつつある国民は、何か新しい不安な感じを強くしているのではないでしょうか。

マネーマーケットは実体経済とは違って、「恐怖指数」などと言うインデックスがあるように、安心感や恐怖心で動きますから、円安で儲かるはずの輸出産業の株が一時的に下がっても特に不思議ではないのでしょう。

本当の問題は、この所突如深刻になったアメリカのインフレが、一体どうなるかですが、もともとアメリカは値上げできればする、賃上げできれば取るという傾向が強いので、現状の8%インフレが簡単に収まるとは思えません。

消費者物価のコアコア指数が6%を越えている状態というのは、物価と賃金のスパイラルが起きているという事で、金融政策、金利引き上げでこれを止めることは容易ではありません。

かつて、同じようなことが起きたのは1970円台、石油危機後のアメリカで(ヨーロッパも同様でした)、原油高騰からインフレが酷くなり、金融引き締め政策を強めた結果はスタグフレーション、当時は「先進国病」と言われました。

結局それが治ったのは1980年代半ば以降、典型的には政権が変わり政権が労組の権限を抑え(レーガン改革、サッチャー改革、ミッテランの賃上げストップ、イタリアのスカラモビレ停止など)労組の穏健化で賃上げが小幅になって、やっとスタグフレーション脱出でした。

日本はこの時、政府は特に手を打ちませんでしたが、日経連(現経団連)と労働側の自主的な話し合いで早期にインフレを脱出(労働側も「経済整合性理論」を提唱)、スタグフレーションにもならず、「ジャパンアズナンバーワン」と言われました。

この所、欧米では賃上げが昔日の力を取り戻したようで、インフレと金融引き締めの競合の再燃です。
日本は、相変わらず賃金上昇の自主的抑制でインフレの炎は燃えません。インフレの炎が上がらなければ、日銀は金融緩和でOKサインです。

ただし、岸田政権は、全く慣れない事に直面ですし、参院選挙も控え、日本は大丈夫と国民に説明するために必死に走るでしょう。「新しい資本主義」と「成長と分配の好循環」の旗印だけでは足りないようです。

アメリカ、ヨローロッパで、金融引き締め、株価暴落で、マネーマーケットの不安が賃上げ抑制の効果を持つか、持たなければ、インフレと金融引き締めの戦いは長引き、実体経済在活動も次第に影響を受ける懸念があります(スタグフレーションの懸念)。

コロナの鎮静化による経済活動の活発化、加えて、ロシアのウクライナ侵攻という消耗戦が、欧米の生産活動にどう影響するかはまだ未知数ですが、状況はかなり難しいものになる可能性も小さくないようで、大変心配です。