tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

転んでもただでは起きるな:その後

2022年06月27日 14時42分09秒 | 労働問題
2020年2月26日、「新型コロナ」がいよいよ大事になるかもしれないという危惧が一般的になってきたころです。「転んでもただでは起きるな」と願いを込めて書きました。

論点は、日本人はもともと「転んでもただでは起きない根性」を持っているはずだという前提です。

その上で、きっと、個人個人の感染防止対策の実行といった基本的な問題から、政府の感染対策への取り組み、そして企業では、まだ数少ない特定企業だけでしたが、テレワークというかたちを日本のホワイトカラーの生産性向上につなげられるかといった問題まで、何か新しい進歩につながるのではないかなどと期待したのでした。

その後2年と4カ月ですが、新型コロナについての総括はまだ少し早そうです。

その中でも、政府の対応については、ワクチン、治療薬の外国頼みに終始といった問題点から、アベノマスクや1率10万円の支給、GoTo推進と感染予防の混乱、打撃の大きい飲食産業への給付金など「後追い」と「パッチワーク」が目立ち、現状でも、インバウンド拡大と感染防止のバランスは試行錯誤の繰り返しなど、問題が多いようです。

しかし、これまでの状況を結果的にみれば、日本は、政府の規制や強制などでは世界の中でも極めてソフトな対策が中心だったのですが、感染者数、死亡者数などの比較から見て、ベスト・パフフォーマンスの国の1つと言えるのではないでしょうか。

これは多くの人が予測していましたように、日本人の衛生観念、日常の手洗いうがい、マスクの着用、ソーシャルディスタンス、混雑の回避行動といった、個人ベースの社会的パフォーマンスの良さの徹底という面が大きかったのではないでしょうか。

一方、企業も、感染予防への配慮は、かなりのレベルの高さを維持したようです。
一般企業の感染対策のㇾベルはかなり高かったようで、その中で、テレワークの普及は、予想外の広範囲に及んだようです。

リモートワーク、モバイルワーク、テレワークの利用は次第に日常的なものになり、そのための機器、ソフトの普及も急速でした。

従来、毎日職場で顔を合わせて直接のコミュニケーションをとらないと仕事は上手く行かないなどというのが日本のサラリーマンの常識だったのですが、どうもそうでもないらしいとか、通勤時間がないというのはこんなに余裕が出るものなんですねぇ、とか中には、上役がいないから余計なストレスがないとか、帰りに一杯付き合えがなくなって小遣いに余裕が出来たなどという、様々なメリットが聞かれます。

勿論、日本の、サラリーマンですね、勤務時間はきっちり仕事をしています、という点は、かなり徹底しているようです。

そうした所にショッキングなニュースが入ってきました。
NTTが「仕事は原則自宅、出社が出張扱い」という社員をだんだん増やしていくという方針を打ち出したのです。
驚くなかれ、遠隔地からの出社で航空機を使えば航空運賃は出張旅費として支給ということだそうです。

これはまさに極め付けですが、これを効率的にする人事制度のソフトウェアが生まれることになるのでしょう。

恐らく、これからも多様な勤務体制・制度が生まれ、対応する人事管理上のソフトウェアが発展して来るのではないでしょうか。

偶々「新型コロナ」で転んだ結果が、こうした人事制度の開発を生み、デジタル社会の中で、より合理的、効率的な働きかたが生まれてくるという事は、低いと言われた日本のホワイトカラーの生産性の向上を齎し、「転んでもただでは起きるな」が現実のものとなっている事を示すものではないでしょうか。

恐らく政府も「後追いばかり」などと言われながら、ワクチン開発をはじめ、種々の分野で遅れてしまった日本の研究開発に力も金も注ぎこむ気持ちのようですから、少し長い目で見て「ただでは起きなかった」という事を実証してほしいと思っているところです。