tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

アメリカと日本、物価上昇の比較

2022年06月26日 10時06分38秒 | 経済
昨日、アメリカFRBのパウエルさんが、アメリカの金利引き上げについて、インフレ抑制に効果を発揮してきているという発言をしていました。

勿論、金利引き上げは、折角上がって来ている景気を下押しする効果も持つのでしょうが、アメリカの景気の状況はかなり強いという判断でしょうか、金利引き上げの結果、ドル高になっているので、輸入物価が引き下げられることになり、その分物価上昇にブレーキがかかるという効果もあるとの説明でした。

確かにその通りですが、日本にとっては、逆に円安が続くという事で、輸出産業にとっては有利ですが、輸入物価は上昇し、物価上昇を刺激するという効果があるわけです。

日本は折しも参院選で、その中で最大の争点は、物価上昇対策をどうするかという事ですから、ある意味では深刻な問題でしょう。

そこで今回は前回との関連にもなりますが、アメリカと日本の物価上昇の中身を比較して、日本ではどうすればいいかのヒントを探してみることにしました。

     日米物価上昇率の中身の比較(2020年5月、単位:%)

                         資料:各国統計
統計のまとめ方の違いで全く同じ比較にはなりませんが、出来るだけ似た様なものを並べました。

先ずアメリカの物価上昇ですが、総合が8.6%上がっていて、大きく上っているのは食料とエネルギーです。
アメリカで上がっているものは日本でも上がっています。しかし上げ幅は日本の場合アメリカの半分程度です。

日本でも食料品特に加工食品などはこの所また上がっています。アメリカの場合は、鳥インフルで鶏肉や鶏卵が大幅(30%以上)に上っている影響があるかもしれません。ガソリンの値上がりもアメリカの方が大きいのですが、日本の場合はもともと税金が約半分ですので、ガソリンが上がっても税金は金額で決まっていますから(消費税は別)値上がり幅が薄められるといったこともあります。

こうした国際商品の値上がりは世界共通で、日米両方とも上がりますが、日本の方が上げ幅が小さいという関係のようです。

一方アメリカのコアコア部分(食料とエネルギーを除いた部分)と日本の「生鮮食品とエネルギーを除く総合」は、国際商品の影響は部分的で、国内の事情で決まりますから、こちらは日米格差が極めて大きくなります。

アメリカのコアコア指数は6%の上昇、日本の生鮮とエネルギーを除く総合は、わずか0.8%です。

この物価上昇率の差の原因は、最下欄の賃金上昇率の差です。賃金を上げず物価も上げず、国際収支黒字の維持に固執する(?)日本、物価は上がっても、賃金も利益の上がって好景気になることを目指す(国際収支は万年赤字)アメリカといういわば真反対の構図です。

国際商品の価格が上がったから、国内商品の価格も引き上げやすい(ムード的に)賃金も利益も上がれば景気は強い、アメリカは元気という事ですが、結果は、アメリカの物価が上がるわけですから、問題は国際競争力(万年赤字)の行方です。

表に見ますように自動車の価格も宿泊料、航空運賃も、サービストータルの価格(ほとんど人件費)も上がります、輸出、インバウンドには不利でしょう。
加えて金利引き上げによるドル高です。貿易赤字国ですからドル高になれば輸入品が安くなり輸入産業の収益改善の方が大きいとは言え、輸出不振は赤字を増やします。

円安になっても賃金も利益も増えず、その中で物価安定と国際収支黒字が取柄で景気は低迷続きの日本、そして、それと全く反対のアメリカという構図が数字の下からはっきり見えてくるようです。(影の声:どちらも極端はやめたら!)