12月21日に来年度の政府経済見通しが発表されています。来年度予算が未確定ですから閣議了解の段階で閣議決定は年が明けてからですが、多分大きく変わらないと思いますので要点を見ておきたいと思います。
数字は22年度(実績)、23年度(実績見込み)、24年度(見通し)という形ですが、一番大事な経済成長率について見ますと
2022年度 2023年度 2024年度(単位:%)
名目成長率 2.3 5.5 3.0
実質成長率 1.5 1.6 1.3
という事で、来年度は名目でも実質でも今年度より下がることになっています。今年はインフレがひどい年ですから名目が5.5%と高いのは当然ですが、実質成長率も高くなるようです。
それに引き換え、来年は過去2年と較べても0.1~0.2ポイント下がるというのは意外というか、残念な感じです。
去年から今年にかけて19カ月連続で実質賃金が前年比マイナス続きといった実績があるわけですから、来年度は今年度より実質成長が下がるという事になりますと一体どうなるのですかといった感じです。
ということで国民の生活実感に直結する実質民間最終消費支出を見てみますと、今年度の伸びは僅か0.1%になっています。(民間住宅建設と輸出で成長率を稼ぐという形です)
それが来年度は1.2%になっています。つまり、インフレが収まるからその分実質消費支出が増えるという計算です。(インフレがおまく収まったくれますように)
閣議了解の段階では雇用者報酬の数字はありませんから、政府が賃上げをどう見ているかはわかりませんが、昨年度の消費支出の伸びが実質2.7%ですから、増えたと言っても来年度は昨年度の半分以下の伸びに止まるという事になります。
政府が賃上げを奨励し、最低賃金の大幅アップの方針を出し、主要労組が大幅な賃上げ要求を打ち出し、賃金上昇の期待がもたれ、更にインフレの鎮静化が予想される中で、昨年度の半分も実質消費が伸びないという政府の見込みは、一寸納得しにくいところです。
これでは、政府の言う「成長と分配の好循環」が、何時になったら回り始めるのか、国民の期待に応えられないでしょうし、演説は演説で、発表する数字は別という事になってしまいます。
子育てについては各種の給付金、教育の無料化の拡大、各種関連施設などの充実が言われ、高齢者福祉のための介護労働力などの待遇改善などが言われる中ですから、それでは政府の消費支出が増えるんかと見ますと、公需の寄与度は実質0.2%増で今年度と同じです。
民需の寄与度が実質1.2%で、合計1.4%でこれから外需の寄与度(貿易収支のマイナス)-0.1%を入れれば、実質経済成長率1.3%という事になっています。
民間住宅は落ち込んでいますが、民間企業の設備投資は実質3.3%の伸びで、内需寄与度の1.4%に貢献するという見通しになっているわけです。
元気なのは、企業の設備投資、これが相変わらずの主役、民間消費は貢献度は大きいが伸び率は企業設備より小さい、これでは、消費が牽引する成長経済にはまだまだ行き着かないという政府見通しのようです。
付け加えますと、就業人口は2024年も0.2%(前2年は0.3%)の伸びで、人口減少、高齢化でも、働く人の数は増えているのですから、人口構成が経済成長のマイナス要因にはなっていない(就業人口で見る限り)という事です。