日銀の政策金利の0.25%への引き上げが、マネーゲーマーたちの憶測から憶測を呼び、日本のマネー・サプライが日本発のマネー・サプライズを引き起こすことになったようですが、やっと何とか落ち着いてきました。
コストの安い日本のマネーを調達してリターンのいい外国で運用するという通称キャリー・トレードが、あまりにも広く行われていたのですが、その規模は把握されていなかったようです。
0.25%というのは、相変わらず世界最低の資金調達コストでないかと思いますが、それが更に高くなり、しかも金利の引き上げは円高につながりますから、調達金利コストが上がって、しかも返済の時には円高だという事になっては、レバレッジを効かせた信用取引は大変なことになるでしょう。
日銀が、日本経済の事情もありますから、そんなに急に金利引き上げなどしませんよといっただけで、状態は元に戻りつつあります。
この間、テレビには「専門家」ということで「ストラテジスト」とか「アナリスト」とか「トレーダー」などという難しい名前の方々が登場し、いろいろと解説をされましたが、ほとんどが金利やお金の流れの話で、実態経済とは関係のないことばかりでした。
やっぱり、経済と金融というのは、関係はあっても全く違う分野になってしまっていて、金融の分野の人たちは、お金の流れを読む達人で、お金がうまく自分のところに流れて来るように考えることが仕事なのだなという思いを強くしました。
これは本来の経済活動ではないですね。経済というのは「経世済民」の略で、世の中の動きをマネジメントして、人々の暮らしが豊かになるようにする」という事ですから「付加価値」つまり人々の生活に役立つ財やサービスの生産を増やすことが基本です。
マネーゲーマーのやっていることは、「経済活動」で増えた付加価値を買うことが出来るお金をいかに自分の所に沢山来るように、お金の流れをうまく利用する方法を考えるということになるのでしょう。
ところが今は政府から始まって、経済問題といえば、どうすればお金がたくさん入って来るかということが「経済問題」の主要な課題で、付加価値(GDP)は年1%でも増えればそれで良いというような事になっているようです。
日銀のおかげ様か、時間が解決したあのか、その両方なのか、それはよく解りませんが、マネーの世界の混乱も一応落ち着いてきたようです。
然し、「ああこれで良かった」ではないはずです。6月にはボーナスが増えたお蔭で、実質賃金がプラスになりました、しかし7月以降はまたマイナスになるという見方も多いようです。これはマネーゲームでは解決しません。
GDPは、実体経済が順調に動かなければ増えないのです。そのために、いま日本は何をしなければならないのか、政府が国民から借金をして定額減税や補助金といったバラマキをやっても効果のないことは経験済みです。
混乱が静まったところで、裏金のマネーゲームではない、本当の経済政策を政府も考え、労使も33年ぶりの高い賃上げ率だと満足せずに、もっともっと頭を使い、汗をかく事が必要なのではないでしょうか。