大失敗を書いた後、「越境する市民活動と自治体の多文化共生政策」(東京外国語大学)の中で、弁護士の関聡介さんが、「外国人相談『通訳』に求められる条件と課題」と題して書いておられるものを読んだ。
「外国人相談」との看板で行われている相談会は実際は日本語を母語としない相談となるので、言語面での橋渡しと同時に制度面・文化面での橋渡し、さらには専門家・非専門家間の橋渡しが求められる。つまり高度なコミュニケーション能力が求められている。
相談通訳業務の困難性 通訳相手と初対面、通訳内容も初めて、通訳時間が短い、専門用語がつかわれる、費用負担のシステムがない、通訳者の待遇が悪い。
通訳人選定を巡る問題 語学力 最低限の法的知識 本国事情や文化などに関する知識 相談通訳の経験 通訳倫理 利害関係の不存在
通訳業務の実施をめぐる問題点 公平・公正・中立性の担保 忠実さ・正確性の担保 落ち着きと共感
6ページほどの短く、分かりやすい文章でネット上にも公開されているのでご自身で読んでみられることをお勧めしますが、私には特に次の指摘が効いたよな。 私はもちろん そんな実力者ではないけれど。
「実力者で経験者である通訳者ほど注意を要する点である。本来であれば、通訳は弁護士の言葉を忠実かつ正確に相談者に伝え、相談者の言葉を忠実かつ正確に弁護士に伝えることが予定されている。しかし実力者である通訳人は、弁護士の質問が難しい内容である場合にさまざまな補足や変更を加えて相談者に伝え、相談者の発言が拙かったり合理であったりすると、自ら相談者に問いただしたりする。その結果、表面上はスムーズなコミュニケーションが進んでいる様相が醸し出されるが、通訳人の頭の中の作業の過程で、質疑が改変され、非常に大事な部分がそぎ落とされていまったり歪曲されてしまったりする恐れがある」
外国語の通訳者の人たちと一緒に勉強会をやりましょうねえ、今年も。
法廷の異文化と司法通訳 中国籍被告人を裁く時 (ブックレット〈アジアを学ぼう〉14) (ブックレット アジアを学ぼう) | |
岩本 明美 | |
風響社 |