こんな記事が載っていました。認知行動療法は今はやりの「療法」ですが、回復へのプログラムは一つだけではないんで、こんないろんな試みが始まり、広がっていったらええなあと思う。
脱・薬物依存:女性受刑者を支援 東京の更生施設
毎日新聞 2012年08月29日 02時32分
女性専用の更生保護施設「両全会」(東京都渋谷区、小畑輝海理事長)は今月、薬物依存者の再犯防止と社会復帰を目的としたプロジェクト「ローズカフェ」を始めた。更生保護施設が専門家と連携し、本格的な薬物依存回復プログラムを実施するのは初めて。【江刺正嘉、伊藤一郎】
両全会は定員20人の約半数が覚醒剤使用の元受刑者。小畑理事長が「入所者が就労、自立しながら薬物依存から離脱できるプロジェクトを」と考え、大学教授や医師が協力、保護観察を管轄する法務省の意見も聞きながら準備してきた。27日時点で6人が受講を決めている。
プログラムには薬物依存からの回復に有効な心理療法「認知行動療法」を活用する。対象者は覚醒剤使用で服役後に入所し、参加を希望した人。認知行動療法のトレーニングを受けた臨床心理士との面接やグループセッションを重ね、薬物使用のきっかけとなるストレスとうまく付き合う方法を学ぶ。期間は半年間(12回)の本プログラムを中心に3年間。就労・居住先を見つけて両全会を出てからも受講を継続できる。
プロジェクト名は「幸福」を花言葉とするバラ(ローズ)と、気軽に参加できるイメージを託した「カフェ」を合わせた。将来は修了者で自助グループを作り、その呼称にもしたいという。
プロジェクトリーダーの伊藤絵美・洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長(千葉大大学院医学研究院特任准教授)は「薬物の再使用を防ぐためだけでなく、社会で幸せに暮らせるお手伝いをしたい。修了者には将来、ローズカフェの一員としてサポートする側にまわってもらうことを期待したい」と話している。
◇「罪悪感なく」「彼に誘われ」
「ローズカフェ」の受講を決めた両全会の入所者2人が毎日新聞の取材に応じ、薬物体験と更生への思いを語った。
40歳の女性は銀座でホステスをしていた6年前、ダイエット目的で覚醒剤を始めた。1日で3キロやせる経験をし、やめられなくなった。「ごく普通のサラリーマンや主婦のような人も(購入先の)売人の所に来ていた。私もその1人かなと思う程度で、罪悪感はなかった」という。
使用を始めて2年後に逮捕され、執行猶予判決を受けた。ショックだったが「やめるきっかけになる」という安堵(あんど)感もあった。だが昨年3月の東日本大震災の夜、また使ってしまった。「いつ何が起きるか分からないと思うと、自制して生きていても仕方がないと考えてしまった」。今度は実刑判決を受けた。
服役中に「もうやらない」と決意したが、仮釈放後は「また街でクスリ仲間と偶然会ったら、誘惑に負けないでいられるか」と不安もある。「自立生活を始めた後もこの施設とつながっていられたら、負けずに済むかもしれない」とプログラムに期待する。
47歳の女性は4年前、交際相手に誘われ覚醒剤を始めた。「ちょっとくらいなら大丈夫かな」と使ってみると、体が軽くなり、たまっていたストレスも吹き飛ぶ気がした。
逮捕され執行猶予判決を受けたが、彼との同居生活に戻ると、また使ってしまった。妄想が始まり「パソコンの中身を盗み見られているとか、携帯を遠隔操作されているような気がして、イライラが止まらなくなった」。
猶予判決から1年後に再び逮捕され、2年3カ月を刑務所で過ごした。仮釈放直前、思い切って彼に別れの手紙を出した。「クスリと縁のある人との関係を切らないと、自分の未来はない」。出所後は連絡を絶ち、ウエートレスをして働きながら自立に向けて歩み出している。
「覚醒剤はもう絶対に使わない。でも、施設を出てどこかで心の揺れがあったとき、一歩手前で相談できる所があったほうがいい」
【ことば】更生保護施設
主に保護観察所の委託を受け、行き場のない刑務所出所者らに一時的に滞在する部屋や食事を提供し、仕事や居住先が見つかるよう支援する施設。善意の篤志家などが設立し、国の認可を受けて委託費や自治体の助成金、寄付金などで運営している。今年4月現在、全国に104施設あり、収容定員は計約2300人。