グラミン銀行創設者でノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスさん。
日経ビジネス誌2024.3.25号のインタビューに取り上げられています。
尊敬する「ソーシャルビジネスの父」のユヌスさん。
御年84歳ですが、写真を見るととてもお元気そうです。
このインタビュー記事では、ユヌスさんの最新の考え、思想を知ることが出来ました。
ユヌスさんは、1940年英国統治下のバングラディシュ生まれ。
ダッカ大学卒業後にフルブライト奨学金で米国ヴァンダービルト大学に留学。
経済学博士号(Ph.D)を取得します。
欧米では、経済学は理科系の世界・・・数学理論、数値モデルを中心にして理科系の実験のように研究していくそうです。
1972年に国に帰りチッタコン大学の経済学部長を務めます。
1983年グラミン銀行を創設し、マイクロクレジット(無担保少額融資)で貧困層(特に女性)の自立をサポートしました。
2006年にはグラミン銀行とともにノーベル平和賞を受賞します(個人的にはノーベル経済学賞でも良いと思うのですが・・・)。
「グラミン」とは、ベンガル語で「村落」という意味だそうです。
グラミン銀行は、国内で1000万人以上の人たちに無担保融資をしてきました。
机上の空論に走りがちな経済学者とは違う、現場、実務、ミクロのスタンスを重視するユヌスさん。
本当にすごい方です。
今回のインタビューでは、ロシアとウクライナの戦争、ガザ危機の分析から始まります。
「経済の枠組みのデザインに欠陥がある。より多くのものを手に入れようとする時に他者との間に緊張が生まれ、それが対立や戦争に繋がっていく。」
ユヌスさんは、経済システムの再設計という視点から世界をとらえています。
格差社会、階層社会、貧富の差、環境破壊といった資本主義の限界が見え始めた今、次のフェーズをどうしていくか?という視点が大切になってきます。
同記事のユヌスさんの発言をまとめさせていただきました。
富とは力です。経済力を持てば、政治力がメディアの力が手に入り、政治社会システムを自在に操れるようになります。
富を蓄積する活動は国境を越えて拡大しています。
最終的には一握りの人が世界の富を独占することになるでしょう。
分断は経済システムに根差しています。
必要なのは、分かち合い経済への転換。
現在の経済システムは環境問題や失業問題を悪化させ、富の集中を加速させている。
これを反転させて、貧困ゼロ、失業ゼロ、二酸化炭素ゼロを達成する世界を目指さなければならない。
これからは、分かち合い、思いやり、助け合いが基本になる。
銀行は、まず、お金を持っていない人にお金を貸すことからはじめて、徐々にお金を持っている人へと融資先を広げていくべき。
現在のシステムは、大衆を無視している。
融資したバングラディシュの女性たちは学校に行ったことがない、教育を受ける機会に恵まれなかった人がほとんどでした。
しかし、それでも5ドル、10ドルといった資金を得ると皆ビジネスを立ち上げたのです。
ビジネスの始め方が分からないという文句を言うことはなく、融資さえすれば何とかしました。
彼女たちは決して「仕事をください」とは言いませんでした。
仕事とは、いわば雇い主に身をゆだねる奴隷制度です。
世界には、80億人の起業家がいるのです。
金儲けを目的としない新しい種類のビジネスを導入すれば、わたしたちの社会問題、環境問題、水問題が解決できるのです。
これがソーシャルビジネスです。
わたしなら金儲けよりソーシャルビジネスを選びます。
もはや、どこの国でも政府による生活保障や支援は機能していません。
その仕組みは受給対象者に「お金は提供するから、何もするな」と言っているようなものです。
誰もが創造性を持つ人間なのに。
資本主義がお金を稼ぐこと以外の選択肢をあたえないから、あなた方(日本)は行き詰まってしまったのです。
ソーシャルビジネスは一つの突破口になるでしょう。
日本は創造的な力に恵まれています。
一歩踏み出せば、日本の多くの課題を解決できると思います。
世界が日本を待っています。
現在、ユヌスさんは、スラム街にある小学校に栄養食を配るプロジェクトや職のない青年たちに自動車整備の技術を教え日本などに派遣する事業を進めているとのこと。
ユヌスさんの言葉に勇気と希望をいただいた次第です。
起業する人たちが増えるといいなあと思います。
喜劇王チャールズ・チャップリンの言葉を思い出しました。
「人生に必要なものは、夢と勇気と、わずかなお金」。
この国にも、まだまだ希望はあると思います。