能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

グレー企業になりなさい!中小企業が生き残るための究極の経営戦略

2015年05月15日 | 本と雑誌

グレー企業になりなさい!中小企業が生き残るための究極の経営戦略

長尾雅昭著  現代書林  1300円+税

ファストフード店やアパレル店などで、労働法を無視した労務管理を行ったとして、ネット上で炎上。

「ブラック企業」として、社会的にも大きな非難を受ける事件が相次ぎました。

「ブラック企業」の烙印を押されると、パート社員やアルバイトの募集に苦労するほか、消費者からの不買運動、購入拒否などで大打撃を受けることになります。

 

「グレー企業になりなさい!」とは、穏やかではありません。

著者の長尾さんは、特定社会保険労務士であり、税理士である実務家。

中小企業や零細企業では、労基法に代表される労働法をそのまま導入すると経営がもたないと指摘します。

残業代(時間外手当)や有給休暇などは、法の許す限りギリギリ基準を就業規則に定めるべきと指摘します。


もともと、労基法や労組法などは、労働条件の最低限の基準を定めたもの・・・それが、日本の高度成長、グローバル化の中で大手企業を対象とした基準に変わっていきます。

大手企業、上場企業は、経営の余裕もあり、法律の縛りに対してもフレキシブルに対応することが出来ます。

まさに、「ホワイト企業」です。

(大企業でも、かなりひどいことをやっているブラック企業もありますが・・・)

ただ、日本の企業の70%は中小企業、零細企業であり、大手「ホワイト」企業並みの労働条件を実現することは、かなり難しい状況・・・。

「ブラック企業」でもなく、「ホワイト企業」でもない、「グレー企業」を目指しなさいというのが、著者の主張です。

税法の世界でも、違法な脱税ではなく「節税」という合法的な手立てがあります。

これが、著者が同書で言う「グレー企業」というコンセプトになったのだと思います。

ただ単に、大企業並みの労働条件をスライドさせるのではなく、法令遵守という大前提のもと、自社の体力に見合った処遇を行っていく・・・さらに、明日への成長、希望、期待を社員と共に共有化していく・・・そういう経営が必要だと思います。

 

目次

第1章 経営者を悩ませる、社員・職場トラブルは盛りだくさん

第2章 生き残りたいなら「グレー企業」になりなさい

第3章 「グレー企業」のすすめ1 売上と人件費をつかもう

第4章 「グレー企業」のすすめ2 残業代の対応

第5章 「グレー企業」のすすめ3 問題社員との正しい接し方

第6章 「グレー企業」のすすめ4 労働基準監督署との付き合い方

第7章 「グレー企業」が目指すべき会社像

 

同書では、中小企業、零細企業での生々しい事例が紹介されています。

 

事件簿1 「未払い残業代を払え!」という内容証明が送られてきた

事件簿2 休みがちな社員が会社を辞めない

事件簿3 働かない問題社員

事件簿4 労働基準監督署がやってきた

 

実務的には、賃金体系の変更、就業規則の整備といった方法論で解決に向けての手を打っていくのですが、労務管理の世界は、人間対人間の生々しい世界・・・法律論一本での解決が難しい世界なのです。

場合によっては、ADR、労働審判、労働裁判に発展していくリスクもあります。

労働者との口約束だけではなく、就業規則の整備、労務管理の書面化などを通じて、ブラック企業にはならない、そして、自社の体力をしっかり把握して単純にホワイト企業を目指さないことが中小企業や零細企業には必要だと思います。

 

労使のコミュニケーションが円滑な中小企業では、紛争や揉め事が少ない傾向にあります。

そんな労使なかよしの中小企業は、労基法の基準ギリギリでも、離職が少ない中小企業は多いです。

また、経営が順調で利益が拡大している企業も、紛争や揉め事が少ない傾向にあると思います。


まずは、自社の独自の技術、商品、サービスを開発し、営業利益の拡大を目指すこと、

そして、労使なかよし状態を創出すること、

そのためにオープンブックマネジメントを日常的に展開していくこと

・・・それが労務問題を起こさないための重要ポイントだと言えると思います。

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