人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

サントリーホール・チェンバーミュージックガーデン~オープニング・コンサートを聴く

2013年06月02日 07時01分46秒 | 日記

2日(日)。昨日の日経朝刊に「家のピアノでプロがライブ~演奏データを配信」という記事が載りました記事を要約すると、

「ヤマハは5月、米国でピアノ演奏番組のネット配信サービスを始めた 単に演奏会の様子を生放送するのではない。著名な奏者が弾くピアノには高精度なセンサーと通信装置を付け、鍵盤やペダルの動きをデータに変換。利用者はパソコン経由で自宅の自動演奏機能付きピアノで受信すると、ほぼ同時にピアノがプロの音色を奏でる 総務庁の調査によると、ピアノを所有する世帯の割合は約20%。家庭に1千万台近いピアノがある計算だが、使われていないピアノが多い。ネット技術でこうしたピアノを再生すれば、新ビジネスが広がる可能性がでてきた

この記事を読んで「さすがはヤマハ 何でも商売に結び付けるものだ」と感心しました。しかし、遠くの会場で演奏した音をデータ変換によって自宅のピアノで再現させたとしても、その演奏はあくまでも「再生音楽」です 演奏家が目の前で演奏しているわけではありません。言うまでもなく、コンサート会場で聴くときにはその会場の残響時間や客の収容人数などに左右されます ボリュームを上げたり下げたりすることも出来ません それらをトータルして生演奏の醍醐味を味わっているわけです。したがって、いくらこういうテクノロジーが進んでも「音楽はコンサート会場に出かけていって聴くべきもの」というポリシーの私には全く興味がありません。あっ、その前にピアノ持ってないし・・・・・・

 

  閑話休題  

 

サントリーホールがブルーローズ(小ホール)で毎年6月に開いているサントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデンが昨日から始まりました このコンサートは5月のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンとともに私が毎年楽しみにしている音楽祭です

昨夕、ブルーローズでそのオープニング・コンサートを聴きました プログラムは①プーランク「チェロ・ソナタ」、②ドビュッシー「チェロ・ソナタ」、③フォーレ「チェロ・ソナタ第1番」、④ラヴェル「ピアノ三重奏曲」です

出演者はヴァイオリン:依田真宣、チェロ:堤剛、ピアノ:クレール・デゼールです 依田は2010年3月に東京藝大大学院を修了したばかりの俊英です。堤は今年3月まで桐朋学園大学学長を務め、2007年からサントリーホール館長を務めています。デゼールはパリ国立高等音楽院室内楽教授で、日本でも5月のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに出演するなどお馴染みのピアニストです

 

          

 

自席はC4列32番、センターブロックの左側です。ピアニストもチェリストも良く見える絶好の位置です客席が舞台をコの字で囲む配置となっています ブルーローズは通常スクール形式ですが、室内楽を演奏する時はこのスタイルを採るようです。会場はほぼ満席。照明が落とされて、意外なアナウンスがありました

「演奏に先立ちまして、さきに亡くなられたチェリスト、ヤーノシュ・シュタルケル氏を偲んで、コダーイの”アダージョ”を演奏いたします。故人を偲んで皆さまそれぞれが冥福を祈っていただけたらと存じます。なお、演奏前後の拍手はご遠慮下さるようお願いいたします」

そして堤剛とクレール・デゼールが登場、静かに”アダージョ”を演奏しました 10分程の穏やかな曲でした。シュタルケルと言えばコダーイの無伴奏チェロ・ソナタのLPがこの曲の決定盤でした 個人的には、トッパンホールで室内楽コンサートがあった時にシュタルケルが出演していて、その時会場に皇太子夫妻が聴きに来られていたのを思い出します。その時雅子さんはご懐妊中でした

静かに曲を閉じた後、堤とデゼールは一旦舞台袖に引き上げて、再び拍手に迎えられて登場しますデゼールは鮮やかなブルーのブラウスに黒のパンツルックです

1曲目のプーランク「チェロ・ソナタ」は、プーランクらしいウィットに富んだ軽妙洒脱な音楽です 2曲目のドビュッシー「チェロ・ソナタ」の演奏に入る前、デゼールは椅子を高めに調整しました 堤は時々、薄目を開けながら”座頭市目線”で演奏するので、出来るだけデゼールの方を見るように努めました

休憩後のフォーレ「チェロ・ソナタ第1番」を演奏する前に、デゼールはさらに椅子を高めに調整しました。プーランクよりもドビュッシーの方が、ドビュッシーよりもフォーレの方が、より高い位置から打鍵することを予言しているようでした

普段あまり馴染みのない曲を聴く際に心がけていることがあります。それは、すべての楽章を集中して聴くことは困難なので、アダージョ楽章(ほとんどが第2楽章)だけは集中して聴くのです。アダージョ楽章の演奏が良い場合は他の楽章も良いものです

そういう意味で、フォーレのソナタは、堤のチェロは良く歌い、デゼールのピアノは良く付けていました

ヴァイオリンの依田真宣が加わって、最後の曲、ラヴェル「ピアノ三重奏曲」が演奏されます 冒頭、ピアノが入ってくるところで「ああ、ラヴェルっていいな」と思い、次いでヴァイオリンが入ってくると「ラヴェルって最高だな」と思いました。白熱の演奏の中、フィナーレを迎えましたが、今回感心したのは、ほとんど新人の依田真宣のヴァイオリンです この人は近い将来、この世界に名前を轟かせることになるかもしれません。注目です

この日のコンサートはフランスもの4連発でしたが、十分楽しませていただきました

 

          

 

コメント
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