人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

東京交響楽団の第610回定期コンサートを聴く~秋山和慶のR.シュトラウス「英雄の生涯」

2013年06月03日 07時00分03秒 | 日記

3日(月)。昨日の午前中は今後コンサートで聴く曲の予習をしました この日の午後、東響定期演奏会でリヒャルト・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」を聴くので、カール・ベーム指揮ドレスデン国立管弦楽団によるCD(1957年録音)を聴きました オーケストラで一番好きなのはこのドレスデン国立管弦楽団です。ドレスデン国立歌劇場管弦楽団とも表記されますが、原語はStaatskapelle Dresdenです。かつてFM放送からブラームスの交響曲が流れてきた時「これはドレスデンの音だ」と言い当てたことがあります。いぶし銀のような独特な輝きを持ったオーケストラです

 

          

 

次いで、同じコンサートで演奏されるバルトークの「ヴァイオリン協奏曲第1番」を予習しようと思いCD棚のバルトーク・コーナーを探してみたのですが、どこにもありません 他の作曲家のヴァイオリン協奏曲とカップリングされている可能性があると思ってドヴォルザークやチャイコフスキーなどのコーナーを探しましたが、やはりどこにも見当たりません 4,000枚の中から探し出すのは困難です。元々持っていないのかもしれません しかたないので諦めました

次いで、来週木曜日にアメリカのボロメーオ・クァルテットの演奏で聴くベートーヴェンの弦楽四重奏曲「第10番”ハープ”」、「第11番”セリオーソ”」、「第12番」を、アルバン・ベルク四重奏団によるCD(1979年録音)で聴きました ジェフリー・アーチャーの「時のみぞ知る」を読みながら聴いていたのですが、第12番変ホ長調の第2楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ・エ・モルト・カンタービレ」が流れてくると、思わず目を休めて曲に聴き入ってしまいました ベートーヴェンは深いです

 

          

 

と言う訳で、昨日午後サントリーホールで東京交響楽団の第610回定期演奏会を聴きました プログラムは①リヒャルト・シュトラウス「交響詩:ドン・ファン」、②バルトーク「ヴァイオリン協奏曲第1番」、③リヒャルト・シュトラウス「交響詩”英雄の生涯”」です。指揮は秋山和慶、コンサートマスターは大谷康子、②のヴァイオリン独奏はイェウン・チェです

 

          

 

6月号のプログラムでリヒャルト・シュトラウス「ドン・ファン」の解説を見ていて、おやっと思いました 7行目に作曲者が「音詞」と名付けた作品の最後の曲として「英雄と生涯」と書かれています。単純な校正ミスだと思いますが、目立ちます 後世に残らないように更生してほしいと思います

オケがスタンバイして、ロマンスグレイの秋山和慶の登場です。タクトが振り下ろされ、冒頭からオケはフル回転です ドン・ファンが風車目指して突っ込んでいくような勢いを感じさせる演奏です 秋山和慶の指揮を見ていていつも思うのは、キビキビしていて気持ちが良く、オーケストラのメンバーも演奏しやすいのではないか、ということです オーケストラが指揮者に全幅の信頼を寄せていることが分かります。かつてNHK交響楽団を振った故・ウォルフガング・サヴァリッシュを髣髴とさせるシュアな指揮振りです

弦楽器が縮小され、ソリストのイェウン・チェがワイン・レッドのノースリーブ・ドレスで颯爽と登場します1988年ソウル生まれといいますから現在25歳。年の割にしっかりとした印象を受けます 

バルトークのヴァイオリン協奏曲第1番は、天才ヴァイオリニストと言われたゲイエルという女性のために作曲されたのですが、彼女に振られてしまったのですね したがってこの曲の初演はバルトークの死後、ゲイエルの没後に遺稿を譲り受けたパウル・ザッハ―によって実現したのでした

この曲は、ヴァイオリンの独奏から始まります。次いで第1ヴァイオリンの2人が加わり、さらに2人が加わり、次に第2ヴァイオリンが加わり、ヴァイオリン・セクション全体に広がり、管楽器が加わります 室内楽からオーケストラ曲へと移行するような曲です イェウン・チェは第1楽章「アンダンテ・ソステヌート」を一音一音を丁寧にゆったりと紡いでいきます。第2楽章「アレグロ・ジョコーソ」は一転、民族的なメロディーを軽快に奏でます

会場一杯の拍手に、イェウン・チェはコンマスの大谷康子に何やら話かけ、大谷が新しい楽譜を譜面台に載せて2人で向かい合います。どうやら2人でアンコールを演奏するようです まず大谷が舞曲のようなメロディーを奏でると、イェウン・チェがそれに応えます。バルトークのようですが、曲名までは判りません。しばし軽快な二重奏が続いて2人の弓が上がりました。会場一杯の拍手 が二人を包み込みました。あとで会場の外の掲示をみて、それがバルトークの「44の二重奏曲から第35曲”ルテ二アのコロミイカ舞曲”」であることを知りました 同じ韓国のヴァイオリニスト、シン・ヒョンスは新日本フィルとブラームスの協奏曲を演奏した時、弦楽セクション全体を巻き込んでアンコールを演奏しました。韓国の女性ヴァイオリニストはオケのメンバーを巻き込んで一緒に楽しむのが好きなのかも知れません 日韓両国の友好関係のためにも素晴らしい試みではありませんか 音楽に国境はない

休憩後のリヒャルト・シュトラウス「英雄の生涯」は、先週東京藝大学生オケで聴いたばかりの曲ですオケが再び拡大され舞台が狭く感じます。冒頭「英雄」のテーマがフルオーケストラで勇壮に展開されます 続く「英雄の敵」ではフルートとオーボエによる批評家たちの”悪口”が皮肉たっぷりに奏でられ、思わずほくそ笑んでしまいます 続く「英雄の伴侶」での大谷康子のヴァイオリン・ソロは、英雄を優しく支え、時に激しく応援する伴侶の姿を髣髴とさせる見事な演奏です 「英雄の戦場」「英雄の業績」を経て、最後に「英雄の完成と引退」が勇ましく、その後穏やかに演奏されます。ここでのイングリッシュ・ホルンの懐かしいようなメロディーは深く心に残ります

演奏を振り返ってみると、この日の「英雄の生涯」は指揮者・秋山和慶の半生を振り返った演奏ではなかったか、とさえ言えるほど充実していたように思います

 

          

 

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