人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ヴィヴィアン・ハーグナーのヴァイオリン・リサイタルを聴く~クールなブラームス

2013年06月19日 07時00分21秒 | 日記

19日(水)。昨日の日経朝刊に「新入社員の間違いやすい慣用句」が載っていました

「寸暇を惜しまず努力して、押しも押されぬ第一人者になって、汚名を晩回したのに、足元をすくわれた」

これを正しく言うと、

「寸暇を惜しんで努力して、押しも押されもせぬ第一人者になって、汚名を返上したのに、足をすくわれた」

となります。「日本語は難しい」というのは的を得た指摘です。これ、正しくは「的を射た」指摘です

 

  閑話休題   

 

昨夕、紀尾井ホールでヴィヴィアン・ハーグナーのヴァイオリン・リサイタルを聴きました プログラムは①シューベルト「ヴァイオリンとピアノのためのロンド ロ短調」、②リスト「悲しみのゴンドラ」、③同「協奏的大二重奏曲」、④ブラームス「ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調”雨の歌”」、⑤同「ハンガリー舞曲集」より第17番、第19番、第3番、第6番。ピアノは高橋礼恵です

ハーグナーはミュンヘン生まれ。これまでベルリン・フィル、ミュンヘン・フィル、ゲヴァントハウス管弦楽団、ニューヨーク・フィルなど世界の主要オーケストラと共演している実力者です

 

          

 

自席は1階12列5番。左ブロック右通路側です。会場は8~9割の入りでしょうか ヴィヴィアン・ハーグナーは白地にゴールドの模様が入った衣装、高橋礼恵は黒を基調としたシルバーのラメ入りのドレスで登場です

1曲目のシューベルト「ヴァイオリンとピアノのためのロンド ロ短調」は1826年10月の作品です。導入部に続いてシューベルト特有のロンドが延々と続きます ハーグナーは身体の動きを最小限にとどめ淡々と演奏するので、始めはちょっとヴァイオリンが大人しいかな?と思いましたが、徐々に調子が乗ってきたのか熱を帯びてきます

2曲目のリスト「悲しみのゴンドラ」は1882年の年末頃ヴェネチアで作曲したと言われています 当時、ヴェネチアでは葬送の際に遺体がゴンドラで運ばれる例が多く、リストはその印象をもとに書いたと思われます 静かに重い足取りの音楽が奏でられます。ハーグナーは何故この曲を選んだのだろうか、とふと疑問に思いました

次いで演奏されたリストの「協奏的大二重奏曲」は1835年の作品です。超絶技巧を要する箇所もあることはありますが、曲のタイトルほど大げさな派手さはありません

休憩後の1曲目、ブラームスの「ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調」は「雨の歌」という副題が付けられていますが、これは、彼が数年前に作曲した歌曲「雨の歌」が第3楽章に引用されているところから付けられたものです

ハーグナーはこの有名な曲も淡々と弾いていきます。彼女の演奏を聴いていて、先日聴いた韓国のチョン・キョンファとは対局にあるヴァイオリニストだな、と思いました 一言でいえばハーグナーはクールです。実に冷静で過激に突っ走ることはありません それと、もう一つ思ったのは、この人は弱音を大切にする人だな、ということです。弱音部が非常にきれいです

最後はブラームスの「ハンガリー舞曲集」から第17番、第19番、第3番、第6番が演奏されました。同じ舞曲でも曲想に応じて見事に弾き分けていました

会場いっぱいの拍手に、「アリガトウ!(聴衆)。ハンガリー・ダンス・セブン」と言って、ブラームスのハンガリー舞曲第7番を鮮やかに演奏しました。

鳴り止まない拍手 に、シューベルトの「ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ第3番Op137-3」を穏やかに演奏しました

この選曲が、彼女の演奏スタイルをよく現していると思いました。ヴァイオリンのテクニックをひけらかすのではなく、じっくりと聴いてほしい、そのために自分にふさわしい曲を選ぶ、という主張を感じます

最後に付け加えるとすれば、パートナーの高橋礼恵のピアノです。前半のシューベルトやリストなどは、むしろ高橋がハーグナーを励まし、後押ししていたように感じました この二人の相性は抜群に良いと思います。今後も注目したいと思います

 

          

コメント
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