人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

マーラー「交響曲第5番嬰ハ短調」を聴く~東響名曲全集(ミューザ川崎)

2013年06月10日 07時00分11秒 | 日記

10日(月)。昨日お昼ちょっと前、コンサートに行くためJR巣鴨駅に向かう途中、向こうから歩いてくる一人のご老体に遭遇しました。先方も私に気が付いたようで、「似ていると思ったが、やっぱり君か」と声を掛けられました。元の職場の最初の上司Kさんでした。「まさか地元の巣鴨でお会いするとは思いませんでした」と言うと「君はこの辺に住んでいるのかい?」と訊くので、「ここから徒歩で10分ほどの白山通り沿いのマンションです」と答えました。「ところで、どちらへお出かけですか?」と尋ねると「お墓参りだよ」との答え。近くの染井霊園に行かれるようです。手にした荷物にバラの花が一輪見えました 「まだ、今のセンターで働いているの?」と訊かれ「はい、あと2年半は働きます」と答えると、「それは良かった。働けるというのは良いことだよ」と言われました。

Kさんは私が昭和49年に元の職場に入社した時の国際担当の直属の上司で、日本語、英語の文章の書き方からマナーに至るまで、仕事に関するすべてのことを教えてくれた恩人です 現在、英国人の奥さんとロンドンにお住まいで、年に一度、歯医者通いやら何やらで帰国されているようです

「今度7月に元職場のOB会がありますから、そこでお会いできますね」と言うと「明後日ロンドンに帰らなくちゃならないんだよ」とのこと。名残惜しかったのですが、そこで別れました。こんな偶然もあるのかとビックリしましたが、お元気な様子で何よりでした

 

  閑話休題  

 

昨日午後、ミューザ川崎で東京交響楽団の「第87回名曲全集」コンサートを聴きました プログラムは①バッハ「トッカータ、アダージョとフーガ・ハ長調BWV564」(オルガン:松井直美)、②アルビノ―二「オルガンと弦楽のためのアダージョ・ト短調」、③マーラー「交響曲第5番嬰ハ短調」の3曲。指揮は東響正指揮者の飯森範親です

 

          

 

会場の照明が暗転し、2階のパイプオルガン席だけにスポットライトが当てられ、上下濃紺の衣装を身をまとった松井直美が登場します バッハの「トッカータ、アダージョとフーガ」は”急、緩、急”の3つの楽章から成ります。大地震の影響による長期間の改装作業のため、本当に久しぶりにミューザ川崎のパイプオルガンを聴きましたが、素晴らしい響きです

2曲目のアルビノ―二に入る前に、指揮者の飯守がマイクを持って登場、次のように解説しました

「今日、コンマスのニキティン氏が演奏するヴァイオリンは、陸前高田市の”奇跡の1本松”の一部を根柱に使っています。どんな音が奏でられるか、お楽しみください

舞台上には弦楽器奏者20名と、舞台中央に配置されたポジティフ・オルガンを弾く松井直美がスタンバイします。ここで、あらためてプログラムでアルビノ―二の「オルガンと弦楽のためのアダージョ」の解説を見て、唖然としました そこには次のように書かれていました

「実は、この曲はアルビノ―二が作曲したのではなく、アルビノ―二の専門家であるイタリアの音楽学者レモ・ジャゾット(1910-98)が作曲したもの。かつては、発見されたアルビノ―二のソナタの自筆譜の断片を使って作曲された、とも言われていた」

初耳です 知らなんだ 無知です この機に及んで恥ずかしい限りです

演奏は、ゆったりとしたテンポで進められ、ヴァイオリン・ソロでは、ニキティン氏の弾く”奇跡の1本松ヴァイオリン”の深みのある音が会場を満たします 終演後、ニキティン氏はヴァイオリンを人間に見立ててお辞儀をさせて、拍手喝さいを浴びていました

休憩後のマーラー「交響曲第5番」は、それまでの2番から4番までの交響曲が声楽を伴った曲だったのに対し、純器楽編成により作曲されたという意味で、一つの転換期にある曲だと言えます。5番以降は7番まで純器楽編成が続きます

この頃マーラーは、ウィーン宮廷歌劇場の音楽監督を務めており、世間では、作曲家としてよりも指揮者としてのマーラーの方が高く評価されていて、そのことを彼は不満に思っていたようです 同時代人に自分の作品を理解されない不満を「やがて私の時代が来る」と言い表したと伝えれられていますが、それから100年後の21世紀の現在、まさにマーラーの音楽が求められています

第5交響曲は第1楽章から第3楽章までが、1901年夏にオーストリア南部にあるヴェルター湖畔のマイヤーニックで作曲され、翌1902年夏に第4~5楽章が作曲されました ちょうどその間にマーラーはアルマに出会い、1902年3月に結婚しました この第4楽章「アダージェット」はアルマへのラブ・レターとして書かれたと言われています

第1楽章はトランペットの”葬送”ファンファーレで開始されます。冒頭の「タタタターン」はベートーヴェンの運命の動機のパロディです ここで躓くと曲が台無しになりますが、さすが東響の金管はシュアな実力者です ティンパ二が非常にいい働きをしています

第2楽章は嵐のようなテーマが吹き荒れます。マーラーは何かと戦っています

第3楽章はまるでホルン協奏曲のような感じで、ホルンや他の管楽器がソロを奏でます 強奏部ではオーボエやクラリネットが、楽器の先端を持ち上げ、客席に音がストレートに届くように演奏します。これはマーラーの指示によるものです

そして第4楽章「アダージェット」が弦楽器とハープのみで静かにロマンティックに奏でられます 管楽器と打楽器はしばし休みながら嫋やかな音楽に耳を傾けています

第4楽章は間を置かずにホルンが入ってきます。最後は金管が華やかにコラールを奏で、熱狂的にフィナーレを閉じます 

この日の飯守+東響によるマーラー「第5交響曲」は、今まで聴いた演奏の中で最も長く感じました 実際にゆったり目の演奏だったのか、あるいは、プログラムに「この日の演奏は、国際マーラー教会による新校訂版(2002年出版、R.クービク校訂)による」とありますが、この版と関係があるのか、分かりません テンポで言えば、たしかに第4楽章「アダージェット」は思い入れたっぷりの濃いめのスープのような演奏でしたが、他の楽章はそれ程でもなかったように思います 同じ演奏でも長く感じたり、短く感じたりするものです。聴く側の意識の問題かもしれません

 

          

 

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