人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

花房晴美「室内楽シリーズ~パリ・音楽のアトリエ 第11集 Chic & Shock」を聴く

2016年04月23日 08時56分34秒 | 日記

23日(土)。わが家に来てから573日目を迎えリビングから出ようかどうか迷っているモコタロです

 

          

 

  閑話休題  

 

昨夕、上野の東京文化会館小ホールで「花房晴美 室内楽シリーズ パリ・音楽のアトリエ 第11集 Chic & Shock」を聴きました プログラムは①エリック・サティ「グノシエンヌ第1番、第4番」、②同「幻想・ワルツ」、③イーゴリ・ストラヴィンスキー「タンゴ」、④サティ「スポーツと気晴らし」、⑤同「猫のシャンソン」、「いいとも、ショショット」、「優しく」、「あなたがほしい」(④⑤バリトン=坂下忠弘)、⑥ストラヴィンスキー「春の祭典」(2台ピアノ版)です 出演はピアノ=花房晴美、花房真美、朗読=幸田弘子、バリトン=坂下忠弘です

 

          

 

全席自由のため開場30分前の6時に並びました。すでに20数人が列を作っていましたが、結局 センターブロック 前から6列目の通路側席を確保しました 周りを見渡して見て分かることは、このコンサートの客層は高齢女性の花房晴美ファンが多いのではないか、ということです ヒロインのピアノ演奏はもちろんのこと、彼女の身に付けるファッションにも興味深々の目を向けるマダム連です 宝塚のズカ・ジェンヌみたいな乗りでしょうか リピーターが多いのではないかと想像します。主催者にとってこれ程ありがたい人たちはいないでしょう

さて、前半はピアノ独奏とバリトン独唱によるエリック・サティを中心とするプログラムです

 

          

 

花房晴美が 白を基調とした黒の模様の入ったエレガントなステージ・ドレスで登場、グランド・ピアノに向かいます エリック・サティの「グノシェンヌ」の第1番、第4番、「幻想・ワルツ」を続けて演奏します 彼女の演奏で聴くサティは”フランスの香り”を感じます

次にストラヴィンスキーの「タンゴ」をリズム感豊かに演奏します

再度、花房晴美が登場しピアノに向かうと、後からナレーターの幸田弘子が山高帽にステッキ姿で登場します 譜面台に向かおうとする時、ステッキが引っ掛かり、山高帽が落ちてしまいました 「慣れないものを被るから」と言って笑いを誘っていました。脱帽です

出し物はエリック・サティの「スポーツと気晴らし」です。この曲は12のピアノ小曲から成りますが、最初に曲を解説する幸田のナレーションがあり、次いで曲を演奏するスタイルで進行されます サティは皮肉屋で タイトルも風変わりなものが少なくありません。第1曲は「食欲が失せるコラール」、第19曲は「恋の火遊び」です

「舞台朗読」という新しい分野を確立した功績として1981年、82年、84年と続けて芸術祭優秀賞を受賞するなど、数多くの受賞歴を持つ幸田弘子のナレーションは堂々たるもので、姿勢もシャキッとしていました

次に、花房とともにバリトンの坂下忠弘(二期会所属)が胸にキラキラ輝く宝石を着けて登場し、エリック・サティの「歌詞のない3つの歌曲」から「ランブイエ」「鳥たち」の2曲歌います これは、まさに歌詞がないので 坂下は「あ~あ~」とスキャットのようにメロディーを歌います

坂下は次に 歌詞のある歌「猫のシャンソン」「いいともショット」「優しく」「君が欲しい」をフランス語で歌いました 私が分かるのは「君が欲しい」だけですが、「猫のシャンソン」と「いいともショット」は実に楽しい曲でした

気をよくした坂下はアンコールにフォーレの歌曲「夢の後に」を歌いました。それにつけてもフランス語は美しいですね

 

          

 

プログラム後半は、2台のピアノによるストラヴィンスキーの「春の祭典」です

花房姉妹が鮮やかな赤のステージ衣装で登場し、会場の女性陣からため息が漏れます ここで思ったのは、「花房晴美は、今回のタイトル『Chic &  Shock』を、プログラム前半と後半のステージ衣装の色で表現しようとしたのではないか シックな黒白とショックな赤で」ということです

向かって左サイドのファーストに晴美、右サイドのセカンドに真美がスタンバイします。いつも管弦楽で聴いている耳にはピアノだけによる「春の祭典」は新鮮に聴こえます ピアノはもちろん”鍵盤楽器”ですが、二人の演奏を聴いていると、ピアノはハンマーでピアノ線を叩いて音を出す”打楽器”であることを認識させられます

演奏中の花房晴美の右腕を見ていると、細い腕にも関わらず、筋肉が逞しく動きが俊敏であることに気が付きます 相当の力が働いているのでしょう。二人は暴力的なまでのバーバリズムの極致「春の祭典」を精緻に かつ大胆に演奏しました

ところでこの曲は、ディアギレフのバレエ団がニジンスキーの振付でバレエを上演する目的で、ピエール・モントゥの指揮により、1913年5月29日、パリのシャンゼリゼ劇場で初演されましたが、”これまで聴いたことのない野蛮な”作品に対し、賛成派と反対派が殴り合いの喧嘩を始めるほど大混乱に陥ったと言われています もし、自分が その時の聴衆の一人としてその場に居合わせていたら、「春の祭典」に対してどういう反応を示しただろうか?と考えると、多分 近くにある物を投げつけていたかも知れません 今でこそ、CDが普及して何度でも繰り返し聴いて、何の違和感も感じませんが、当時はそんな恵まれた環境にはなかったはずです

そんなことを考えているうち、最後の音が鳴り終わり、大きな拍手が起きました 二人はアンコールに、何の曲か分かりませんが、スコット・ジョプリンの”ラグ・タイム”風のリズミカルな曲をノリノリで演奏し、さらに大きな拍手を受けました

その後、花房晴美だけが登場し、ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」を演奏し、コンサートの幕を閉じました

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