26日(火)。わが家に来てから576日目を迎え、久しぶりにマガジン・ラックでくつろぐモコタロです
ケーブルテレビの月刊誌がクッション変わりだよ
閑話休題
昨日、夕食に「豚肉とチンゲン菜の重ね煮」と「生野菜サラダ」を作りました あとは「男前豆腐の食べるラー油乗せ」です
も一度、閑話休題
吉松隆著「調性で読むクラシック」(ヤマハミュージックメディア)を読み終わりました 著者の吉松隆は作曲家で、1953年東京生まれ。1981年に「朱鷺によせる哀歌」でデビューしましたが、それ以降は、いわゆる「現代音楽」の非音楽的な傾向に異を唱え、調性やメロディーを復活させた「新抒情主義」「現代音楽撲滅運動」を提唱し、交響曲、協奏曲、ピアノ曲などを作曲しています NHK-FMのクラシック音楽番組の解説者としても活躍しており、何度か聴いたことがありますが、非常に分かり易い解説でした
この本の大きな特徴は、長年にわたりクラシック音楽を聴きながら、「今更こんな簡単なこと、恥ずかしくて人に訊けないよ」と思うことを、基本の「き」から教えてくれることです 私など、音楽と言えば、小学校から高校までの音楽の授業で習ったことや、社会に出てから1年間フルート教室に通ったくらいで、まったくのド素人と言ってもいいくらいです
著者は、音楽を聴く側が疑問に思っている「なぜクラシック音楽は題名に調号(ハ長調とかニ短調とか)が付いているのか?」、「なぜ長調の曲を聴くと楽しく感じ、短調の曲を聴くと悲しく感じるのか?」という基本的なことから分かり易く説明していき、楽器からみた調性(例えば、ヴァイオリンはト長調、ニ長調、イ長調、ホ長調が最も鳴り易い)の話に入っていきます
私にとって意外だったのは、ピアノ曲では ♯ や ♭ が多いほど演奏が難しいと思っていたら、逆だという事実です 彼は解説します
「白鍵だけを弾くより黒鍵を含む調の方が弾きやすい これは人間の手の指の並びが『弧』を描いているためで、例えば親指と小指で白鍵を弾いた場合、人差し指、中指、薬指は自然に黒鍵の上に乗る。全部白鍵で弾く、という方が逆に弾きにくいのである このことから、こと鍵盤楽器に限っては、黒鍵の多い(♯♭の多い)調の方が技巧を聴かせやすい、という不思議な現象が起きる。事実、シューベルトやショパンやリストなど近代ピアノを駆使した作曲家ほど、♯♭だらけの曲を書いている これは『難しくするため』ではなく、逆に『弾きやすくするため』なのである」
そして、それぞれの調性の特徴と代表的な名曲について述べていきます
「ハ長調」 明るく真っ白なイメージで開放的。モーツアルト「ピアノ・ソナタK545」第1楽章。
「ニ長調」 神を連想させる、祝祭的な響き。ベートーヴェン、チャイコフスキー、ブラームスの各ヴァイオリン協奏曲。
「ヘ長調」 ホルンが活躍、牧歌的な雰囲気を持つ。ベートーヴェン「交響曲第6番”田園”」。
「変ロ長調」 明るく軽やか、管楽器がよく鳴る。モーツアルト「ファゴット協奏曲」。
「ホ短調」 愁いのある響きで、センチメンタルを誘う。メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」。
「ニ短調」 ドラマティックで、『人生』を感じさせる。ベートーヴェン「第9交響曲」。
「ト短調」 暗い響きだが、ダイナミックな曲が多い。モーツアルト「交響曲第40番」。
「ハ短調」 光の『ハ長調』と鮮やかな対比をなす影の短調。
最初にも書きましたが、この本は音楽の基礎について非常に分かり易く書かれており、クラシック音楽鑑賞の最適のテキストです クラシック音楽が好きな人で、「今更こんなこと 恥ずかしくて訊けないよな」と思っている人に強くお薦めします
最後の、閑話休題
昨日、池袋の新文芸坐で「風林火山」を観ました これは井上靖の小説『風林火山』を稲垣浩監督が1969年に映画化したものです
タイトルの『風林火山』とは、甲斐の戦国大名・武田信玄の旗指物(軍旗)に記された「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」(はやきこと風の如く、しずかなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如し)のことを意味します
映画は、武田軍の名参謀・山本勘助の生涯を、主人公に三船敏郎、武田信玄に中村錦之助、上杉謙信に石原裕次郎、由布姫に佐久間良子など、当時の豪華キャストで描いた165分のカラー大作です
敵将の娘・由布姫への秘めた慕情を絡ませながら、信玄の参謀としての山本勘助の能力の高さを描きます 勘助の戦略によって、すべての戦いで勝ち抜く訳ですが、「川中島の合戦」では上杉謙信の率いる軍から裏をかかれ、自らの命を落とします
映画を観ていて思ったのは、あまりにも山本勘助が立派に描かれていて、ご主人の武田信玄がいかにも”若造”に描かれていることです 三船プロ製作なので仕方ないでしょうが また、馬に乗って戦う武将は恵まれているけれど、いわゆる”足軽”と呼ばれる人たちは大変だったろうな、ということです 何しろ、槍一本で相手の陣営に突っ込んでいく訳ですから。もう一つ、この時代にはまだ”鉄砲”という武器がなかったのだな、ということです
それにしても、つくづく戦国時代に生まれなくて良かったと思います