人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ジョナサン・ノット+東響でR.シュトラウス「ツァラトゥストラはかく語りき」他を聴く

2016年04月17日 08時55分38秒 | 日記

17日(日)。わが家に来てから567日目を迎え、東京大地震が起きたらこのCDラックの下敷きになるので、リビングに行こうか自分のゲージに戻ろうか考えている、のかどうか分からないモコタロです

 

          

                 ご主人のCD4000枚のうち 700枚がモーツアルトだってさ

 

  閑話休題  

 

一昨日の朝日夕刊に「レバイン氏退任へ メトロポリタン歌劇場音楽監督」という小さな記事が載りました。記事を超訳すると

「METは音楽監督のジェームズ・レバイン氏(72)が体調を理由に今季限りで退き、名誉音楽監督に就任すると発表した  後継は現在、選定を進めている。同氏は1976年に音楽監督に就任以来40年にわたって務めてきたが、近年はパーキンソン病の影響で指揮することが難しくなっていた

私がレヴァインの指揮を観たのは昨年10月31日にMETで上演されたワーグナー「タンホイザー」のライブビューイングです 休憩を入れて4時間に及ぶオペラを車椅子状の指揮台で振り切ったのには驚きを禁じえませんでした もう、あんなことは無理でしょう。本当にお疲れ様でした、と言いたいと思います 後継者が気になりますが、順当なところでは現在METの首席指揮者を務めるイタリア出身のファビオ・ルイージでしょう。彼だったらレパートリーも広く、あらゆるオペラに関する知識も深く、METの歌手陣にも信頼が厚いので文句の出ようがないと思います

 

  も一度、閑話休題  

 

昨日、初台の東京オペラシティコンサートホールで東京交響楽団のオペラシティ シリーズ第91回演奏会を聴きました プログラムはリゲティ「アトモスフェール」、②パーセル「4声のファンタジア」から第7番、第5番、③リゲティ「ロンターノ」、④パーセル「4声のファンタジア」から第4番、第6番、⑤リゲティ「サンフランシスコ・ポリフォニー」、⑥リヒャルト・シュトラウス「ツァラトゥストラはかく語りき」です 指揮は音楽監督のジョナサン・ノットです

 

          

 

オケのメンバーが入場し配置に着きます。弦楽器は左から 奥にコントラバス、前に第1ヴァイオリン、右にチェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置、”ジョナサン・ノット・シフト”をとります 文字通り「フル・オーケストラ」なので 楽員はステージいっぱい処狭しと並んでいます 2階正面バルコニーのパイプオルガンの左サイドには神戸愉樹美ヴィオラ・ダ・ガンバ合奏団の女性4人がスタンバイします。コンマスは客員の林悠介。管楽器を見ると、先日のリサイタルで素晴らしい演奏を披露した首席オーボエ奏者・荒木奏美の姿があります

今回のプログラミングについて、「Symphony4月号」の「シンフォニー・ラウンジ」の対談で、音楽評論家の舩木篤也氏が、

「4月のオペラシティでの演目を見ると、スタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」がすぐに思い浮かびます 神となる曲、リゲティの『アトモスフェール』とR.シュトラウスの『ツァラトゥストラはかく語りき』は、いずれも映画の中で用いられていました

と問いかけたのに対し、ジョナサン・ノットは、

「もちろん、それを念頭に置いての選曲です。まず、リゲティをなるべくたくさんお聴かせしたいという前提があった しかし、そればかりで成功に導くのは難しい。そこで、あの映画との絡みから『ツァラトゥストラ』を考えました

と答えています。また、リゲティ(1923-2006)作品の間に、古いパーセル(1659-95)のヴィオラ・ダ・ガンバによる四重奏曲を挟んだ理由については、

「異なったポリフォニーを対置するためです。パーセルの英国式の和声に触れた後では、より敏感にリゲティに反応できるはずです

と述べています。ノットはイギリス出身なのでイギリスの作曲家の曲を選んだのだと思います

以上のような意図のもと、プログラム前半のリゲティ~パーセル~リゲティ~パーセル~リゲティは切れ目なく演奏されます 最初のリゲティ「アトモスフェール」は「2001年宇宙の旅」(1968年)のエンディングで流れた曲です ”静かなる混沌”とでも表現できるような曲想です。「大管弦楽の総力をもって静寂を表現する」ような印象です

リゲティの曲が終わるとステージの照明が落とされ、2階正面バルコニーのヴィオラ・ダ・ガンバ合奏団にスポットライトが当てられ、パーセルの「4声のファンタジア」が演奏されます リゲティより約290年ほど古い時代の音楽です。リゲティで緊張を強いられていた聴衆は、ほっと肩の力が抜けるような思いがします 次いで、再度リゲティの「ロンターノ」で緊張し、パーセルで開放され、最後にリゲティ「サンフランシスコ・ポリフォニー」で世界の混沌を聴くことになります

この曲はサンフランシスコ交響楽団の創立60周年記念委嘱作品で、音楽監督だった小澤征爾(在任1970-76年)と同オケに捧げられています 曲は、港町サンフランシスコの喧騒を表しているかのような、騒音交じりの音楽で、最後は急に終止符が打たれます 楽譜の最後には「完全な静寂、沈黙を」と書かれているとのことです。これはつまり「最後の音が鳴り終わった直後の”しじま”も曲の一部である」ということを明確に表していることになります したがって、音が鳴り終わるや否や大きな拍手をしたりブラボーを叫ぶのは、音楽を途中で遮る行為となる訳です。リゲティのこの曲に限らず、演奏が終わっても、指揮者のタクトが降りるまでは拍手やブラボーは控えるのが常識ですね

ノットのタクトが静かに降ろされると、会場いっぱいの拍手とブラボーが沸き上がりました 現代音楽を得意とするジョナサン・ノットの面目躍如といったところでしょう カーテンコールが5回ありました。休憩前の演奏に5回のカーテンコールは滅多にお目にかかったことがありません

 

          

 

休憩後はリヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」です この曲の冒頭、オルガンと低弦に導かれて、トランペットがハ調(ド~ソ~ド)の動機を奏で、ティンパ二が劇的に打ち鳴らされます。未知の扉を開くような雰囲気の曲、「2001年宇宙の旅」の冒頭を飾った音楽です

リヒャルト・シュトラウスは1892年ごろ、ニーチェ(1844-1900)の「ツァラトゥストラはかく語りき」に出逢い、いわゆる”超人思想”を悟った人物を描いた哲学書から、かなり自由な霊感を得て、交響詩として作曲したのです

第1曲「序奏」から第9曲「夢遊病者の歌」まで9つの曲から成りますが連続して演奏されます。第8曲「舞踏の歌」では、コンマスによる”オペレッタ風ワルツ”の演奏がありますが、客員コンマスの林悠介のソロは素晴らしかったです この人、イタリアのヴァイオリン・コンクールで優勝しており、オケには属さず室内楽を中心に活躍しているようです。これからの活躍が期待されます

ジョナサン・ノットはテキパキしたタクトさばきにより、東京交響楽団の持てる力をフルに引き出し、誇大妄想的なリヒャルト・シュトラウスの大管弦楽曲による交響詩を音で再現しました

 

          

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