人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ジョナサン・ノット+東響でブラームス「ドイツ・レクイエム」他を聴く

2016年04月25日 07時34分45秒 | 日記

25日(月)。わが家に来てから575日目を迎え、月曜日から上昇志向を見せるモコタロです

 

          

            上昇志向じゃなくて アゴを出しているだけだよ

 

  閑話休題  

 

昨日、サントリーホールで東京交響楽団の第639回定期演奏会を聴きました プログラムは①シェーンベルク「ワルシャワの生き残り」、②ベルク「ルル」組曲、③ブラームス「ドイツ・レクイエム」です ①③のバス・バリトン&語りはクレシミル・ストラジャナッツ、②③のソプラノ独唱はチェン・レイス、合唱は東響コーラス、指揮は音楽監督のジョナサン・ノットです

 

          

 

1曲目はシェーンベルク「ワルシャワの生き残り」です この曲はナレーターと男声合唱と管弦楽によって演奏されます。P席は使わないので、約60人の男声合唱はオケのすぐ後ろにスタンバイします コンマスは水谷晃。語り手のバス・バリトン、クロアチア出身のクレシミル・ストラジャナッツがノットとともに登場します かなり背丈が高くガッチリした体形です

この曲は、シェーンベルク自身の実体験とナチスのユダヤ人迫害に関する直接的・間接的な報告に基づいて作曲されました 生き残った者が、一人称の英語で回想していきます

曲の冒頭、不穏な音楽が会場を満たしていきます。語られる内容の一部は次のようなものです

「そこに私はほとんど意識を失って倒れていた。あたりはとても静かになっていた。-恐怖と苦痛ーそれから私は聞いた。軍曹が叫ぶのを、『数えろ!』。彼らは数え始めた。ゆっくりと不規則に。一、二、三、四。『気をつけろ』軍曹は再び叫んだ、『速くやれ!最初からやり直し!』ー分以内に俺は知りたい。何人をガス室送りにするのかを!『シェマーイスロエル(聞け、イスラエルよ)』と」

最後に、死を前にした、名もなき囚われの群衆たち(男声合唱)が、ヘブライ語で「聞け、イスラエルよ!」というユダヤ教の祈りを唱えます 私はプログラムで歌詞を読んでいるときは、もっと穏やかな曲だと思っていたのですが、実際に祈りの歌を聴くとかなり力強いので予想外でした

管楽器を中心に規模が拡大し、2曲目のベルク「ルル」組曲に入ります これは師シェーンベルクの60歳の誕生日のためにまとめられた作品です。魔性の女ルルが数々の男たちを巻き込んで破滅していく、世紀末を象徴するかのような不条理劇です

歌劇「ルル」については今年1月にMETライブビューイングで一度観ているので、ストーリーはある程度頭に入っています

ソプラノのチェン・レイスがワイン・レッドの鮮やかな衣装で登場、指揮者の脇にスタンバイします 彼女はウィーン国立歌劇場をはじめ世界の歌劇場で活躍している実力者です

この組曲は第1曲「ロンド」、第2曲「オスティナート」、第3曲「ルルの歌」、第4曲「変奏曲」、第5曲「アダージョ・ソステヌート」の5曲から成ります 第3曲「ルルの歌」で、レイスの美声が本領を発揮します。本当に美しい声で、力強く輝くソプラノです それに相当の美人です 第5曲「アダージョ・ソステヌート」でも、ルルを慕うゲシュヴィッツ嬢による「ルル、私の天使・・・」を優しく感情豊かに歌い上げました

チェン・レイスはオペラでは『ばらの騎士』のゾフィー、『セビリヤの理髪師』のロジーナ、『フィガロの結婚』のスザンナなどをレパートリーとしているようですが、一度、彼女のソプラノでオペラを聴いたみたいと思いました 『フィガロの結婚』では、スザンナも良いけれど、伯爵夫人の方が合っているような気がします

 

          

 

プログラム後半はブラームスの「ドイツレクイエム」です 男女混声コーラスが入場しオケの後方にスタンバイします。左サイドにソプラノ、中央にバス・バリトン、そしてテノール、右サイドにアルトという配置で総勢150人ほどです。この曲でもP席が使えないので、オケの後方に並びますが、相当窮屈そうです

ストラジャナッツとともにソプラノのチェン・レイスが黒のステージ衣装に着替えて登場します 歌うのが「レクイエム」ですから当然 衣装は黒ですね

この曲は、恩人シューマンが1856年に死去して間もなく作曲に取り掛かりましたが、1865年の母親の死を経て、1868年に完成しました 「ドイツ・レクイエム」という名称は、歌詞がラテン語でなく、聖書のドイツ語訳からブラームスが自由に選び出したことによります。7つの曲から成りますが、第1曲、第2曲、第4曲、第7曲が合唱によって歌われ、第3曲と第6曲にバリトンが加わり、第5曲にソプラノが加わります

ストラジャナッツはバス・バリトンでも軽い方のバリトンで声に伸びがあります ソプラノのチェン・レイスはこの曲でも美しい歌声を聴かせてくれました 世界には私の知らない素晴らしい歌手がまだまだたくさん存在するのだということを思わざるを得ません

蛇足ですが、彼女は10月1日、2日のサントリーホール30周年記念ガラ・コンサートにも出演しますが、そのチラシではヘン・ライスと標記されています。スペルは同じ Chen Reiss なので同一人物なのは間違いありません。日本語でどう標記するかの問題ですが、統一してほしいですね

 

          

 

「ドイツ・レクイエム」に戻ります。曲全体を俯瞰すると、第1曲の冒頭は「悲しみを負うものは幸いである」で始まり、最後の第7曲の冒頭は「主のもとで死を迎える人たちは幸いである」で始まることで統一感を持たせています

私はこの曲を聴くにあたって、NAXOSのCDで予習してきました この1週間ほど毎日繰り返し聴いてきたので、全体像を把握したうえで本番に臨むことができたのは良かったと思います

 

          

 

ソリストの二人の健闘はもちろんのこと、大健闘だったのは70分にも及ぶ大曲を歌い切った東響コーラスの面々です 安定感のある力強いコーラスは感動的でした ジョナサン・ノットの指揮のもと 熱演を繰り広げた東京交響楽団のメンバーにもブラボーを送ります

 

          

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする