8日(金)。わが家に来てから558日目を迎え、春休みなのに毎日 大学に通って大学院進学後の準備に明け暮れているお兄ちゃんに代わって、今は毎日暇なお姉ちゃんに遊んでもらっているモコタロです
ちぇ、ぼくが遊んでやっているんだぜ そこんとこよろしく
閑話休題
昨日、夕食に「鶏肉とアスパラガスの中華炒め」と「生野菜とサーモンのサラダ」を作りました アスパラがダブってますね。余ったので つい
も一度、閑話休題
昨日、上野の東京文化会館大ホールで「東京春祭ワーグナー・シリーズ Vol.7 『ニーベルングの指環』第2日《ジークフリート》」公演を聴きました 出演は、ジークフリートにアンドレアス・シャーガ-、ブリュンヒルデにエリカ・ズンネガルド、さすらい人にエギルス・シリンス、ミーメにゲルハルト・シーゲル、アルべリヒにトマス・コニエチュニー、ファーフナーにシム・インスン、エルダにヴィーブケ・レームクール、森の鳥に清水理恵。マレク・ヤノフスキ指揮NHK交響楽団による演奏です
自席は1階10列13番、センターブロック左通路側席です。会場は8~9割埋まっている感じでしょうか ステージを見ると、壁側上方に巨大スクリーンが設置されており、舞台左サイドにはハープが6台並んでいて壮観です
オーケストラのメンバーが配置に着きます。コンマスは昨年に続いてウィーン・フィルのコンマス、ライナー・キュッヒルです 彼は確か昨年定年を迎えたのですが、オーディションによる後任人事が決まらず、今年8月まで任期が延長されているはずです この人がコンマス席に構えていると絶対的な安心感があります その隣にはN響の若きエース、アシスタント・コンサートマスターの大宮臨太郎が控えています。弦楽器の編成は、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並びです チェロ首席には先日ブラームスの室内楽を演奏した向山佳絵子が、ヴィオラ主席には新日本フィル首席の篠崎友美がスタンバイしています 彼女はあちこちのオケに呼ばれるケースが多いように思いますが、相当優秀なヴィオラ奏者なのでしょうね
ヤノフスキがおもむろに登場、ティンパ二の連打で第1幕が開始されます それと同時に背後のスクリーンに、岩山の上空に雲が流れ、左サイドに名剣ノートングを新たに鍛える炉から炎が上がるシーンが映し出されます。ヤノフスキは譜面台を膝の高さの低い位置に定めて指揮をします。ワーグナーの譜面は全体を見通すには目から離さないと全体像が把握しにくいのかも知れません
不吉な前奏曲に続いて、ミーメが登場し、後に登場するジークフリートとの対話が始まるわけですが、ミーメを歌ったゲルハルト・シーゲルが素晴らしいのです METやバイロイトなどでこの役を歌っているそうですが、ずる賢いミーメをそれらしく歌い演じています。性格俳優という言い方がありますが、いわば”性格テノール”とでも言いたくなるような”はまり役”です
また、主人公ジークフリートを歌ったアンドレアス・シャーガ-はウィーン国立音楽大学出身で、バレンボイムが指揮する『リング』のジークフリートで成功を収めた実力派です この人も”凄い”としか言いようのないテノールです 全曲を通してほぼ出ずっぱりですが、信じられないくらいのスタミナのもと、信じられないくらいの全力投球で聴衆を圧倒します
次いで、さすらい人(実はヴォータン)が登場しますが、エギルス・シリンスはラトヴィア音楽院出身のバス・バリトンで、ワーグナーを中心に世界の歌劇場で歌っているとのことです。この人も凄いとしか言いようのない素晴らしさです まさに”神”に相応しい威厳のある態度、威厳のある歌唱で存在感抜群です
第1幕が終わって、カーテンコールが4回ありました。もの凄い拍手とブラボーです
30分の休憩の後、第2幕が開始されます。スクリーンの映像は、岩山の麓のシーンです。遠くに滝が流れ、手元には湖が見られます
この幕では、ジークフリートが一人で森の小鳥の声に耳を澄ませ、葦笛で会話を試みるシーンがあり、オーボエがわざと音程を外してメロディーを吹き、会場の笑いを誘うシーンですが、オーボエ奏者は実にうまく”下手に”演奏しました プロにとっては下手に演奏することほど難しいことはないかも知れませんね その直前に、ヴァイオリンのソロが美しいメロディーを奏でるシーンがあるのですが、キュッヒルの弾くヴァイオリンはとてつもなく美しく、短い演奏でしたが、感動で涙が出そうになりました また、その後でジークフリートが角笛で仲間を呼び寄せるシーンがありますが、ホルンの福川伸陽が舞台右手に登場し、鮮やかにジークフリートのテーマを吹きました 強弱自在に美しい音色を響かせる姿は、さすがN響の首席を張る演奏家です
この幕ではミーメの兄アルべリヒが登場します。ポーランド出身のバス・バリトン、トマス・コニエチュニーは、いかにも悪だくみをしそうなアルべリヒを深い歌声で見事に歌い上げました このように、出てくる人出てくる人、すべての人が”凄い”の一言です また、大蛇に変身したファーフナーが登場しますが、韓国出身のシム・インスンは魅力のあるバスでした
第2幕終了後もカーテンコールが4回ありました。30分の休憩後はいよいよ最後の第3幕です。スクリーンは岩山に降り注ぐ大雨と稲妻を映し出しています
この幕では巫女エルダが登場しますが、ドイツ出身のヴィープケ・レームクールは、艶のあるコントラルトでエルダを歌い上げました そして最後に、父親のヴォータンに長い眠りにつかせられたブリュンヒルデがジークフリートによって目を覚まされるのですが、スウェーデン系アメリカ人、エリカ・ズンネガルドは美しくも力のあるソプラノで、たちまち聴衆を虜にしました
15時に始まった「ジークフリート」が終わったのは19時55分でした ヤノフスキは、ここに至って初めてコンマスのキュッヒルと握手を交わしました。最後の最後までコンマスを信じ通した証左でしょうか カーテンコールは4回、いや5回だったでしょうか。会場のそこかしこでスタンディングオベーションが見られました。実は、私は滅多にスタンディングオベーションはやらないのですが、今回はとうとう立ち上がってしまいました 後ろに席の人、ごめんなさい・・・と振り返ったら、後ろの人も立ち上がって拍手をしていました
ワーグナーというと、とにかく長いので途中で嫌気がさしてくるのですが、この公演は弛緩するところがなく、まったく飽きが来ませんでした。これはテンポ感よくメリハリある音楽作りをした指揮者ヤノフスキの力によるところが大きいと思います
さて、私は昨年聴いた191回のクラシック・コンサートの中で4月のヤノフスキ指揮N響による「ワルキューレ」をマイ・ベスト1に選んでいます このままいけば、昨年同様、ヤノフスキ+N響による「ジークフリート」がマイ・ベスト1になる可能性があります。こんな凄いコンサートは年に何回もあるものではありません
是非、この演奏を聴いてみたい向きは、4月10日(日)午後3時から東京文化会館大ホールで同じキャストによって上演されます S席だったらまだ残っているかも知れません。このチャンスを逃すな