人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

トマ・ピケティ監修・出演による「21世紀の資本」を観る ~ なぜ貧富の差は縮まらないのか?:資本収益率(r) > 経済成長率(g)の法則 / 新国立バレエ監督・吉田都さんの決意

2020年09月07日 07時19分06秒 | 日記

7日(月)。昨日の朝日新聞別冊「GLOBE」に新国立劇場舞踏芸術監督・吉田都さんのインタビュー記事が載っていました 吉田都さんは1965年、東京生まれ。1983年のローザンヌ国際バレエコンクールで入賞 1995年から2010年まで英ロイヤルバレエ団プリンシパル(最高位)を務め、昨年8月に現役を引退しました インタビュー記事によると、

「今月1日に日本で唯一の国立バレエ団、新国立劇場バレエ団を率いる舞踏芸術監督に就任したが、10月のシーズン開幕を、自身も得意とした古典の名作『白鳥の湖』で盛り上げようと準備を進めていた矢先にコロナ禍に見舞われ、中止となった 緊急事態宣言が出た4月以降に全面中止になった公演チケット代の払い戻しは1億3500万円分に上る(tora注:バレエだけか、オペラと演劇も含めたものかは不明)。この間、数十人で一斉に行っていた稽古を、密集を避けるため、70人の団員を8つのグループに分け、劇場に入り切れないダンサーたちはオンラインで結び、自宅から稽古に参加してもらった 『何か起きた時は、自分ができることをやるしかない。何をすべきか見極めれば、そう焦ることはない』。コロナ禍の出口が見えない今、そう自分に言い聞かせる。『下がれば上がる。これだけ悪いことが起きたんだから、次のいいことが楽しみという感じ』と語る。今の目標は日本のバレエを世界レヴェルに引き上げることだ 日本のバレエ人口は約36万人。層の厚さは世界屈指なのに、プロダンサーを取り巻く環境は厳しい 目標への第一歩は、ダンサーたちが安心して踊りに集中できる環境の整備だと考える。待遇の改善は急務だ。感染症の流行などで公演が中止になった場合、給料制がある欧米の有名なバレエ団では給料の8割、場合によっては全額が保証されるのに、出演料制をとる新国立劇場ではリハーサルが始まってようやく出演料が半分出る 休日の劇場外のアルバイト収入を家計の足しにする劇団員もいる。バレエには、見る人を癒やし『心の栄養』を届ける力があると信じている コロナ禍で苦しい時こそ、劇場に足を運んで元気になってもらいたい。『コロナがあってもバレエ団は100年、200年と続いていく。長い目で見て、新しいことに挑戦していきたい』と語る」

吉田さんの『下がれば上がる。これだけ悪いことが起きたんだから、次のいいことが楽しみという感じ』という言葉は、世界のトップを極めたダンサーだけに重みがあります バレエに限らず、オペラ、演劇の分野で活躍する方々にとっても励みになるのではないか、と思います

ということで、わが家に来てから今日で2167日目を迎え、米誌アトランティックは3日、トランプ米大統領が2018年11月にパリ近郊にある米軍兵士の墓地を訪れる当日の朝、「なぜ私が墓地に行かなければいけないのか?大勢の負け犬が埋まっている場所だ」と述べ、訪問中止を決めていた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプは”馬鹿”正直だから つい本音が出てしまうようだ  舌禍は治しようがない

 

         

 

昨日、池袋の新文芸坐でマシュー・メトカルフ製作、ジャスティン・パンバートン監督による2019年製作フランス・ニュージーランド合作映画「21世紀の資本」(103分)を観ました

これは、2013年にフランス語で刊行、翌2014年に日本でも発売され、世界中に一大ブームを巻き起こしたフランスの経済学者トマ・ピケティの同名経済学書を、著者のピケティ自身が監修、出演して映画化された社会派ドキュメンタリーです

「21世紀の資本」は700ページを超える大作のため完読が困難と言われていますが、専門家でもない一般の人も五感で理解できるように難しい数式などを用いず、映像で表現しています 

貴族階級による農民支配、貴族の没落と市民階級の台頭、奴隷制度による黒人労働の搾取と奴隷解放、共産主義の崩壊と強欲資本主義の台頭、といった過去300年の世界各国の経済・社会の歴史の流れが、「ウォール街」「プライドと偏見」「レ・ミゼラブル」「ザ・シンプソンズ」等の映画やドキュメンタリー・フィルム、小説やポップカルチャー等をふんだんに織り混ぜながら描かれていきます

 

     

 

トマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」は概要(Wikipediaによる)次のようなものです

「長期的にみると、資本収益率(r)は経済成長率(g)よりも大きい。資本から得られる収益率が経済成長率を上回れば上回るほど、それだけ富は資本家へ蓄積される そして、富が公平に再分配されないことによって、貧困が社会や経済の不安定を引き起こす この格差を是正するために、累進課税の富裕税を、世界的に導入することを提案する

ここで言う「資本収益率(r)」とは利潤、配当金、利息、貸出料などのように、資本から入ってくる収入を意味しています また「経済成長率(g)」は給与所得等によって求められます

ピケティ氏によると、「過去200年以上のデータを分析すると、資本収益率(r)は平均で年5%程度であるが、経済成長率(g)は1%~2%の範囲内に収まっていることが明らかになった このことから、経済不平等が増していく基本的な力は、「r>g」という不等式にまとめることが出来る」といいます

分かり易く言えば、利潤や配当や利息などの「資産」によって得られる富の方が、労働によって得られる富よりも速く蓄積されやすいため、資産金額で見た時に上位10%、あるいは1%といった位置にいる人の方がより裕福になりやすく、結果として格差は拡大しやすい。また、蓄積された資産は、子に相続され、労働者には分配されないので、格差は縮まらない、ということです

ピケティ氏の理論は概ね好意的に評価されていますが、一方で「富裕者上位1%の収入は現在大半が給与所得であり、資本から得られる収入ではない」という反論もあるようです 確かに、現在、年収の世界ランキングで上位を占めるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)のCEOたちの収入は主に”役員報酬”であって利潤や配当ではないようです しかし、日本における格差拡大(正規雇用者と非正規雇用者の賃金格差など)問題を一つ取り上げてみても、「富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる」現状に変わりはありません

この問題は、あくまでも「経済」の視点から捉えたものですが、私が気になっているのは、「幸福度」という物差しによる格差です 3日付の朝日夕刊に「子の幸福度   日本20位 健康トップでも低い生活満足度」という記事が載っていました 記事によると、ユニセフ(国連児童基金)が3日に公表した調査(先進・新興38カ国対象)では、日本の子どもは、死亡率などが低い(1位)一方、今の生活への満足度などが低く(37位・ワースト2)、「子どもの幸福度」の総合順位は20位だったとのことです 前回の調査(2013年)の時は31カ国中6位だったので、相当落ち込んでいることが分かります 経済的に豊かであることが 必ずしも精神的に豊かであるとは限りません その意味で、今の日本の子どもたちが新興国を含む他の国の子どもたちに比べて幸福に感じていないことが気になります 安倍首相の退陣を受けて新しく就任する総理大臣とその内閣は、子どもたちが幸福を感じるような日本にすることが出来るでしょうか

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