8日(金)。昨日の朝日夕刊「音楽評」欄に、音楽評論家の片山杜秀氏が3月30日に東京文化会館で開かれた東京春祭「ローエングリン」の批評を寄せていました 私もこの日の公演を観たので興味深く読みました 片山氏はマレク・ヤノフスキの指揮を「ステージを埋め尽くす大管弦楽と大合唱を完璧に統率し、終始一貫、コワモテな音楽を奏でる ワーグナー特有の蠱惑的な情緒や感傷を生む音の襞を、徹底的に消してしまう」として、「酷薄なアプローチ」と捉えています そういう面が確かにあったと思う一方で、私が興味を持ったのは歌手陣に対する評価です。片山氏は次のように書いています
「歌手陣は脇役がよい。オルトルートのアンナ・マリア・キウリに魔女らしさが、テルラムントのエギルス・シリンスに劇を回す前のめりの情が、ハインリヒ王のタレク・ナズミに誠実さが、漲っていた」
上記の通り、片山氏は主役ローエングリンを歌ったヴィンセント・ヴォルフシュタイナーについては全く触れていないのです それはなぜか? 私は31日付のブログで彼のことを「恵まれた体型を生かして歌う輝くテノール」と書きました 「歌は決して悪くはなかった」という評価ですが、あえて「恵まれた体型」と書いたのは、決してイケメンではないし、腹が出ていてとてもヒーローのローエングリンに見えなかったので、スマートでないことを遠回しに表現したのです これについては他の人が書いたツイッターを見ても「目をつぶって聴く分には良い」「ラジオ向き」といった評価が散見されました 歌手を見ながら聴くと「イメージ狂っちゃう」というわけです。つまり、オペラの場合、とくにヒーローやヒロインの場合は「歌が上手ければ良い」ということでは現代の聴衆は満足せず、見た目も重要な要素として加わるということを意味します それは 今回のような演出のない「演奏会形式」であっても同様だということです。新国立オペラで10年くらい前に上演された「ローエングリン」に出演したクラウス・フロリアン・フォークトのようなイケメンで歌唱力抜群なテノールこそローエングリンに相応しいと思います 片山氏がどういう理由でヴォルフシュタイナーについてコメントしなかったのかは本人にしか分かりませんが、私は上記のように思いました
ということで、わが家に来てから今日で2645日目を迎え、国連総会は米東部時間7日午前10時から緊急特別会合を開き、国連人権理事会におけるロシアの理事国資格を停止するための決議案を採決した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
人権意識皆無のプーチン・ロシアが 国連人権理事会にいること自体が シュールだ
昨日、夕食に娘が職場の同僚から仕入れてきた馬肉を使って「ユッケ」を作りました。あとは「生野菜サラダ」と「人参の中華スープ」です 前回、「馬刺し」の時は肉を薄く切れず嚙み砕くのが大変だったので、細切りにしてユッケにしました コチジャンなどで上手に味付けが出来て とても美味しかったです
中山七里著「人面瘡探偵」(小学館文庫)を読み終わりました 中山七里は1961年岐阜県生まれ。2009年に「さよならドビュッシー」で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しデビュー 映画化された「護られなかった者たちへ」ほか著書多数あり。「中山七里は七人いる」と言われるほどの多作ベストセラー作家です
相続鑑定士の三津木六兵の右肩には人面瘡(人の顔をした切傷)が寄生している それは六兵が5歳の時に崖から転落してできた傷口で、ある日突然しゃべり始めたというもの 六兵は頭脳明晰で博識な彼を”ジンさん”と呼び、何かと頼りにしている ある日、六兵は勤務先の「古畑相続鑑定」の蟻野所長から、信州の山林王、本城家の財産分割協議に係る鑑定のために派遣される。相続人は尊大な長男・武一郎、享楽主義者の次男・孝次、真面目な三男・悦三、離婚して息子・崇裕と共に戻ってきた沙夜子の4人だった 本城家には料理人の沢崎と家政婦の鈴原久瑠実が仕えており、鑑定の依頼人である本城家の顧問弁護士の柊実規(ひいらぎみのり)がいた 家父長制・男尊女卑の古いしきたりの残る本城家での協議は思うように進まない 山林は二束三文の価値しかないものと思われていたが、調査の結果、莫大な地下資源が眠っている可能性があることが判明し、相続人たちが急に色めき立つ そんなある晩、蔵が火事に遭い武一郎夫妻が死体で見つかる さらに翌日、孝次が水車小屋で不可解な死を遂げる そして、その2日後、悦三が滝つぼで死体として発見される 残された相続人は沙夜子一人となり、当然警察は彼女に疑いをかける しかし、彼女も何者かによって毒を盛られ九死に一生を得る 果たして3人の相続人を殺した犯人は誰か
一連の事件は「五ひきのわるダヌキ」という絵本に描かれているストーリーの通りに進行していきます 「最初のタヌキは焼け死んで、2番目のタヌキは首を吊り、3番目のタヌキは川に流されて、4番目のタヌキは毒を盛られる」と しかし、この絵本には「5番目のタヌキ」が登場して、「仲間が1匹もいなくなったので、よその山へ逃げていきました」と書かれています さて「5番目のタヌキ」とは一体誰なのか。そしてどこへ消えてしまったのか・・・沙夜子と息子・崇裕にまつわる秘密を中心に展開するミステリーには、いつも通り どんでん返しが待っていますが、今回は3連発です ラストで鈴原久瑠実が語る六兵と人面瘡にまつわる真相には思わずニヤリとします 相変わらず読む手が止まらない面白さ お薦めします