16日(土)。わが家に来てから今日で2653日目を迎え、米連邦捜査局(FBI)は14日、声明を出し、北朝鮮のハッカー集団「ラザルス」と「APT38」がオンラインゲームのネットワークにサイバー攻撃を仕掛け、暗号資産(仮装通貨)約6億2000万ドル(約780億円)を不正に奪い取ったと発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
世界一の殺人国家はロシアだけど 世界一の泥棒国家は北朝鮮だ 自慢にならないが
昨日はコンサートのハシゴのため夕食作りはお休みしました
昨日 午後2時から、すみだトリフォニーホールで新日本フィル「すみだクラシックへの扉 第6回演奏会」を、午後7時半から「N響4月度池袋C定期演奏会」を聴きました ここでは新日本フィルのコンサートの模様を書くことにします
プログラムは①ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」、②サン=サーンス「チェロ協奏曲第1番 イ短調 作品33」、③ムソルグスキー(ラヴェル編):組曲「展覧会の絵」です 演奏は②のチェロ独奏=リーウェイ・キン、指揮=久石譲です
指揮者の久石譲氏は言うまでもなく、1984年の「風の谷のナウシカ」以降、宮崎駿監督作品の音楽を担当してきた作曲家として有名な人です
拍手の中、楽団員が入場し配置に着きます。オケは左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対抗配置。コンマスは崔文洙です 全体を見渡してみると、コンマスの隣にはゲスト・コンマス(元読響コンマス)の伝田正秀が、クラリネットのトップには元読響首席の藤井洋子がスタンバイしています 新日本フィルから読響へはオーボエの金子亜未、クラリネットの中館壮志が移籍していますが、読響と新日本フィルとの間には人的交流の契約でもあるのか、と思ってしまう起用です
先月までは弦楽奏者がマスク着用で演奏していたのが、今回はヴァイオリン・セクションの数人を除く全員がノーマスクで演奏していたのがとても新鮮に感じました 新シーズンを迎えて初コンサートということで、”新春顔見世興行”的な試みでしょうか
1曲目はドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」です この曲はクロード・ドビュッシー(1862-1918)がマラルメの詩「牧神の午後」をテーマに1892年から94年にかけて作曲、1984年にパリで初演されました 印象主義音楽を確立した最初の作品として大きな反響を呼びました
この曲ではフルート首席の野津雄太が、牧神がまどろむ どこかアンニュイな雰囲気を見事に表現していました
2曲目はサン=サーンス「チェロ協奏曲第1番 イ短調 作品33」です この曲はカミーユ・サン=サーンス(1835-1921)が1872年に作曲、1873年にパリで初演されました 第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」、第2楽章「アレグレット・コン・モート」、第3楽章「モルト・アレグロ」の3楽章から成りますが、切れ目なく演奏されます
新日本フィルは新型コロナ禍の影響で外国人指揮者や演奏家が来日できない期間が長く続き、日本人の指揮者や演奏家の代役でしのいできましたが、久しぶりに”予定通りの”外国人演奏家を迎えることになりました ソリストのリーウェイ・キンは中国系オーストラリア人のチェリストで、第11回チャイコフスキー国際コンクールで銀メダルを受賞しています
CDを持っていないので初めて聴く曲でしたが、第1楽章冒頭のオケの総奏の後の独奏チェロのアグレッシブな演奏が印象的です 曲自体はサン=サーンスらしい古典的なところとロマン的なところが融合した音楽で、独奏チェロがよく歌いました かなり技巧的な曲ですが、リーウェイ・キンは余裕で弾いていました
満場の拍手に、ソリストはアンコールにジョバンニ・ソッリマ「Alone」を超絶技巧で鮮やかに演奏、会場割れんばかりの拍手に包まれました それでも鳴りやまない拍手にバッハ「無伴奏チェロ組曲第4番」から「サラバンド」をしみじみと演奏し、聴衆のクールダウンを図りました
休憩時間にパトロネージュ部・登原さんから「定期会員継続特典CD」を受け取りました 佐渡裕指揮新日本フィルによるモーツアルト「交響曲第41番」とベートーヴェン「交響曲第8番」のカップリングです あとでゆっくり聴こうと思います
プログラム後半はムソルグスキー(ラヴェル編):組曲「展覧会の絵」です この曲はモデスト・ムソルグスキー(1839-1881)が1874年に、前年に死んだ友人の画家ガルトマンの追悼展覧会が開催された時の印象をもとに作曲したものです それをモーリス・ラヴェル(1875ー1937)が1922年に指揮者セルゲイ・クーセヴィツキーの依頼を受けて管弦楽用に編曲しました 曲は「プロムナード」、第1曲「グノームス」、第2曲「古城」、第3曲「テュイルリーの庭」、第4曲「ビドロ(牛車)」、第5曲「卵の殻を付けた雛の踊り」、第6曲「2人のユダヤ人、サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」、第7曲「リモージュの市場」、第8曲「カタコンべ:ローマ時代の墓」、第9曲「鶏の足の上に建つ小屋(バーバ・ヤガー)」、第10曲「キエフの大門」から構成されています
久石氏の指揮で演奏に入りますが、冒頭のトランペットの演奏が素晴らしかった ここでコケたら台無しですから 第2曲「古城」におけるサクソフォンの演奏が郷愁を誘いました この辺はラヴェルの管弦楽への編曲の天才を感じます どうなるかな、と思っていたのは第4曲「ビドロ」です この曲は牛車が重々しい足どりで通り過ぎていく様子をチューバが描いています チューバって相当演奏が難しいのだと思います。不安定な箇所がいくつかありました 前日の公開リハーサルで久石氏から「音が少し大きすぎる」と指摘を受けていたので、その言葉がプレッシャーになったのだと推測します 2日目の今日の公演では修正してくると思います。いつ聴いても面白いと思うのは第6曲「サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」です。裕福で威厳に満ちたユダヤ人(オケ総奏)と貧しく卑屈で弱々しいユダヤ人(ミュート付きトランペット)のキャラクターが対比されます 前回この曲を聴いたのは昨年12月11日のN響定期公演(デスピノーサ指揮)ですが、その時と違い今回聴いて頭に浮かんだのは次のような会話です
ゴールデンベルク(プーチン):我々はネオ・ナチからウクライナの国民を救うために「特別軍事作戦」を実行したんだ。命が欲しかったら武器を捨てて投降しろ
シュムイレ(ゼレンスキー) :我々の国ウクライナは主権を持つ独立国家です。何の罪もない住民を殺すのは許せません
ゴールデンベルク(プーチン):うるさい ロシア、ベラルーシ、ウクライナは一心同体なんだ。NATOになびくなんて許せん
シュムイレ(ゼレンスキー) :何の権利があってそんな強権的なことを言うんですか。我々は自由のために闘います
ゴールデンベルク(プーチン):東部マリウポリは我々が制圧したぞ
シュムイレ(ゼレンスキー) :我々はロシアの巡洋艦「モスクワ」を撃沈しましたよ
・・・こんな風に思い浮かべたのは初めてです
第8曲「カタコンベ」ではブラスの分厚い演奏が光りました 最後の曲「キエフの大門」のキエフとは言うまでもなくウクライナの「キエフ」=ウクライナ読みで「キーウ」のことです 元・駐ウクライナ大使の黒田祐次氏は「物語 ウクライナの歴史 ヨーロッパ最後の大国」の中で、「キエフの大公ヤロスラフ(在位1019ー54)はキエフの街の整備に務め、城壁を強化し街の門を立派にした。その門のうち黄金の門のみが旧市街に残っている。ムソルグスキーは、ある展覧会で観た複数の絵の印象を組曲『展覧会の絵』として作曲しているが、この黄金の門を描いた絵に基づく曲もその中に入っている」と書いています
今までは第10曲「キエフの大門」を、管弦楽を総動員して音の大伽藍を築き上げた壮大な曲として聴いてきましたが、今回は「ロシアの侵略によって大門が破壊されないでほしい」と祈るような気持ちで聴きました こんなことは初めてです。久石氏指揮新日本フィルの演奏はそういう想いを込めた演奏だったように思います
アンコールには予定通り、ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」が演奏されました この曲は、ウクライナで不条理にも死んでいった人たちへのレクイエムとして聴きました