人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

石原慎太郎 ✕ 曽野綾子「死という最後の未来」を読む ~ 考え方が真逆な2人による「死」や「老い」に関する対談

2022年04月01日 07時12分27秒 | 日記

4月1日(金)。今日から4月、学校や会社は新年度の始まりですね 私には無縁ですが、新生活を送る人たちにエールを送ります

ということで、わが家に来てから今日で2638日目を迎え、米ホワイトハウスのべディングフィールド広報部長は30日、ロシアのプーチン大統領はウクライナでの戦況について間違った情報を伝えられており、その理由は「プーチンが怖くて本当のことが言えないからだ」とする見解を示した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     怖くて真実が言えないほど 恐れられる存在になったプーチンの 自業自得といえる

 

         

 

いつもは隔週金曜日に「鶏の唐揚げ」を作るのですが、コンサートの関係で昨日作りました 久しぶりにビールを飲んで唐揚げを食べましたが、最高の組み合わせですね

 

     

 

         

 

石原慎太郎 ✕ 曽野綾子「死という最後の未来」(幻冬舎文庫)を読み終わりました 石原慎太郎は1932年神戸市生まれ。一橋大学卒。1955年、大学在学中に執筆した「太陽の季節」で第1回文學会新人賞を、翌年芥川賞を受賞 石原裕次郎のことを書いた「弟」、「天才」「老いてこそ生き甲斐」「あるヤクザの生涯 安藤昇伝」など著書多数。1968年から国会議員を、1996年から2012年まで東京都知事を務めた。2022年2月1日死去

曽野綾子は1931年東京都生まれ。聖心女子大卒。作家。著書多数 1979年ローマ教皇庁よりヴァチカン有功十字勲章を受章。2003年に文化功労者、1995年から2005年まで日本財団会長を務めた 1972年にNGO活動「海外邦人宣教者活動援助後援会」を始め、2012年代表を退任

 

     

 

本書は2020年6月に幻冬舎から刊行された単行本を文庫化したもので、キリスト教信者の曽野綾子90歳と法華経を哲学とする石原慎太郎89歳が、「死」や「老い」について語り合った対談集です

本書は大きく次の3つの章から構成されています

第1章「他人の死と自分の死」

第2章「『死』をどう捉えるか」

第3章「『老い』に希望はあるのか」

2人の対談を読んでいて分かるのは、死生観がまったく逆だということです これは宗教の教義と関係があるのかも知れません。曽野は「人は神から生かされている。すべては神様の思し召しの通り。運命のままに生きて静かに死を受け入れる」という考えのもとに生きているのに対し、石原は「死にたくない。最後までがむしゃらに生きていきたい」というアグレッシブな考えのもとに生きています 2人の対談で考え方の違いが明確に表れている箇所がいくつかあります

第1章の中で、石原氏は2013年に脳梗塞に見舞われ、2020年には初期の膵臓癌が見つかったことから、身近に「死」を感じるようになったと語っています 一方、曽野さんはシェーグレン症候群という一種の膠原病のような持病があり、時々だるくなり微熱が続くが致命的ではないと告白しています。それをもとにしたのが次の対話です

石原:今はもう、すぐそこにある”死”というもの、そのものを直に感じるようになった。毎日ね、絶えず自分の死を考えています

曽野:困ります?

石原:えっ?

曽野:死んだら。何か困ります?

石原:いや、死ぬのはつまらんでしょう。死にたくはないですね 死というものが何だかわからないから、死んでも死にきれないんです。むろん、命に限りがあることはわかっている。しかし、死の実態というものはわからないでしょう

曽野:知ったらどうなりなす?

石原:知れば、納得がいくでしょう。少なくとも、未知のものではなくなる。僕は無性に知りたいんだな。しかし誰も知らないし、教えてくれる人はいません。死んで帰った人もいませんしね

曽野:帰ってきたという人に、会ったことはまだありませんね

私は男だからというわけでもないのですが、石原氏の言いたいことが良く分かります 長く生きてきた割には知らないことが多すぎる、もっと多くのことを知りたい、といつも思っています とても曽野さんのように達観できません

第3章では「ありがとう」という言葉について語り合っています 曽野さんは夫の三浦朱門さんが末期治療を受けていた時のことを次のように語っています

「意識はありまして、数日はショートステイと同じように、看護師さんたちと冗談を言っていたくらいでした 『ありがとう』を何度か言っているうちに、『ありが十』『ありが二十』『ありが三十』『ありが四十』などと言って、笑ってもらえるのが嬉しかったようです 夫なりの周りの人たちへの感謝の心が込められていました

これを受けて石原氏は「僕も、それは決めているんです。自分が逝く時には、『みんな、これまでありがとう』と言おうと」と語ります

曽野:それはいいですね。世の男性たちも、そのように口にすればいいんですよ 会社の社長さんだって、社員にもっと『ありがとう』と言えばいいんです。子供の頃から感謝を口にするように、母親が教えればいいんですよ。感謝する心を表現することは本当に大切です 年老いた時、利己的で不機嫌なお爺さん、お婆さんでいたなら、施設や病院だって対応に困りますよ。明るくして周囲にも気が配れる老人ならば、大変な現場であっても、周りも楽しく過ごせますし、何より人として互いに尊重し合えるじゃないですか

石原:「ありがとう」というのは、本当に感じのいい日本語だと思いますね

母親が生前、「アリが十ならミミズは二十歳(はたち)」と言って自分で笑っていたのを思い出しました いずれにしても、感謝の心を「言葉として伝える」ことは大切ですね

同じ第3章の中で、「老いて人の役に立つ幸福」について対談しています

曽野:人は、特に中年になったら、社会に奉仕貢献をすることが大切だと私は思っています 年老いて、誰しも外見がどんどん衰えていきますよね。その人を輝かせるのは『徳』だけなんです。社会に対して関心がなくて、ほんの少しの奉仕をもしようと思わないひとは、『徳』がない人たちですよ

石原:奉仕は、生き甲斐のひとつにはなる

曽野:「受けるよりは与える方が幸いである」という言葉がありますが、その通りで、人は他人から与えられる時も嬉しいけれど、人に与えた時も嬉しいんです これは、人間の尊厳と密接に絡んでいるものです。もっとも最近は、受けることは権利だ、与えたら損になるという考えの人たちが増えているようで、困ったものですね

この曽野さんの考え方は、最近よく共感できるようになりました ひと言でいえば「自分や自分の家族のことだけを考えて生きていて良いのか?」というテーマです これは、以前このtoraブログでもご紹介した  みうらじゅん&リリー・フランキーの対談集「どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか」を読んだときに初めて考えさせられたテーマです 要約すれば、「人はいつかは必ず死ぬ。お金や財産など、死んだら何の役にも立たない どうせなら、生きているうちに少しでも世の中のためになることに役立てる方がいい 『あの人はケチだったね』と言われて死んでいくよりも『あの人は親切でいい人だったね』と言われながら死んでいく方が幸せではないか」という考えです これは親がかりの子どもがいるとか、介護が必要な親を抱えているとかで、自分の生活で精一杯というケースは無理ですが、子どもが経済的に独立して以前ほどは経費が掛からなくなったケースは、少しでも社会のためになる行動をした方がよいということです ボランティアでも、何らかの経済的援助でも、出来る範囲のことで良いのです 私は最近、世界の飢餓と貧困の撲滅を目指して活動している「国際連合世界食糧計画WFP」の活動に協力し、毎月わずかながら寄付を始めました また、オーケストラを支援するということで、新日本フィルの「維持会員」として少額ながら寄付をしています 本当は身体を使ったボランティア活動ができればよいのですが、腰痛の身なので、反って迷惑をかけてはいけないと思い 控えています

曽野さんは第3章で「毎日、あえて自分に義務を課す」という話をしています

「朝、起きて何もすることがないという人がいるようですが、不幸なことですよ 私は老いた人間に必要なことは、今日やることがある、ということだと思います 大きい、小さいではなくて、今日はあれとこれをやる、明日はこれとこれ、といった具合に決める。疲れているとか、ここが痛いとか言って動かさないと、人間は逆に具合が悪くなるし、気力も削がれていきます

これには耳の痛い人が少なくないかも知れませんね 私が現役時代からずっと続けてきたことは、毎朝7時に起きることと、毎日ブログを書くことです 日曜だからといって10時過ぎまで寝ていたことはありません 現役時代は仕事で飲む機会が少なくありませんでしたが、どんなに遅く帰ってもブログを書いて翌朝7時過ぎにアップし、月~金は遅刻することなく出勤しました 現在も、今日やるべきこと、明日の予定ははっきりしています

まったく生き方の違う人生の大先輩2人の言葉には深く共感できるものがあります 世界保険紀行(WHO are you)によると、人間の死亡率は100%です 老いも若きも、いずれ迎える「死」を考えるうえで示唆に富む本です。お薦めしときます

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