人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

クルレンティス ✕ ムジカエテルナ ⇒ ウィーンのコンツェルトハウスが出演をキャンセル / 小泉悠著「現代ロシアの軍事戦略」を読む ~ なぜロシアはNATOを恐れ、なぜウクライナに侵略したか?

2022年04月13日 07時08分24秒 | 日記

13日(水)。月刊音楽祭は12日、「コンツェルトハウスがクルレンティス & ムジカエテルナのコンサートをキャンセル」という記事をツイートしました    内容は次の通りです

「ウィーンのコンツェルトハウスが11日に行われる予定だったテオドール・クルレンティス率いるムジカエテルナのコンサートを突然キャンセルした    ウクライナ支援のためのチャリティー・コンサートだったが、ホール側は、ウクライナ大使から、ウクライナのためのコンサートにロシアのアーティストを参加させないよう正式に要請があり、その意向を尊重して決定したと説明している    クルレンティス率いるムジカエテルナは、ロシア第二の銀行VTB銀行が設立に関わり、長くスポンサーを務めてきた団体。VTB銀行はプーチン大統領に近く、ウクライナ侵略により制裁を受けている クルレンティス自身は3月末、首席指揮者を務める南西ドイツ放送交響楽団と共同声明を出し、ヨーロッパ・ツアーでロシアとウクライナの作曲家の作品を同時に取り上げる姿勢を表明してきたが、個人的にはロシアの侵略に対して特別なアクションは起こしていない コンツェルトハウスは、『ロシア連邦のウクライナに対する侵略戦争によって計り知れない苦しみがある時、サンクト・ペテルブルクを拠点とするオーケストラの演奏が政治的側面を持つことを無視することはできない 私たちは、ウクライナにおける戦争犯罪についての絶望を理解し、共有し、この侵略を遠慮なく非難します』と述べている

記事は、「コンツェルトハウス」という”コンサート会場”がロシアのオーケストラの演奏を拒否しキャンセルした、という内容です クルレンティスにしてみれば、チャリティーコンサートを開いてコンサートの収益をウクライナの人々のために寄付しようとしたのでしょうから、せっかくの善意が台無しになり、不本意だと思います 一方、会場を貸す側のコンツェルトハウスの立場から言えば、ウクライナ大使から”正式に”中止の要請があったわけですから、これを拒否すれば国内外から批判を浴び、今後の営業にも支障が出ることは必至だと考えたのだと思います 私はこれが普通のコンサートだったら仕方ないと思いますが、ウクライナ支援のためのチャリティーコンサートだっただけに、”偽善”ではなく文字通り”慈善”と解釈して実現させてあげた方が良かったのではないかと思います ロシアの音楽家をひとまとめにして「悪」と決めつけるのは良くないと思います

ということで、わが家に来てから今日で2650日目を迎え、ベラルーシメディア「ベラルーシ・ガユン」はSNSで、ウクライナ侵攻中のロシア軍兵士が民家などから略奪したと見られるテレビや自動車部品、楽器などの大量の物資を母国に送った様子を伝えた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     民間人の虐殺だけでは物足りないのか? 悪い事なら何でもやる犯罪のデパートだ

 

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昨日、夕食に「鶏肉のソテー・香味醤油かけ」と「冷奴・ウニ醤油かけ」を作りました いつもはチキンステーキにするのですが、今回は切り分けて味付けも豆板醤を使ってピリ辛にしました とても美味しかったです

 

     

 

         

 

小泉悠著「現代ロシアの軍事戦略」(ちくま新書)を読み終わりました 小泉悠氏は1982年千葉県生まれ。早稲田大学社会学部、同大学院政治学研究科修了。民間企業勤務、外務省専門分析官、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員を経て、現在は東京大学先端科学技術研究センター専任講師。専門はロシアの軍事・安全保障

 

     

 

著者はロシアのウクライナ侵略をきっかけに、あちこちのテレビの報道番組でロシアの軍事問題専門家として引っ張りだこの存在になっています コメントを聞いていると、かなりロシアの軍事政策に詳しいことが窺えます 本書はそのロシアの軍事専門家が1年前の2021年5月に刊行した300ページの力作です

本書は「はじめに」と次の5章から構成されています

第1章「ウクライナ危機と『ハイブリッド戦争』」

第2章「現代ロシアの軍事思想~『ハイブリッド戦争』論を再検討する」

第3章「ロシアの介入と軍事力の役割」

第4章「ロシアが備える未来の戦争」

第5章「『弱い』ロシアの大規模戦争戦略」

「はじめに」の中で、著者は「本書を理解するための基礎知識」としてロシア軍の実態について下記のように説明しています

「ロシア軍(正式名称はロシア連邦軍)は2021年現在、定数101万3628人、実勢90万人程度とされており、このうち徴兵(18~27歳の男子国民の義務とされ、勤務期間は12か月)は25万人程度。残りは職業軍人として定年まで勤務する将校(約21万人)と、契約に従って限られた期間勤務する契約軍人(約40万人)、各種学校生徒などで占められている 組織的に見ると、ロシア軍は陸軍、海軍、航空宇宙軍の3軍種に加えて、独立兵科の空挺部隊及び戦略ロケット部隊、その他の国防省直轄軍事部隊によって構成される。さらに、軍以外にもいくつかの軍事組織が存在する。例えば国内での反乱鎮圧を任務とする国家親衛軍は火砲や武甲車まで保有し、国防法ではロシア軍に次ぐ「その他の軍」と位置付けられているほか、ソ連国家安全委員会(KGB)の末裔である連邦保安庁の傘下には大規模な国境警備隊と対テロ特殊部隊が存在する

第1章で著者は、なぜロシアがNATOを恐れ、2014年にウクライナに侵攻しクリミア半島を併合したかについて次のように解説しています

「旧ソ連諸国については、ソ連崩壊後もロシアはこれを『勢力圏』と見做し、自国こそが政治・経済・安全保障などの中心であるという理解が存在してきた その意味では、2004年のバルト3国へのNATO拡大は極めて面白からざる出来事だった 当時のプーチン政権は米国との協力路線によって国力と国際的な地位の回復に努めている最中であった上、NATO拡大を力づくで阻止するだけの実力を持ってないなかった しかし、2008年に浮上したウクライナとグルジアへのNATO拡大論に対しては、2000年代の原油価格高騰で国力を回復させていたロシアは、この動きに強硬に反発し、2008年にはグルジアとの戦争にまで発展した その後2014年にウクライナで政変が起きると、クリミア半島とドンバス地方に軍事介入を行った。NATOの拡大をロシアが苦々しく思っていたもう一つの理由は、それが『大国』としてのロシアの地位を損なうものと見做されたからだ 『大国』はロシア語で『デルジャーヴァ』というが、この言葉は単に『規模の大きな国』という意味ではない。ひと言で言えば、外国の作った秩序に従うのではなく自らが秩序を作り出す側の国であるということだ

「ロシアから見ると、旧ソ連欧州部でまだNATOに加盟していない6か国(アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、グルジア、モルドヴァ、ウクライナ)の中立をいかに維持するかは、安全保障上、特別の重要性を有していた この中からロシアの『勢力圏』を脱出しようとする国があれば、軍事力行使に訴えてでもこれを阻止するというのがグルジア戦争以降のロシアの基本方針であり、2013~14年にウクライナで起きた事態はまさにこれに該当していた

その時のクリミア併合が短期間で成し遂げられた結果、プーチンは今回のウクライナへの侵略も短期間に終息することが出来ると考えたのでしょう しかし、現実はウクライナ軍による徹底抗戦によりキーウは生き残り、ロシア軍は親ロシア派住民が多いとされる東部地方に攻撃の矛先を向け支配しようとしています

なお、著者は2014年当時のロシアの戦闘方法について次のように解説しています

「ウクライナで実際にロシアが用いたのは、国家・非国家を問わずに幅広い主体を巻き込み、現実の戦場に加えてサイバー空間や情報空間でも戦うという方法であった このような戦い方は西側諸国において『ハイブリッド戦争』と名付けられ、現代の安全保障を語るうえで必須の概念となりつつある

この戦法はロシアの専売特許ではなく、ウクライナ側は若い副首相を中心に、SNSなどによる情報戦や、ドローンによる敵陣偵察・攻撃などを展開しています

また、第3章では「『精密攻撃』と残虐性の価値」というテーマで次のように書いています

「ロシア軍は人々の生活インフラを意図的に攻撃していると見られる 2019年4月にロシア軍とアサド政権軍がイドリブに対して実施した空爆では、家屋、学校、医療施設、市場が標的とされ、少なくとも1600人の民間人が死亡したほか、シリア全土で足掛け7年にもわたって続けられていることを考えれば、悲惨極まりない人権侵害であることは言うまでもない だが、純軍事的に見ると、そこには一定の合理性も(極めて不愉快なことだが)見い出せる 子供たちの頭上に爆弾が降り注ぎ、負傷者が出ても手当てもままならず、水道も電気もこないという状況になれば、敵はその領域を放棄せざるを得なくなるためだ ガレオッティはこれを『残虐性の価値』、つまり非人道的な攻撃を敢えて行うことで軍事的成果につなげることに価値を見出していると評価する

これは、今ロシア軍がウクライナでやっていることそのものです プーチン・ロシアはシリアで得た教訓をウクライナで生かしていることになります

ロシアのウクライナ侵略から1か月以上経った今なお戦争は続いています すでに多くの人々が殺害され、あるいはウクライナの内外に避難していますが、キーウを諦めたロシア軍は、第二次世界大戦の対独戦勝記念日にあたる5月9日までに何らかの戦果を得たいとみられ、東部地方ではこれから攻撃が激化すると報道されています はたしてウクライナはどうなるのか、予断を許さない日々が続きます そんな中、攻撃する側のロシアの論理を理解してニュースに接することは大事なことです 本書はそのためのガイドブックとして役に立つ入門書です。お薦めします

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