人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ナタリー・デセイ ✕ フアン・ディエゴ・フローレスによるドニゼッティ「連帯の娘」を観る ~ METライブビューイング・アンコール:史上最強のコンビによるパフォーマンス

2022年09月26日 07時15分13秒 | 日記

26日(月)。わが家に来てから今日で2815日目を迎え、ロシアのラブロフ外相は国連総会で演説し、「ヨーロッパを服従させたアングロサクソン国々にとって、ウクライナは対ロシア戦争の消耗品に過ぎないことは明確だ」と西側諸国を批判した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     「部分的動員令」で召集されたロシア国民は 対ウクライナ戦争の消耗品に過ぎない

 

         

 

昨日、東銀座の東劇でMETライブビューイング・アンコール上映、ドニゼッティ「連帯の娘」を観ました これは2008年4月26日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です キャストはマリー(連帯の娘)=ナタリー・デセイ、トニオ=フアン・ディエゴ・フローレス、シュルピス=アレッサンドロ・コルベッリ、ベルケンフィールド侯爵夫人=フェリシティ・パーマー、指揮=マルコ・アルミリアート、演出=ロラン・ペリーです

 

     

 

「連帯の娘」はガエターノ・ドニゼッティ(1797ー1848)が1840年に作曲、同年2月11日にパリのオペラ・コミック座で初演された前2幕のオペラです この作品は歌以外の台詞とともに進行するフランス語によるオペラで、「オペラ・コミック」と呼ばれます

山の向こうから砲声が聴こえてきて、村人や旅の途中のベルケンフィールド侯爵夫人が様子を窺っていると、フランス軍21連隊がシュルピス軍曹に率いられてやってくる その中には、孤児として連隊の兵士たちに可愛がられて育った人気者マリーがいた 物思いに耽るマリーは、軍曹に「命を助けてくれたトニオという若者に恋をしている」と告白する。シュルピスは「おまえが結婚できるのは この連隊の一員のみだ」と忠告する そこにマリーの後を追ってきたトニオがスパイ容疑で連行されてくるが、彼女のとりなしで自由になり連隊に加わることになる 宴でマリーは『連隊の娘』を歌う しかし、その後、侯爵夫人の行方不明の姪がマリーであることが判明し、彼女との結婚を期待するトニオの想いとは裏腹に、夫人はマリーを家に連れ帰ることを決意する 皆に惜しまれながら、マリーは連隊から去っていく(以上第1幕)

数か月後、マリーは貴族相手の縁談のため花嫁修業中の身となっている 軍曹だったシュルピスは執事として仕えていた しかし、マリーは馴染めない生活に連隊を懐かしがる そこに将校に昇進したトニオが連隊兵士たちとともにやってきて結婚を申し込むが、侯爵夫人は認めようとしない 実はマリーは侯爵夫人の姪ではなく娘だったのだ そのまま婚礼の準備が進むとトニオと兵士がなだれ込んできて、自分たちの『連帯の娘』マリーを救いに来たと明かすと、その場は大混乱に陥る マリーは自分の身の上を正直に語り、連隊の兵士へ感謝を捧げると、その真摯な姿に侯爵夫人は感動し、トニオとの結婚を許して、めでたく幕が下りる(以上第2幕)

     

     

 

ヒロインのマリーを歌い演じたナタリー・デセイが凄い フランス・リヨン生まれのリリック・ソプラノ及びコロラトゥーラ・ソプラノですが、女優からソプラノ歌手に転身しただけあって、まさに「歌う女優」の貫禄です 軍隊の中で育ったオテンバ娘をコミカルで軽快な動きで歌い演じました その一方、第1幕終盤での連隊と別れを惜しむ歌などは、感情表現が素晴らしく胸に迫るものがありました 幕間のインタビューでルネ・フレミングから「特に第1幕はほとんど出ずっぱりで歌と演技をこなさなければならないけど、一番大変なのはどういうところ?」と訊かれ、「息継ぎです 息を継ぐ間もないほど忙しく、どこで息を継いだらいいのかと、目が回るほどです」と答えていました。この時、彼女は43歳でしたが、とても信じられない身体能力だと思いました

彼女に勝るとも劣らないパフォーマンスを見せたのがトニーを歌い演じたフアン・ディエゴ・フローレスです ペルー出身のテノールですが、1996年のロッシーニ・フェスティバルでプロデビューしました レパートリーはロッシーニ、ドニゼッティ、ベッリーニなどのベルカント・オペラが中心です 本公演当時35歳の絶頂期でしたが、あのルチアーノ・パヴァロティが歌って世界に彼の名を轟かせたトニオのハイC9連発を、何の苦もなく歌っているかのように思わせ、その圧倒的なパフォーマンスに拍手がなかなか鳴りやみませんでした 彼もコミカルな演技が素晴らしく、デセイとのコンビネーションがピッタリでした

フローレスは2011年9月のボローニャ歌劇場来日公演でベッリーニ「清教徒」アルトゥーロを歌う予定でしたが、「声帯を痛めたため」としてキャンセルとなり、アントニーノ・シラクーザが代役を務めました はっきり言ってこれにはガッカリしました METライブビューイングで彼の並外れた超高音アリアを聴いていたので、9月24日のチケットを取って、ずっと楽しみにしていたのです フローレスは今年も来日しリサイタルを開きましたが、その時のことがあるのでチケットは取りませんでした

 

     

     

 

シュルピス軍曹を歌い演じたアレッサンドロ・コルベッリと、ベルケンフィールド侯爵夫人を歌い演じたフェリシティ・パーマーは、ともにコミカルな動きが印象的でした 幕間のインタビューで「コミカルな役柄を演じるときに気を付けていることは何ですか?」と訊かれ、二人とも「笑わせようとしないことです 真面目に演技することで可笑しい雰囲気が伝わるのがベストです」と答えていました 二流喜劇役者や三流お笑い芸人に聞かせてやりたい台詞です

ロラン・ペリーの演出もとても良かった 第1幕ではマリーにたくさんの兵士のシャツにアイロンをかけながら歌わせたり、第2幕ではマリーが貴族と結婚しないようにトニーが戦車に乗って館に押しかけたりと、目で見て楽しい演出に徹していました

METライブビューイングの「連帯の娘」はこの後、2019年にもマリー=プレティ・イェンデ、トニオ=ハヴィエル・マカレナにより上演・上映されましたが、アンコール上映には2008年の本公演が選ばれています デセイ ✕ フローレスを超える「連帯の娘」は今後もしばらくは出ない”史上最強のコンビ”であることを物語っています

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