人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「新日本フィル室内楽シリーズ ~ 村松裕子プロデュース編」でラヴェル「ピアノ協奏曲ト長調」より第2楽章、プーランク「小ぞうのババール」他を聴く

2022年02月18日 07時16分05秒 | 日記

18日(金)。わが家に来てから今日で2596日目を迎え、北京冬季五輪の大会マスコット「ビンドゥンドゥン」の人気に中国で火が付いたが、日本テレビの辻岡義堂アナウンサーが番組で「ビンドゥンドゥン愛」を語るうちに中国のSNSで話題になったことが一役買った  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     そんなことが日中友好の役に立つならドゥンドゥンやるべきだ  金メダル級の貢献だ

 

         

 

昨日、夕食に「牛タン塩焼き&ハラミ焼肉」「生野菜とワカメのサラダ」「人参と大根の中華スープ」を作りました 娘がとにかく肉が大好きなのでこういうメニューになりがちです

 

     

 

         

 

昨夜、すみだトリフォニーホール(小)で新日本フィル室内楽シリーズ「My  Favorite  Songs ~ 村松裕子プロデュース編」を聴きました プログラムは①ラヴェル「なき王女のためのパヴァーヌ」、②同「ピアノ協奏曲 ト長調」より第2楽章、③同「ラ・ヴァルス」(以上3曲は村松裕子編曲)、④ドビュッシー(白石准編)「牧神の午後への前奏曲」、⑤プーランク(同)「小ぞうのババールの物語」です 演奏はヴァイオリン=澤田和慶、ヴィオラ=矢浪礼子、チェロ=矢野晶子、コントラバス=村松裕子、ピアノ=白石准、⑤のナレーション=稲継美保です

検温後、パトロネージュ部の登原さんに「今日もコルセットをしてきました 寒さは腰痛の大敵です」と愚痴をごぼして階段を降りロビーに向かいました

演奏に先立って、今回の仕掛け人・村松裕子さんのプレトークがありました メインの「小ぞうのババール」は現在小学2年生の息子さんが幼い頃に絵本の読み聞かせをしていたそうですが、矢浪さんから「その絵本には音楽が付いているよ」と教えられ、今回の公演に当たり選曲したそうです ペーパーなしのトークは堂に入ったものですが、わずか7分程度で終了してしまいました せめて10分くらいは作曲家のエピソードや演奏曲目の特徴などを紹介してくれると鑑賞に役立つと思います 立て板に水のように15分ピッタリで作品の解説をしたトークの天才・篠原秀和さんが懐かしいです 篠原さ~ん、お元気ですか~ 私は腰痛で~す

 

     

 

さて本番です。1曲目はラヴェル(村松裕子編)「なき王女のためのパヴァーヌ」です この曲はモーリス・ラヴェル(1875-1937)が1899年に作曲、1902年にパリで初演され、1910年に小管弦楽用に編曲されました 「パヴァーヌ」とは16世紀初頭に愛好されたフランスの宮廷舞踏の一種です 演奏を聴いていて感じたのは、管楽器の部分も弦楽器で演奏することの難しさです。村松さんは編曲に相当苦労されたと想像します   ムソルグスキー「展覧会の絵」の管弦楽化に代表される編曲の魔術師ラヴェルの作品を編曲することの困難を思います

2曲目はラヴェル(村松裕子編)「ピアノ協奏曲 ト長調」より第2楽章です この曲は1929年から31年にかけて作曲、1932年にパリで初演されました この曲にはオーケストラ版のほかに、室内楽版(ショパン作曲ではないが)もあり、メインは独奏ピアノなので、抒情的な音楽を違和感なく聴くことが出来ました

3曲目はラヴェル(村松裕子編)「ラ・ヴァルス」です この曲はヨハン・シュトラウスへのオマージュとして1919年から20年にかけて作曲、1920年にパリで初演されました 演奏を聴くと、やはりこの曲はピアノ連弾かフルオーケストラかで聴くのが音のバランス的に好ましいと思いました

プログラム後半の1曲目はドビュッシー(白石准編)「牧神の午後への前奏曲」です この曲はクロード・ドビュッシー(1862-1918)が1892年から94年にかけて作曲、1894年にパリで初演されました 主役のフルートの部分をヴァイオリンが演奏しましたが、この曲のアンニュイな雰囲気をよく出していると思いました 全体のアンサンブルも良かったです

最後の曲はプーランク(編曲・脚本=白石准)「小ぞうのババールの物語」です この曲はフランシス・プーランク(1899-1963)が1940年に絵本「小ぞうのババール」に合わせて即興でピアノを弾いたものを、後で作品としてまとめ上げたものです この絵本の物語は「ババールは母象の子守唄を聴き、楽しく遊んで暮らしていた。ある日狩人に母象を殺されたババールは逃げて街へ辿り着き、金持ちのお婆さんの元で着物を着て人間の生活を楽しむようになる。やがて従兄妹たちが訪ねて来るとケーキでもてなし、里帰りを決意する ちょうどそのころ象の国では王が亡くなり、凱旋したババールは新王となって戴冠式と結婚式を挙げることになる」という内容です

舞台後方の壁に大きなスクリーンが降ろされ、ババールの絵本が映し出されます 舞台下手にピアノとナレーターが、上手に弦楽奏者がスタンバイします スクリーンに映し出される絵本に沿ってナレーターの稲継さんが芝居気たっぷりに語りかけます そして、ピアノと弦楽奏者によって付随音楽が奏でられます この流れが繰り返され物語が進みますが、ナレーションも素晴らしく、演奏も素晴らしく、観て聴いて楽しむことができました この日は大人が鑑賞しましたが、年少の子どもたちに聴かせたら喜びそうな気がします どうでしょう、アウトリーチでやってみては

満場に拍手に、ピアノと編曲を担当した白石准氏の作曲による「インドの虎狩り」というピアソラ風のリズム感の良い音楽がアンコールに演奏され、再び大きな拍手を浴びました 楽しいコンサートでした

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カルテット・アマービレ ✕ 佐々木亮 ✕ 清水和音でモーツアルト「弦楽五重奏曲第6番K.614」、ドヴォルザーク「ピアノ五重奏曲第2番」を聴く ~ 芸劇ブランチ・コンサート

2022年02月17日 07時04分45秒 | 日記

17日(木)。わが家に来てから今日で2595日目を迎え、4月のフランス大統領選に出馬を表明した極右評論家エリック・ゼムール氏は15日、トランプ前米大統領と14日に電話で話し合ったと明らかにした  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     フェイクニュースの作り方や民衆を扇動する方法なんかの指南を受けたんじゃね?

 

   昨日、夕食に「メカジキの照り焼き」「マグロの山掛け」「生野菜サラダ」「舞茸の味噌汁」を作りました が、私としたことが 写真を撮るのを失念してしまいました 刑事さん、信じてくれ 俺は確かに作ったんだ。カツ丼いらないから信じてくれ    

 

         

 

昨日、東京芸術劇場コンサートホールで「第34回芸劇ブランチ・コンサート ~ 大人気のカルテット現る!」を聴きました プログラムは①モーツアルト「弦楽五重奏曲第6番 変ホ長調 K.614」、②ドヴォルザーク「ピアノ五重奏曲第2番 イ長調 作品81」です 演奏はカルテット・アマービレ(ヴァイオリン=篠原悠那、北田千尋、ヴィオラ=中恵菜、チェロ=笹沼樹)、①のヴィオラ=佐々木亮(N響首席)、②のピアノ=清水和音です

カルテット・アマービレは2015年に桐朋学園大学在籍中に結成、山崎伸子、磯村和英氏に師事しました 2016年に超難関の第65回ARDミュンヘン国際音楽コンクール弦楽四重奏部門で第3位に入賞、併せて特別賞を受賞したほか、内外のコンクールで第1位となっています

 

     

 

1曲目はモーツアルト「弦楽五重奏曲第6番 変ホ長調 K.614」です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756ー1791)が1791年4月に作曲しました 第1楽章「アレグロ・ディ・モルト」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「メヌエット:アレグレット」、第4楽章「アレグロ」の4楽章から成ります モーツアルトの弦楽五重奏曲の特徴は弦楽四重奏(ヴァイオリン2,ヴィオラ、チェロ)にチェロではなくヴィオラを追加していることです これはモーツアルト自身がヴァイオリンに加えてヴィオラも弾くことができ、当時、室内楽作品ではヴィオラを担当していたことと大きな関係がありそうです

アマービレの女性陣はデザインこそ異なるものの赤の衣装で統一しています 左から篠原、北田、笹沼、佐々木、中という並びでスタンバイします 笹沼のチェロを中心に、左サイドのヴァイオリンと、右サイドのヴィオラが向かい合う形です。ヴィオラの2重奏で第1楽章が開始されますが、この楽章は終始ヴィオラが主導する形でハイドン風の明るく活気ある音楽が進みます 第2楽章は優美な音楽が各楽器の対話によって爽やかに演奏されます 第3楽章は優雅そのものです。中間部の舞曲風の音楽を聴いていて「交響曲第39番」第3楽章のトリオを想起しました 第4楽章は天翔ける第1ヴァイオリンに導かれ、愉悦感に満ちた音楽が展開しました。素晴らしいアンサンブルでした この喜びに満ちた作品から8か月後にモーツァルトが天に召されると、誰が想像できたでしょうか

演奏後、ヴィオラの佐々木が清水のインタビューを受けました 清水から「どうでしたか? 若手の弦楽四重奏団に加わった感想は?」と訊かれた佐々木は「素晴らしいですね 演奏も素晴らしいですが、人間性が素晴らしいんだと思います」と答えていました 清水が「弦楽四重奏団の活動は続けることが難しいんです この四重奏団は素晴らしいです 皆さん、是非4人を応援してあげてください」と応援演説をしました。例によって口もごもごで聴きとりづらかったのですが、言っていることはまともだったので良かったです 

 

     

 

2曲目はドヴォルザーク「ピアノ五重奏曲第2番 イ長調 作品81」です この曲はアントニン・ドヴォルザーク(1841-1904)が1887年に作曲、1888年にプラハで初演されました 第1楽章「アレグロ・マ・ノン・タント」、第2楽章「ドゥムカ:アンダンテ・コン・モート」、第3楽章「スケルツォ:モルト・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「フィナーレ:アレグロ」の4楽章から成ります

この曲では左から篠原、北田、中、笹沼、後方に清水という並びになります 第1楽章はピアノに乗せてチェロが抒情的なメロディーを奏でますが、これが素晴らしかった この楽章はゆったりしたパッセージと速いパッセージが交互に展開する起伏の激しい音楽が特徴ですが、その切り替えが見事です 第2楽章はドゥムカと呼ばれる音楽(穏やかで悲しいメロディーと急速で情熱的なメロディーが交替するスラヴの民謡形式)が繰り広げられます 冒頭の中恵菜のヴィオラの余情的な演奏が素晴らしい 彼女は新日本フィルの首席奏者も務めています 第3楽章は生き生きとした活気あふれる演奏が展開します 第4楽章は軽快で流麗な演奏でドヴォルザークの魅力を醸し出します

この日は滅多に生演奏で聴く機会がないモーツァルト晩年の名作「弦楽五重奏曲第6番」と、”屈指のメロディーメーカー”ドヴォルザークの傑作「弦楽五重奏曲第2番」を聴くことができて、とても幸せでした 常設の弦楽四重奏団は「クァルテット・エクセルシオ」を筆頭に「古典四重奏団」や、若手では「クァルテット・インテグラ」などが活動していますが、「カルテット・アマービレ」とても良いです 応援しますので、頑張ってほしいと思います

 

     

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有吉佐和子著「非色」を読む ~ 白人、黒人、プエルトリコ人・・・差別の根源は色ではない:現代社会は1967年当時と変わっているか? / 令和なコトバ「タイパ」

2022年02月16日 07時17分49秒 | 日記

16日(水)。14日付日経夕刊に掲載のライター福光恵さんのコラム「令和なコトバ」が「タイパ」を取り上げていました 「タイパ」とは「タイプ」のタイプミスではなく「タイムパフォーマンス」の略だそうです 「コストパフォーマンス」が「費用対効果」を表すとすれば、「タイパ」は「かけた時間に対する満足度」のことを指すとのこと タイパを上げる方策として一般的になっているのが、ドラマや映画の早送り視聴だそうです 監督が「間の取り方」を含めて製作した映画やドラマを早送りして監督の真の意図が正確に伝わるのだろうか?と真面目なことを考える一方で、ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」などは何十分も歌手が動かないから早送りしてもいいかな、などと不謹慎なことを考える自分がいます 「いやー、ヴォータンの早口言葉はタイパ抜群だったね~」とか言っちゃって

ということで、わが家に来てから今日で2594日目を迎え、楽天グループが14日発表した2021年12月期の連結決算は最終損益が1338億円の赤字となり、過去最大の赤字となった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     携帯電話事業もプロ野球も ラクテン的にはいかない その着地点が赤字テンラクだ

 

         

 

昨日の夕食は「キムチ鍋」にしました 材料は豚バラ肉、白菜、平茸、ニラ、水菜、人参、大根、豆腐です。ピザ用チーズを乗せて食べると美味しいです

 

     

     

         

 

有吉佐和子著「非色(ひしょく)」(河出文庫)を読み終わりました 有吉佐和子は1931年和歌山県生まれ。幼少期をインドネシアで過ごす。東京女子大学短期大学部英語科卒。1956年「地唄」で芥川賞候補となり、文壇デビュー 「紀ノ川」「有田川」「日高川」の三部作、「花岡青洲の妻」「恍惚の人」など著書多数。1984年、急性心不全のため逝去

本書はたしか、先日読んだブレイディみかこさんの「ヨーロッパ・コーリング・リターンズ」で紹介されていて、これは是非読まなければならないと思って購入した本です

 

     

 

本書は、1945年8月の敗戦で住居や家族を失い、食料難のなかで生き残るために占領軍の軍人と結婚し、夫の母国アメリカに渡った「戦争花嫁(ウォー・ブライド)」を主人公としてアメリカ社会の実態を描いています

終戦の年に女学校を出て、米兵相手のキャバレーのクロークで働き始めた林笑子は、そこで出会った黒人のトムことトーマス・ジャクソン伍長と結婚するが、夫の帰国でいったん離婚を決意したものの、子供が生まれたことから、日本で世間の好奇に晒され後ろ指さされるよりはまし、と考え娘と共に渡米する しかし、夫がニューヨークで優雅に暮らしていると期待していたのに反し、彼はハーレムの半地下の狭い安アパートに住み、夜間勤務の看護師として働いていた トムは真面目に働いていたが給料は安く、物価は高く、生活はかつかつだった そのため、笑子は日本料理店「ナイトオ」のウエイトレスとして働くことになるが、そこで、渡米する貨物船の中で知り合った3人の女性と再会する 笑子と同じ黒人の夫を持つ竹子、白人と結婚した志満子、上品で容姿端麗な麗子だ。志満子の夫は白人でも「イタ公」と呼ばれるイタリア系アメリカ人で、麗子の夫は黒人からも”最低の人間、アメリカ人じゃない”と蔑まされるプエルトリコ出身者だった 笑子は3人の女性や現地の人々との付き合いを通じて、アメリカには複雑に絡み合った厳然とした差別が存在することを身をもって体験する 白人は黒人を差別し、黒人はプエルトリコ人を差別する。さらに、同じ黒人同士でも、アフリカ系黒人とアメリカ黒人との間にもお互いを蔑む傾向がある さらにユダヤ人に対する差別も存在する。しかし、笑子自身も黒人の夫やその弟を見て「やっぱり二グロは二グロだ。無教養で愚鈍な黒ん坊」と考えていることに気が付く そんな笑子も、自分の子どもの肌が黒いことを思い出し、「肌が黒い娘は自分よりも人間として劣っているわけがない」と考え直す。そして「色ではない」(「非色」はここからきている)、「私は二グロだ!  ハアレムの中で、どうして私だけが日本人であり得るだろう。私も二グロの一人になって、トムを力づけ、メアリイを育て、そしてサムたちの成長を見守るのでなければ、優越意識と劣等感が犇めいている人間の世間を切り開いて生きることなど出来るわけがない。ああ、私は確かに二グロなのだ!そう気づいたとき、私は私の身体の中から不思議な力が湧き出してくるのを感じた」と認識し、前向きに生きることを決意する

私の尊敬する文芸評論家の斎藤美奈子さんが「日本人妻と差別の構造」と題して巻末の「解説」を執筆していますが、いつものように鋭い洞察力で解説しています

「非色(色に非ず)には、多様な意味が込められています。差別の根源は肌の色ではない。では何なのか。笑子は悩み続けますが、最終的にはここに帰結するはずです。『色ではないのだ』『肌の色で中身を決められてたまるものか!』」

有吉佐和子さんは1959年11月から60年8月までの10か月間、28歳でニューヨーク州のサラ・ローレンス大学に留学しています 本書は1967年11月に角川文庫から刊行されましたが、その時の経験が本書に生かされていることは間違いないでしょう 斎藤さんが指摘しているように、本書が出版された1960年代中盤は、アメリカ合衆国で黒人の権利を求める公民権運動がピークに達した時代でした 1963年8月には黒人や黒人差別に反対する人々20万人が結集した「ワシントン大行進」が決行され、キング牧師が歴史に残る有名な演説をしています 例の「私には夢がある~」という演説です 有吉さんは、アメリカの公民権運動が功を奏して黒人差別が無くなることを信じて、これからの社会は「色ではない」「肌の色で中身を決められてたまるものか!」と笑子に言わせたのだと思います

本書の巻末に、編集部のコメントが書かれています 内容は「1967年刊行の本書には、今日からみれば一部不適切と思われる表現があるが、作者に差別的意図のなかったことは自明であり、書かれた時代的背景を鑑み、いまなお残る重要な問題を孕んでいる優れた作品であることを踏まえ、明らかな誤植などの訂正を除き、そのままとした」というものです 「一部不適切と思われる表現」とは、「二グロ」「黒ん坊」「イタ公」などですが、確かにこれらの言葉を使わなければ有吉さんが本当に訴えたいことは伝わらないと思います

また、有吉さんの娘・有吉玉青さんが「復刊によせて」(2020年10月)の最後に「1959年にアメリカ・ニューヨークに留学した母が描いたアメリカが、半世紀の時を経て現代によみがえること嬉しく、感謝するばかりです。アメリカはあれから、変わったのか変わっていないのか・・・」と書いています 現実を見ると2020年のアメリカ・トランプ政権下で、黒人男性が白人警官に窒息死させられたジョージ・フロイド事件をきっかけに「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切だ)」というスローガンを掲げた大規模なデモが行われ、まだなお黒人差別が根強く残っていることを示しました 現在は民主党政権になりましたが、黒人差別や移民差別が無くなったわけではありません 「フェイクと分断」のトランプが大統領再選を狙っていることもあり、アメリカは危ないところにいると思います

本書は今から55年も前に書かれたとは思えないほど、古びていないしリアリティーがあります 410ページを超える大作ですが、読み始めたらあっという間に読み終わりました 強くお薦めします

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新日本フィル3月25・26日「クラシックへの扉」指揮者・ピアニスト変更 / 恩田陸著「歩道橋シネマ」を読む ~ ミステリーあり、ホラーあり、SFありの短編集

2022年02月15日 07時02分16秒 | 日記

15日(火)。新日本フィルのホームページ(14日付)に「すみだクラシックへの扉  第5回(3/25・26)指揮者・ソリスト変更のお知らせ」(下記)が載っていました

「2022年3月開催の『すみだクラシックへの扉』第5回に出演を予定しておりましたリオ・クオクマン氏(指揮)、アンヌ・ケフェレック氏(ピアノ)は、2月14日現在『オミクロン株に対する水際措置の強化』による入国規制の緩和の見通しが立たないため、本公演は下記の通り、出演者を変更して開催いたします。

指 揮:大友直人

ピアノ:清水和音

なお、プログラムに変更はございません。

①細川俊夫「開花 Ⅱ」

②モーツアルト「ピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491」

③ドヴォルザーク「交響曲第9番ホ短調”新世界より”」

12日付の日経夕刊によると、「オミクロン株の水際対策について、政府は3月からビジネスや留学生らを対象に、段階的に外国人の入国制限を緩和する方向で調整に入った」となっていたので、てっきり3月開催のコンサートは外国人指揮者やソリストが入国できるのかと思っていたら、早とちりだったようです 13日付の朝日によると、「政府は3月から1日あたりの入国者数の上限を拡大した上で、段階的に当面5千人まで拡大する案を軸に調整する。入国後は一定の待期期間を必要とし、受け入れ先や監督者を定めることなども検討する。感染状況や世論の動向の推移を見ながら、早ければ来週にも具体的な内容を決める方向だ」となっています つまり、今週内容が決まるということです。新日本フィルとしては「政府の方針が決まるまで待っていられない」ということでしょう 指揮者はともかく、今期「扉シリーズ」を選んだのはケフェレックの弾くモーツアルトが聴けることが大きな要因だっただけに、代演は本当に残念です

ということで、わが家に来てから今日で2593日目を迎え、米CNNテレビは13日、2024年次期大統領選に関する世論調査の結果を公表したが、民主党支持層のうちバイデン大統領が党指名候補として望ましいと答えたのは45%、バイデン氏以外を求める声は51%で、一方、共和党支持層のうちトランプ前大統領を党指名候補とすべきと回答したのは50%、別の人物がふさわしいとしたのが49%だった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     両党ともに2つに割れているが このまま行くと 米国はやばいことになりそうだな

 

         

 

昨日、夕食に「ビーフカレー」と「生野菜サラダ」を作りました ビーフはブロック肉でなく切り落としを使っていますが、この方が食べやすいです

 

     

 

         

 

恩田陸著「歩道橋シネマ」(新潮文庫)を読み終わりました 恩田陸は1964年宮城県出身。早稲田大学卒。1992年に「六番目の小夜子」でデビュー、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補となる。2005年に「夜のピクニック」で吉川英治文学賞新人賞と本屋大賞を、2006年に「ユージニア」で日本推理作家協会賞を、2017年にショパン・コンクールを題材にした「蜜蜂と遠雷」で直木賞と2度目の本屋大賞を受賞しています

 

     

 

本作は2019年11月に新潮社から刊行された単行本を文庫化したもので、18の短編小説から成ります 特に印象に残った作品について書きます

「線路脇の家」は電車から見える家に居る3人はいつも暇そうにしているが いったい何をしているのか? という疑問に基づく物語ですが、バブル全盛期に「占有屋」という職業があったことを初めて知りました

「逍遥」はリモート・リアルという先端技術(テレポーテーションのようなもの)が実現している近未来の世界を描いた作品ですが、ミステリータッチです

「あまりりす」は37年に1度行われるお祭りの日に不可解な死亡事件が発生する。村人は「あまりりす」のせいだというが、いったい「あまりりす」とは何か?というホラーです

「風鈴」は風もないのに風鈴が鳴る、その時、誰かが歩く音だけが聴こえるというミステリー&ホラー的な作品です    これは現実にありそうな気もします

「楽譜を売る男」は白人男性がロビーで楽譜を売る姿を見ていろいろと詮索するが、意外な真実が待っていたというストーリーです

「春の祭典」はバレエダンサーになった同級生から公演の招待状が届くが、何とストラヴィンスキーの「春の祭典」を一人で踊るという    そこで学生時代に教室で見た彼の姿を思い出すという話です

恩田さんは「あとがき」で各作品が生まれた背景(きっかけ)を書いていますが、著者の言う通りネタバレの部分がかなりあるので、本文を読んでから読むことをお勧めします

 

         

 

本日 toraブログが開設から満11年を迎えました 2011年2月15日に開設以来、身内に不幸のあった3日間を除き毎日書き続けてきました 本日が開設から4018日目、4152本目の記事となります これもひとえに毎日ご覧くださっている読者の皆さまのお陰と感謝しております これからも根性で毎日休まず書き続けて参りますので、モコタロともどもよろしくお願いいたします

【忘備録】2月15日現在のtoraブログのアクセス状況

①トータル閲覧数     = 6,793,681 PV

②トータル訪問者数 = 2,059,138 I P

③gooブログ全体における直近1週間(2月6日~12日)のランキング  = 3,090,352ブログ中 363位

④にほんブログ村「コンサート・演奏会感想」における直近ランキング = 54ブログ中 1位

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「今こそ聴きたい クラシック音楽」 ~ 朝日の読者アンケートで2位はショパン、1位は? / チョコレートの効能 ~ バレンタインデーに考える:日経の記事から

2022年02月14日 07時05分13秒 | 日記

14日(月)。昨日の日経朝刊のコラム「元気の処方箋」(東京有明医療大学教授・医師の川嶋朗氏)が、チョコレートの効能を取り上げていました 超略すると次のとおりです

「聖バレンタインデーは、戦いに赴く兵士の結婚を禁じたローマ皇帝の意向に反し、ひそかに結婚させていて処刑された司祭バレンタインを祭る日に由来するといわれている チョコレートの原料のカカオにはカカオポリフェノール、テオブロミン、カカオプロテイン、食物繊維といった栄養成分が含まれている カカオポリフェノールは血管を拡張して血圧を下げるほか、高い抗酸化作用で悪玉コレステロールの酸化を抑え、動脈硬化を防ぐ効果などが認められている テオブロミンには抗腫瘍、抗炎症、心血管や歯のエナメル表面の保護に加え、善玉コレステロールを増やし、脂肪蓄積を抑えるといった報告がある 冷え性やリラックス効果も指摘されている。カカオプロテインは難消化性の物質。食物繊維と同じく腸内環境を整え、便通改善が期待される このように適量であれば健康にも役立つ。ただ食べ過ぎれば健康への悪影響が考えられる 血糖値が大きく上昇するし、脂質が比較的多い。テオブロミンやカフェインには神経を興奮させる働きや利尿作用があり、過剰摂取には注意する必要がある 過ぎたるは及ばざるがごとし。これはチョコレートにも当てはまる

今日は「聖バレンタインデー」です。娘からのチョコレートです 写真下の ROYCE の生チョコ「キールロワイヤル」は舌の上でとろけて とても美味しいです

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で2592日目を迎え、13日付の北朝鮮労働新聞は金総書記が13日、平壌の和盛(ファソン)地区で行われた住宅建設の着工式に出席し、「工事日程を守ることだけに偏る考えを一掃し、建設部門を将来を見通して発展させるための科学的な構想を実行することが重要だ」と指摘したと報じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     今はそう言ってるが 工事日程を守らないと 関係者が処分されるのは目に見えてる

 

         

 

毎週土・日は夕食作りはお休みして弁当や総菜を買ってきて済ませていますが、昨日は雪の予報も出ていたし寒かったので買い物に出るのをやめ、以前冷凍しておいたハンバーグを解凍して茹でた野菜を添えました あとは卵スープです。ハンバーグはとろけるチーズを乗せるととても美味しかったです

 

     

 

         

 

昨日の朝日新聞朝刊別冊「be」は、「今こそ聴きたい クラシック音楽」として読者が選ぶ作曲家ランキングを発表しています これは編集部が選んだ50人の作曲家を対象に1月13~18日に実施したアンケートによるもので、2125人の読者が複数回答しています その結果、ベスト10は以下の通りとなっています

1位:モーツァルト=1129票

2位:ショパン=1109票

3位:ベートーヴェン=1067票

4位:チャイコフスキー=850票

5位:ドヴォルザーク=785票

6位:J.S.バッハ=739票

7位:シューベルト=679票

8位:ヴィヴァルディ=628票

9位:ブラームス=560票

10位:ドビュッシー=545票

1位のモーツァルトは順当な結果だと思います ピアニストの清家信也氏がモーツァルトについて次のように解説しています

「その特徴はなんと言っても、独奏曲、協奏曲、オペラ、交響曲など、あらゆるジャンルでヒット曲を生んだところ ほかのどんな作曲家にも向き不向き、得手不得手があり、彼以外には誰も成し遂げることができなかった

さらに、モーツアルトが活躍する少し前の18世紀中ごろまでは、音楽は王や貴族からの委託で作られ、王宮やサロンで演奏されたことを踏まえ、

「今でいうホテルのラウンジのBGMのような役割を果たし、『ながら聴き』できるよう、主張が少なく、エモーショナルにもならない。あらゆる場面で使える万能性を備えている

と語っています 「ながら聴き」できないような短調の名作も少なくありませんが、おおむねモーツァルトの音楽の特徴を捉えていると思います

そもそも私がクラシック音楽の世界に入るきっかけになったのは、ラジカセに録音したモーツアルト「フルート協奏曲第2番」の演奏を聴いたことです 何度も繰り返し聴いたので演奏者名を覚えています。森正指揮NHK交響楽団、フルート首席・宮本明恭氏による演奏でした 実は、ラジカセに録音し繰り返し聴いていたのはこの曲だけではありませんでした ドビュッシー「小組曲」、CCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)「トラベリン・バンド」、トワエモア「空よ」もモーツアルトと同じように何度も聴きました    しかし、最後まで飽きずに残ったのがモーツァルトでした    現在所有するCD4000枚のうち約700枚が、LPレコード1500枚のうち約400枚がモーツァルトなので、全体の約2割を占めていることになります

 

     

 

アンケート結果で意外だったのは2位のショパンですが、これは昨年のショパン・コンクールで2位に反田恭平さんが、4位に小林愛実さんが入賞したことが大きく影響していると思います ベートーヴェンも順当です 唯一のオペラ「フィデリオ」を含め、 モーツァルトと同様あらゆるジャンルの音楽を作曲し、しかも傑作ぞろいの作品を残しました チャイコフスキーとドヴォルザークは屈指のメロディーメーカーということで共通しています J.S.バッハの多様性には驚きます オルガンやヴァイオリンのソロの作品から、カンタータ、管弦楽曲、協奏曲、そして「マタイ受難曲」に代表される巨大な宗教曲に至るまで多種多様な音楽を数多く作曲し、モーツァルト、ベートーヴェンをはじめ 後世の音楽家に多大な影響を及ぼしました

参考までに11位以下は、11位:メンデルスゾーン、12位:ワーグナー、13位:リスト、14位:ラフマニノフ、15位:スメタナ、16位:サン=サーンス、17位:ラヴェル、18位:ガーシュイン、19位:シューマンとなっています

私はなぜか頭文字がMとBの作曲家が好きで、オーケストラの定期公演のコースを選ぶ際はこれらの作曲家の作品が入っているかどうかが大きな選択基準になります 「M」はモーツァルト、マーラー、メンデルスゾーンです このアンケートでは、マーラーは選外です 「B」はベートーヴェン、ブラームス、バッハ、ブルックナーです ブルックナーはアンケートでは選外です マーラーとブルックナーに共通するのは名作が交響曲に偏っていることと、作品が長大であることです 朝日の読者は重厚な大曲はあまり好まないようです その割には拷問のような長さの楽劇で有名な ”腰痛の天敵” ワーグナーが12位に入っているのが不思議ですが、オペラ・楽劇の序曲や前奏曲等が好きなのかもしれません

さて、あなたの今こそ聴きたい「作曲家ベスト10」は誰でしょうか

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鈴木雅明 ✕ NHK交響楽団でストラヴィンスキー「プルチネッラ」「ペトルーシカ」を聴く ~ N響池袋Cプロ2日目 / 外国人の新規入国措置緩和へ ~ 日経の記事から

2022年02月13日 07時17分39秒 | 日記

13日(日)。昨日の日経朝刊第1面に「ビジネス入国  先行緩和 月内に留学生含め1日1000人台」という見出しの記事が載っていました 記事を超略すると次のとおりです

「政府は新型コロナウイルス対策で2月末まで原則禁止した外国人の新規入国について、段階的に緩和する まずビジネス目的と留学生の入国を2月中に先行して認める。1日1000人以上から順次拡大する。2021年11月末に導入した新規入国の原則停止は3月1日で解除する方向 解除時は入国の際の待機を日本人も外国人も7日間から『3日以下』にする案がある。ワクチンの3回目接種や検査が条件だ。来週にも感染状況を見極めて判断する

指揮者や演奏家等の入国は「ビジネス目的」だろうから、この記事の通りにいけば、3月以降は外国人アーティストが来日することが出来そうです とはいえ、4月の「ばらの騎士」の出演者変更を公表している新国立劇場は、今さら元に戻すことはできないでしょう

ということで、わが家に来てから今日で2591日目を迎え、11日から立川市のホテルで行われた第71期ALSOK杯王将戦勝負第4局(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社主催)は12日午後6時23分、挑戦者の藤井聡太竜王(19)=王位、叡王、棋聖=が渡辺明王将(37)=名人、棋王=を114手で降し4連勝で初の王将を獲得するとともに、史上最年少でタイトル5冠を達成した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     残るは王座、棋王、名人の3タイトル  若いうちに是非挑戦して獲得してほしい!

 

         

 

昨日14時から、東京芸術劇場コンサートホールでNHK交響楽団「池袋Cプログラム」2日目公演を聴きました プログラムは①ストラヴィンスキー:組曲「プルチネッラ」、②同:バレエ音楽「ペトルーシカ」(1947年版)です

本公演は当初、パーヴォ・ヤルヴィの指揮により①リヒャルト・シュトラウス:バレエ音楽「ヨセフの伝説」から交響的断章、②同「アルプス交響曲」が演奏される予定でした しかし、新型コロナ・オミクロン株の感染拡大が影響しヤルヴィ氏が来日しなったことから、指揮者とプログラムが総入れ替えになったものです 1月に届いたN響からのハガキによると、「今回の変更にあたり料金の払い戻し、他公演への振替等はございません」と書かれています そこで手元のチケットの裏側を見ると「本演奏会を中止する以外は、出演者・曲目・演奏曲順等の変更などいかなる理由があっても料金の払い戻しはいたしません」と書かれています これを見ると仕方ないと思いますが、どうもすんなりと納得できない自分がいます 指揮者が変更になるだけなら、あるいは、演奏曲目の一部が変更になるだけならまだ納得できますが、指揮者も演奏曲目も「全取り換え」になるなんて誰が想定できたでしょうか? まるで詐欺にあったような気がします しかし、聴くと決めたからには気持ちを切り替えなければなりません 覚悟を決めます

  ・・・切・・り・・取・・り・・線・・・

開演に先立って13時15分から室内楽の演奏がありました ドビュッシー「フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ」から第1楽章「田園曲」、第2楽章「終曲」が梶川真歩(fl)、中村翔太郎(va)、早川りさ子(hp)によって演奏されました 演奏にあたり、早川さんが「ドビュッシーとストラヴィンスキーは、お互いにスコアを送り合うほどの緊密な仲だったそうです」と解説しましたが、意外な感じがしました

 

     

 

さて本番です。休憩なしで①ストラヴィンスキー:組曲「プルチネッラ」、②同:バレエ音楽「ペトルーシカ」(1947年版)が演奏されます 指揮はバッハ・コレギウム・ジャパン音楽監督の鈴木雅明です もともとはバッハを中心とする宗教音楽を中心に演奏活動を展開してきましたが、最近では古典派からロマン派、さらには今回のような20世紀のロシア音楽まで手を伸ばすようになっています

オケは左から第1ヴァイオリン(5)、第2ヴァイオリン(5)、ヴィオラ(5)、チェロ(4)、その後ろにコントラバス(4)という今では珍しい並び 下手のヴァイオリン(高音)から、ヴィオラ、チェロ、コントラバスへと上手に行くにしたがって音が低い楽器の順に並んでいます この編成はディズニーの「ファンタジア」や「オーケストラの少女」などで有名なレオポルド・ストコフスキーが採用して定着した感があります 当時はLPレコードがモノラルからステレオへの移行期にあり、彼は録音に際し左側に高音楽器を、右側に低音楽器を集めることにより、再生時に左側スピーカーからはヴァイオリンが、右側のスピーカーからはチェロやコントラバスが聴こえるようにステレオ効果を狙ったのです 今回、鈴木雅明氏は録音効果を狙ったとは思えませんが、彼独特の考えがあって「ストコフスキー配置」にしたのでしょう

1曲目はストラヴィンスキー:組曲「プルチネッラ」です この曲はイーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971)がロシア・バレエ団の委嘱により1919年から20年にかけて作曲、1920年5月15日にバレエ版がエルネスト・アンセルメ指揮ロシア・バレエ団により、パリ・オペラ座で初演されました 第1曲「序曲」、第2曲「セレナード」、第3曲「スケルチーノ ~ アレグロ ~ アンダンティーノ」、第4曲「タランテラ」、第5曲「トッカータ」、第6曲「ガヴォット」、第7曲「ヴィーヴォ」、第8曲「メヌエット ~ 終曲」から構成されています

「プルチネッラ」とはナポリの仮面喜劇の道化役のことです。フルート、オーボエ、ファゴットといった木管楽器、トランペット、ホルン、トロンボーンといった金管楽器が、神出鬼没のプルチネッラの姿を楽しく表現します。各奏者のソリスト級の演奏が光ります

 

     

 

2曲目はストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシカ」(1947年版)です この曲は1910年から翌11年にかけて作曲(1947年版は1946年~1947年)、1911年6月13日にピエール・モントゥー指揮ロシア・バレエ団によりパリのシャトレ劇場でフォーキンの振付により初演されました 第1場「謝肉祭の日 ~ 手品師の芸 ~ ロシアの踊り、第2場「ペトルーシカの部屋」、第3場「ムーア人の部屋 ~ バレリーナの踊り ~ バレリーナとムーア人のワルツ、第4場「謝肉祭の日の夕方 ~ うばの踊り ~ 御者と別当の踊り ~ 仮装した人々」の4場から成ります

弦楽器が一気に14型に拡大し、管楽器が増員され打楽器が加わり、フルオーケストラ態勢になります 鈴木氏の指揮で第1曲「謝肉祭の日」が開始されます 管楽器群の色彩感あふれる演奏が祭りで賑わう市場の様子を活写します ストラヴィンスキー独特のスピード感、急停止、突然の凪状態、再び急発進といったように、曲は一寸先が読めないほど目まぐるしく変化します 管楽器群の一人ひとりの名人芸が素晴らしい 音楽評論家・矢澤孝樹氏がこの曲についてプログラム ノートに「ロマン派のように弦楽器がベースを作り、管楽器が色を添えるのではない。管楽器がベースを作り、そこに弦楽器が合いの手を入れる。地と図が反転している。同作品のモダン性のひとつである」と書いていますが、まさにその通りの曲想で、主役を担う管楽器群のアグレッシブな演奏は見事でした また、節目に鋭く打ち込まれるティンパニが全体を引き締めていました   自席の真下あたりで奏者が見えなかったのですが、ピアノが素晴らしい演奏をしていました

総じてN響はさすがにソリスト級の演奏者が揃っているな、とあらてめて認識したコンサートでした

ところで、今月のA・B・C各プログラム公演をもってN響首席指揮者を退任するはずだったパーヴォ・ヤルヴィ氏は、3公演とも新型コロナ・オミクロン株感染拡大絡みで来日できなくなってしまいました ヤルヴィ氏は2015年から7年にわたり120を超える公演を指揮してきました この間、2017年と2020年にはヨーロッパ・ツアーを行い、N響の名を世界に知らしめましたが、この成功はヤルヴィ氏の力あってこそです プログラム冊子に挟みこまれたヤルヴィ氏からのメッセージは「東京で、そして世界のステージで私たちが共に成し遂げることができた数々の演奏を誇りに思っています。そして素晴らしい音楽を共有していただき、皆様に感謝の言葉を贈ります」と結ばれています 個人的には2017年6月のシューベルト「交響曲第8番”ザ・グレート”」の名演が忘れられません ヤルヴィさん、数々の名演をありがとうございました

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読売日響から2022年度定期会員チケット届く / 松田青子著「おばちゃんたちのいるところ」を読む ~ 明るい幽霊が人間界に降りてくる

2022年02月12日 07時04分53秒 | 日記

12日(土)。読売日響から2022年度定期会員チケットが、会員証、特典CD引換券、チケットホルダー、読響2022年度ブックレットとともに届きました ブックレットは以前、思い思いに仮装した楽団員が紹介されていて楽しかったのですが、最近はなくなってしまい残念です 是非復活してほしいと思います これでチケットがまだ届かないのは東京シティ・フィルだけになりました

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で2590日目を迎え、北京冬季五輪でドーピング検査を管轄する国際検査機関は11日、フィギュア女子での15歳のカミラ・ワリエワ(ロシア)について、ドーピング検査で陽性だったが、北京五輪の参加継続が認められたとする声明を発表したことについて、国際オリンピック委員会はスポーツ仲裁裁判所へ異議を申し立てる方針である  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ドーピングが理由でロシアは国として五輪に参加できなかったのに  まだ懲りない

 

         

 

昨日、夕食に「チキンステーキ」と「人参のスープ」を作りました チキンステーキは何回食べても飽きません

 

     

 

         

 

松田青子著「おばちゃんたちのいるところ」(中公文庫)を読み終わりました 松田青子は1979年兵庫県生まれ、同志社大学文学部英文学科卒。2013年にデビュー作「スタッキング可能」が三島由紀夫賞と野間文芸新人賞候補となる 19年に「女が死ぬ」がアメリカのシャーリイ・ジャクスン賞短編部門の最終候補になり、21年に「おばちゃんたちのいるところ」がレイ・ブラッドべり賞の候補となったのち、ファイアークラッカー賞、世界幻想文学大賞を受賞

 

     

 

この本は、タイトルがモーリス・センダックの絵本「かいじゅうたちのいるところ」に似ているので、何となく面白そうだと思って買ったものです だから、まさか幽霊が主人公だとは思わず、読み始めてから気が付きました 「おばちゃんたちのいるところ」とは「幽霊のおばちゃんたちのいるところ」なわけです それも怖い幽霊ではなく、ユーモラスな幽霊です 失業中の男に牡丹灯篭を売りつけたり、子育てに悩むシングルマザーを助けたりと様々な幽霊が活躍します さらに幽霊候補をヘッドハントする謎の会社の社員も登場します

本書は17の短編から成りますが、例えば最初の「みがきをかける」は歌舞伎「娘道成寺」を、次の「牡丹柄の灯篭」は落語「牡丹灯篭」をモチーフにして物語を構成しています 落語や歌舞伎に詳しい人は一層面白く読めると思います

「私のスーパーパワー」は落語「四谷怪談」と「怪談市川堤」をモチーフに お岩とお紺を扱い、「2人の共通点は毒を盛られたり病にかかったりして、顔が醜くなり、幽霊となって自分を陥れた相手を呪うことだ」と書きます そして「『私』は幼い頃からアトピー性皮膚炎で顔がニキビだらけで友達から”怪物だ”と言われていたので、お岩さんやお紺さんは他人事とは思えない 中学・高校生になると、アトピーが悪化すると男子の波が引き、アトピーが落ち着くと男子の波が押し寄せてきた 女子も同じだった。その経験が人を観察する目を与えてくれた 観察眼は現在の生活エッセイストとしての仕事に役立っている。これは私のスーパーパワーである」と続けます。この話は、マイナスをプラスに転じさせるエピソードとして受け取ることができます

「お岩さん」ということでは、今住んでいるマンションの近くに都電の線路に沿って「お岩通り」という道路があるのですが、どうやら近くに「お岩さん」のお墓があるらしいのです ネットで調べてみたら「妙行寺」というお寺で、お岩さんが出てくる東海道四谷怪談を書いた鶴屋南北の墓もあることが分かりました 徒歩で5分もかからない近所なので、今度お墓参りにでも行ってみようと思います お供え物は何がよいでしょう? お皿10枚セットとかどうでしょうか? えっそれは番町皿屋敷のお菊さんだろうって? そうでした。岩と菊ではジャンルが違いますね 2月14日が近いのでGODIVAのチョコレートにします

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井上道義 ✕ 服部百音 ✕ 読売日響でショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲第1番」「交響曲第5番」を聴く / 新国立オペラ「ばらの騎士」出演者変更

2022年02月11日 07時22分10秒 | 日記

11日(金・祝)。新国立劇場のホームページ(2月10日付)によると、2021/2022シーズン  オペラ「ばらの騎士」の出演者の一部が変更になったとのことです それによると、「オックス男爵に出演を予定していたクリスティン・ジクムントソンは、健康上の理由により出演できなくなった。オクタヴィアン役に出演を予定していたマリア・カターエワは、本人の都合により出演できなくなった。このため次のとおり出演者を変更して上演する。

オックス男爵:クリスティン・ジクムントソン ⇒ 妻屋秀和

オクタヴィアン:アンナ・カターエワ ⇒ 小林由佳

警部:妻屋秀和 ⇒ 大塚博章

これまでの出演者変更は、「新型コロナウイルス・オミクロン株感染拡大防止に係る外国人の新規入国制限措置のため」というのがほとんどでしたが、今回降板になった2人はどうも違うようです 「健康上の理由」は仕方ないとしても、「本人の都合により」というのは何なんでしょうか 今のところ、元帥夫人役のアンネッテ・ダッシュや指揮者のサッシャ・ゲッツェルは予定通り出演するようですが、予断を許しません 「さまよえるオランダ人」「愛の妙薬」に続いて3度目のオール日本人歌手による公演になることも覚悟しなければならないかもしれません

話は変わりますが、3月10日(木)は19時から新国立オペラ「椿姫」と東京フィル定期が重なっており、同12日(土)は14時から読響マチネーが、18時から東響定期があるため、東京フィルと読響の振替制度を利用して、4日間で各1公演を聴くように日程を組み直しました 10日(木)19時:新国立オペラ「椿姫」、11日(金)19時:東京フィル定期、12日(土)18時:東響定期、13日(日)14時:読響マチネー この週は8日(火)、9日(水)もコンサートが入っているので、6日間連続で聴くことになります 腰痛持ちにとっては最悪の強行軍日程です

ということで、わが家に来てから今日で2589日目を迎え、北京冬季五輪フィギュアスケートの男子ショートプログラム8位の羽生結弦が、フリーの演技の冒頭にクワッドアクセル(4回転半=4A)に挑んで転倒したが、初めて国際スケート連盟が「4A」として認定した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     五輪では結局4位に終わったけど 羽生選手の挑戦は 記録にも記憶にも残るだろう

 

         

 

昨日、夕食に「肉じゃが」「生野菜サラダ」「もやしの味噌汁」を作りました 肉じゃがは、ちょっと煮過ぎて一部が溶けてしまいましたが、逆にねっとりして美味しかったです

 

     

 

         

 

昨夜、サントリーホールで読売日響「特別演奏会」を聴きました プログラムは①ショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲 第1番 イ短調 作品77」、②同「交響曲 第5番ニ短調 作品47」です 演奏は①のヴァイオリン独奏=服部百音、指揮=井上道義です

このコンサートは、当初予定されていたヴァイグレ指揮によるリヒャルト・シュトラウス「エレクトラ」の中止を受け、2024年末に指揮者引退を宣言している井上道義と協議の上、急きょ企画・実施されることになったものです

 

    

 

自席は2階RB4列目です。会場は7~8割くらいの入りでしょうか。新型コロナまん延防止等措置のもと、大雪注意報発令のもと、よく入った方でしょう

オケは10型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつもの読響の並び。コンマスは長原幸太、その隣は林悠介というダブル・コンマス態勢です    ハープが2台出ていますが、一人は自称”フリーランスの手酌系ハーピスト”高野麗音さんです

1曲目はショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲 第1番 イ短調 作品77」です    この曲はドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906-1975)が1947年から翌48年にかけて作曲、1955年にレニングラードでダヴィッド・オイストラフの独奏により初演されました 曲の完成から初演まで間が空いているのは、当時のショスタコーヴィチの作品が「形式主義的堕落と音楽の反民主的傾向をもっとも顕著に表している」としてスターリン政権から批判されたことにより、しばらく公表を控えていたためで、スターリンの死(1953年)以降、それまで未発表だった作品が表に出たからです

第1楽章「ノクターン:モデラート」、第2楽章「スケルツォ:アレグロ」、第3楽章「パッサカリア:アンダンテ ~ カデンツァ」、第4楽章「ブルレスク:アレグロ・コン・ブリオ」の4楽章から成ります

ソリストの服部百音(はっとり もね)は1999年生まれ。2009年にリピンスキ・ヴィエニャフスキ国際コンクール(ジュニア部門)が史上最年少優勝したのをはじめ、数々の国際コンクールで1位を受賞しています 現在、桐朋学園大学院に在籍しています

黒のエレガントなステージ衣装で登場した服部百音が中央でスタンバイし、井上の指揮で第1楽章の演奏に入ります この楽章は闇の世界です。服部は弱音によりモノローグを語ります まるでスターリン時代の暗い世相を表しているかのようです 第2楽章は一転、活気のあるスケルツォで、独奏ヴァイオリンとオーケストラとの丁々発止のやり取りが生き生きと展開します 第3楽章はティンパニと低弦を中心に荘重な主題が奏でられ、独奏ヴァイオリンが切々と変奏を展開します この楽章の最後に長大なカデンツァが演奏されますが、服部はまるで何かに取り憑かれたかのように狂気迫る演奏を展開します クールな顔の表情からは伺い知れない内に秘めた情熱をヴァイオリンの音として表現しているかのようです それは演奏中の激しい足踏みの音に現れていました。靴で床を踏む音が2階席まで轟きました 第4楽章は超高速演奏で、協奏曲というよりは競争曲と言った方が良いほどのアグレッシブな演奏が展開しました 最後の音が鳴り終わった瞬間、ひょっとして今年の「マイベスト3」に入る演奏を早くも聴いてしまったかもしれない、と思いました

服部百音は身体を45度に折って前に一礼、左に一礼、後ろに一礼、右に一礼し、熱狂的な拍手に応えました これほど礼儀正しいアーティストを知りません

会場割れんばかりの拍手に服部は、シューベルト(エルンスト編)「魔王」をストーリー性豊かに超絶技巧で演奏、会場の温度を2度上昇させました

 

     

 

プログラム後半はショスタコーヴィチ「交響曲 第5番 ニ短調 作品47」です この曲は1937年に作曲、同年レニングラードで初演されました 共産党機関紙「プラウダ」がショスタコーヴィチのオペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」を「音楽でなく荒唐無稽」と批判したことから、それに対する回答として作曲したものです 第1楽章「モデラート」、第2楽章「アレグレット」、第3楽章「ラルゴ」、第4楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」の4楽章から成ります

オケは14型に拡大します 井上の指揮で演奏に入りますが、終始、弦楽器群の渾身の演奏が素晴らしく、特に遠藤真理率いるチェロ・セクションのエネルギー溢れるアグレッシブな演奏が印象に残りました また、第3楽章「ラルゴ」におけるオーボエの金子亜未、クラリネットの中館壮志(共に新日本フィルからの移籍組)の寂寥感溢れる演奏が素晴らしかった 高野麗音のハープもしみじみと良かった 終楽章の音楽は、「苦悩を通しての勝利」か、「スターリン政権に対する当てつけやパロディー」か、と様々な解釈がありますが、井上 ✕ 読響の演奏は純音楽として"輝かしい喜び”を表現していました

聴衆の熱狂的な拍手にカーテンコールが繰り返されましたが、井上は舞台中央で身体を2回転させダブルトゥループに挑戦、着地に成功しました 彼は2024年末に指揮者を引退すると宣言していますが、引退後はアイススケートに挑戦するつもりでしょうか

帰りも雪が降っていましたが、雪の中を腰痛を押し切って聴きに行って良かったと思いました 何だかんだ言っても、生で聴かなければ作品の本当の良さは分からないと思います

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ブレイディみかこ著「ヨーロッパ・コーリング・リターンズ」を読む:2014年 ~ 2021年の混迷するイギリスの姿を地べたからの視点で捉えたポリティカル・レポート

2022年02月10日 07時14分31秒 | 日記

10日(木)。昨日のブログでご紹介した「スリー・グッド・シングス」を昨夜やってみました その日に起きた良いことを3つ書き出します。①朝、日経の代わりにM紙がメールボックスに入っていたので電話して日経を届けてもらった結果、朝日、日経、M紙の3紙を読むことができたこと、②470ページあるブレイディみかこ著「ヨーロッパ・コーリング・リターンズ」を6日間かけてやっと読み終えたこと、③東京都交響楽団から2022年度の年間チケットが送られてきたことーの3つです なお ③については、新年度の会員継続(変更)手続きをしたのに まだチケットが届いていないのは読売日響と東京シティ・フィルです

ということで、わが家に来てから今日で2588日目を迎え、Spotifyの超人気番組「The  Joe  Rogan  Experience」でコロナウイルスの誤情報を拡散し、人種差別的な暴言を吐いたとして非難の矢面に立たせられているローガン氏は5日夜に謝罪したが、トランプ前大統領は「フェイクニュースや頭のおかしい極左の連中に謝罪するのはやめるべきだ。どれだけ表現を変えて謝罪すれば気が済むんだ? ジョー、自分の得意なことに専念しろ、奴らのせいで腰抜けだと思われてはいけない。君はそんな人間じゃないし、この先も違う」と怒りを露わにした  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     どんなに悪事を働いても絶対に謝罪しないトランプには 一般人の常識が通用しない

 

         

 

昨日、夕食に「もやし巻き豚肉生姜焼き」「生野菜とツナのサラダ」「舞茸の味噌汁」を作りました 「もやし巻き~」で下に敷いているのはブロッコリースプラウトです 豚肉と相性が良くて とても健康に良いです

 

     

 

         

 

ブレイディみかこ著「ヨーロッパ・コーリング・リターンズ 社会・政治時評クロニクル  2014-2021」(岩波現代文庫)を読み終わりました ブレイディみかこ は保育士の傍らライター・コラムニストとして活躍。1965年福岡市生まれ。1996年から英国ブライトン在住。2017年「子どもたちの階級闘争ーブロークン・ブリテンの無料託児所から」で新潮ドキュメント賞を受賞    2019年「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」で毎日出版文化賞特別賞、本屋大賞ノンフィクション本大賞などを受賞 ほかに「女たちのテロル」他、著書多数あり

 

     

 

本書は、ブレイディみかこ「ヨーロッパ・コーリング ー 地べたからのポリティカル・レポート」(2016年、岩波書店版)から再録されたものに、同書刊行以降に執筆された記事を大幅に加え、文庫オリジナル版として新たに編集されたものです

本書を読んで、自分がいかに英国の実態を知らなかったかを思い知らされました ”鉄の女”マーガレット・サッチャーから引き継がれてきた新自由主義的政策と財政緊縮策のお陰で英国は政治的にも経済的にも結構うまくやっていると思っていました しかし、実際にはその緊縮政策により、ロンドン市内の住宅はミドルクラスにも手が出ないほど高騰する一方で、2000年代後半から子供の貧困率が上昇し、生活保護の打ち切りによる餓死者も出て、労働者階級からも落ちこぼれる「アンダークラス」が拡大しているといいます

2018年8月に書いた「我慢するな」で著者は次のように書いています

「新自由主義でどんどん政府が小さくなっていくと、社会の末端では政府が存在しないアナーキーな状態になると昔 書いたことがあるが、あれはまだ序の口だった   緊縮は新自由主義の最終進化形だ。こうなるともう、アナーキーどころか人命が失われる。財政というカネの問題が人命より大切になり、財政規律という経文を唱えさせられ、その道しかないと財政支出の削減を受容させられる (中略)『我慢』は道徳的に聞こえるが、闘わない言い訳になる   それは緊縮を進めたい勢力に容易に取り込まれ、利用される。何度も繰り返すが、緊縮は美徳ではない。新自由主義の呼び名が変わっただけの究極の進化形だ

ブレグジットについては、2016年6月に書いた「地べたから見た英EU離脱」の中で次のように書いています

「そもそも、反グローバル主義、反新自由主義、反緊縮は、欧州の市民運動の3大スローガンと言ってもよく、そのグローバル資本主義と新自由主義と緊縮財政押し付けの権化ともいえるのがEUで、その最大の被害者が末端の労働者たちだ だから、『大企業や富裕層だけが富と力を独占するようになるグローバリゼーションやネオリべや緊縮は本当に悪いと思うけど、それを推進しているEUには残りましょう』と言っても説得力がなく、そのジレンマで苦しみ、説得力のある残留の呼びかけができなかったとしていよいよ退任を迫られそうなのがジェレミー・コービン(労働党党首)だ

このようにして、与党の保守党ばかりでなく、野党の労働党の不甲斐なさを斬っています

2019年6月に書いた「格差とシニシズム」ではロンドン市長から英国首相に転身したボリス・ジョンソンについて書いています

「ブロンドのざんばら髪や、だらしなくズボンからシャツを出して歩く姿などから、トランプ大統領と比較されたり、アンチ・エスタブリッシュメント的と勘違いされることのあるジョンソン。だが、実はこの人ほど英国上流階級を体現する人はいない 父方の祖先には英国王ジョージ2世がおり、名門イートン校からオックスフォード大学に進んだ彼は、大学ではかの有名なブリンドン・クラブ(名門私立校出身の超エリート男子しか所属できない排他的社交クラブ)に所属していた 同クラブは上流階級の男子がタキシードで正装し、レストランで酒を飲んでは暴れることを活動内容としていた

これを読んで、「ああ、なるほどね」と思いました。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、ロックダウンを実施し国民に外出禁止を強いる一方で、官邸で何度かパーティーを開いていたことが暴露され、現在窮地に立たされているからです なお、EU離脱を国民投票にかけることを決め、投票の結果を受けて辞任したキャメロン前首相もイートン校 ⇒ オックスフォード大学コースで、同クラブのメンバーだったそうです 著者は嘆きます

「王族も通うイートン校からオックスフォードに進んだ首相がEU離脱投票の責任を取って辞めてから3年後、われわれはまた似たような出自の首相を迎えようとしている。エスタブリッシュメントと庶民の意識の乖離が、現在の英国の混迷の元凶と言われているのに、である。もちろんこれは格差の象徴でもある

著者のブレイディみかこさんはジャーナリストでもなければ経済評論家でもありません。子供たちを預かる保育士です いわば社会の底辺を支える”地べたの視点”から英国の政治や経済を見ています それだけに生活に密着した説得力のある文章が迫ってきます

本書は470ページを超える大作で、しかも内容が”固い”本なので読み終わるのに6日間かかりましたが、現在の英国を知るとともに、英国を通して日本の現状を振り返るにあたって示唆に富んだ本です 覚悟を決めてお読みください

         

今日は都内でも雪が降るらしいけど、夜サントリーホールに「読響特別コンサート」を聴きに行きます どうやら2024年末に指揮者を引退する井上道義がショスタコーヴィチ「交響曲第5番」を振るのは今回が最後らしいので、外せません もう1曲のショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲第1番」も服部百音が弾くので、なおさら外せません 幸いホールまでは地下鉄で行くので雪でも影響ありません 転ばないように気を付けねば

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角田鋼亮 ✕ 小山実稚恵 ✕ 東京フィルでラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」、リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」を聴く ~ 2022都民芸術フェスティバル

2022年02月09日 07時14分54秒 | 日記

9日(水)。昨日の日経朝刊 医療・健康面のコラム「こころの健康学」に認知行動療法研修開発センターの大野裕氏が「スリー・グッド・シングス」について書いています 「スリー・グッド・シングス」とは「その日に起きた良かったことを3つ思い出して書き出すことでこころを元気にする方法」です 大野氏は「良かったことと言っても、大げさなことでなくてもよい。日常の生活のなかで起きた、こころが少し和らぐような出来事を具体的に思い出す。ごく日常的なささいな体験が毎日夜に思い出すと、こころが元気になってくることがわかっている。その時のこころの状態になれるからだろう」と書いています 書き出すのが面倒なときは頭に思い浮かべるだけでも良いと思います 私は今夜やってみようと思います。やってみませんか

ということで、わが家に来てから今日で2587日目を迎え、米ワシントン・ポストは7日、トランプ前大統領が南部フロリダ州の別荘で、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記からの首脳間の親密さを強調した「ラブレター」を含む 現職当時の公文書15箱分を私的に保管していたことが分かり、国立公文書記録管理局が今年1月に回収したと報じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     さすがは元大統領トランプ 「公私混同選手権」があれば間違いなく世界一になれる

 

         

 

昨日の夕食は、「あごだし寄せ鍋」にしました 材料は鶏もも肉、タラ、白菜、シメジ、シイタケ、人参、長ネギ、水菜、豆腐です 寒い夜は鍋料理ですね

 

     

     

 

         

 

昨日、東京芸術劇場コンサートホールで2022都民芸術フェスティバル参加公演「甘美なメロディー 東京フィル」を聴きました プログラムは①ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18」、リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」作品35です   演奏は①のピアノ独奏=小山実稚恵、指揮=角田鋼亮です

会場は9割以上は入っていると思われます 小山実稚恵狙いの聴衆が多いのかもしれません

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの東フィルの並び。コンマスは還暦を迎えた三浦章宏です

指揮を執る角田鋼亮(つのだ こうすけ)は東京藝術大学院指揮科とベルリン音楽大学国家演奏家資格過程修了。2008年、カラヤン生誕100周年記念の第4回ドイツ全音楽大学指揮コンクール第2位入賞を果たしています

ピアノ独奏の小山実稚恵はチャイコフスキー国際コンクールとショパン国際ピアノコンクールに入賞歴があり、協奏曲とソロで精力的に活躍しています

 

     

 

1曲目はラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18」です この曲はセルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)が1900年から翌01年にかけて作曲、1901年10月27日にラフマニノフのピアノ独奏によりモスクワで初演されました。第1楽章「モデラート」、第2楽章「アダージョ・ソステヌート」、第3楽章「アレグロ・スケルツァンド」の3楽章から成ります

ラフマニノフは1895年夏に交響曲第1番を完成させ、その2年後に初演したのですが、先輩作曲家グラズノフがオーケストレーションを変更するなど手を加えたため初演は大失敗に終わり、ラフマニノフは創作意欲をなくしてしまいます そんな低迷期のラフマニノフを救い出したのは催眠療法士のニコライ・ダーリ博士でした 4か月間ダーリ博士の治療を受けたラフマニノフは創作意欲を取り戻し、ピアノ協奏曲第2番を作曲したのでした かくして、この曲はラフマニノフの名を世界に轟かせるきっかけとなる作品になりました

小山実稚恵が鐘の響きを模した和音で演奏を開始します オーケストラの伴奏が入ってきたところで、「しまった」と思いました 自席はセンターブロックのかなり前の方ですが、ピアノの蓋に反射した音がかなり強烈に飛び込んでくるので、オケとのバランスがいびつに聴こえてきます 前方の席の方が良いという人も多いと思いますが、私の場合はピアノ協奏曲に限っては後方の方が良いと思います そんなわけで、ピアノの強烈な音が耳に突き刺さって、演奏を楽しむレヴェルまで達しませんでした ただし、アンコールに弾いたショパン「ノクターン作品9-2」はごく普通に楽しむことが出来ました   ということは、曲想によって対処方法が異なるということでしょうか

 

     

 

プログラム後半はリムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」作品35です この曲はニコライ・リムスキー=コルサコフ(1844-1908)が1888年に作曲、同年ペテルブルクで初演されました 「千一夜物語」に基づく音楽で、第1楽章「海とシンドバッドの船」、第2楽章「カランダール王子の物語」、第3楽章「王子と王女」、第4楽章「バグダードの祭、海、青銅の騎士の立つ岩での難破、終曲」の4楽章から成ります

この曲は冒頭からフィナーレまでの間、要所要所でヴァイオリン・ソロによる「シェエラザードのテーマ」が奏でられますが、「三浦章宏オン・ステージ」と言っても良いほど、音色の変化に富んだ技巧を凝らした演奏が展開しました 加瀬孝宏のオーボエ、アレッサンドロ・ベヴェラリのクラリネット、高橋臣宣のホルンの演奏が素晴らしく、音によるドラマに彩を添えていました また、第4楽章の難破シーンにおける弦楽セクションの渾身の演奏は狂気迫る迫力がありました

満場の拍手に角田 ✕ 東京フィルは、アンコールにリムスキー=コルサコフ「スペイン奇想曲」から「ファンダンゴ」(多分)を色彩感・祝祭感豊かに演奏、再び満場の拍手を浴びました

         

ところで、開演前のロビーで新日本フィル定期会員で川崎市在住のSさんを発見したので声を掛けましたが、スマホに夢中でした  何かと思ったら「羽生は4回転半を失敗したらしいよ。1回転だってさ いま暫定2位だって」と言います。どうやら北京冬季五輪のフィギュアスケートの経過が気になるようです    周囲を見渡してみると結構スマホを覗き込んでいる人が目立ちます せっかくコンサートを聴きに来ているのに、オリンピックに気が取られるのはどうしたものか、と思います 私はコンサートの場合は30分前に、オペラの場合は1時間前に会場に着いたら、すぐにブログアップ用にプログラム冊子を写メしてから、スマホのスイッチを切ります 私にとってスマホのスイッチは日常から非日常へ移行するときの切り替えスイッチを意味します 終演後、会場を出たところで再びスイッチを入れることによって、日常に戻ることになります さて、皆さんはどうされていますか?  やっぱり羽生選手が気になりますか

コメント (2)
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