人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

藤岡幸夫 ✕ 宮田大 ✕ 小林沙羅 ✕ 東京シティ・フィルで吉松隆「チェロ協奏曲」、V.ウィリアムズ「交響曲第3番」、ディーリアス「2つの水彩画」を聴く ~ 第349回定期演奏会

2022年02月20日 07時18分54秒 | 日記

20日(日)。わが家に来てから今日で2598日目を迎え、緊張が高まっているウクライナ情勢について、アメリカのバイデン大統領は「ロシアのプーチン大統領が侵攻を決断したと確信している」と述べた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     かつてはトランプだった 次は習近平だった 今はプーチンだ 世界で一番危険な人物

 

         

 

昨日、東京オペラシティコンサートホールで東京シティ・フィル「第349回定期演奏会」を聴きました プログラムは①ディーリアス(フェンビー編)「2つの水彩画」、②吉松隆「チェロ協奏曲 ”ケンタウルス・ユニット” 作品91」、③ヴォーン・ウィリアムズ「交響曲第3番 ”田園交響曲” 」です 演奏は②のチェロ独奏=宮田大、③のソプラノ独唱=小林沙羅、指揮=藤岡幸夫です

 

     

 

プログラムに「出演者変更のお知らせ」が挟み込まれていました それによると、「(V.ウィリアムズ「交響曲第3番」に)出演を予定していたソプラノの半田美和子氏が前日のリハーサル後、急な体調不良に見舞われ出演を断念することになった。代わって小林沙羅氏が出演する」旨が書かれていました 開演に先立って指揮者・藤岡幸夫氏のプレトークがあり、演奏曲目に懸ける強い思いを語りましたが、最後に半田美和子さんの降板について説明しました それによると、前日のリハーサル終了後、夜9時半ごろ半田さんから電話が入り、急な胃腸炎のため出演できなくなったとの話があった 急きょ代役を選ぶことになり、小林沙羅さんに連絡を入れたところ 当該曲は歌ったことはないが 日程が空いているので代役を引き受けるとの快諾を得た 小林さんは夜10時頃、急きょピアニストを呼んで一緒に譜読みを行い、本日午前のリハーサルに臨み、午後2時からの本番を迎えた」とのことです 藤岡流に言えば「昨日・今日の話じゃなくて、昨夜・今日ですよ 大変なんてもんじゃありませんよ、アータ

会場は、いつもより客入りが多いようです 3階席まで入っています。この調子で増えて行ってほしいと思います

拍手の中、オケの面々が配置に着きます オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び。コンマスは戸澤哲夫です

1曲目はディーリアス(フェンビー編)「2つの水彩画」です この曲はフレデリック・ディーリアス(1862-1934)が1917年に書いた無歌詞・無伴奏の2つの合唱曲「夏の夜、水の上にて歌える」をエリック・フェンビーが弦楽合奏曲に編曲した作品です 第1曲「レント・マ・ノン・トロッポ」、第2曲「陽気に、だが速くなく」です

藤岡の指揮で演奏に入りますが、第1曲はディーリアスらしい抒情的な曲想、第2曲は明るく楽し気な曲想です シティ・フィル自慢の美しい弦楽合奏が夏の夜を彩ります

2曲目は吉松隆「チェロ協奏曲 ”ケンタウルス・ユニット” 作品91」です この曲は吉松隆(1953~)が、交響曲第2番の録音時(1995年)にソロを弾いて吉松を感嘆させたBBCフィルの首席チェロ奏者ピーター・ディクソンのために書いた作品で、2003年に完成、同年10月20日の関西フィル定期演奏会でディクソンの独奏、藤岡幸夫の指揮で初演されました 吉松氏によると「ケンタウルス・ユニット」とは「チェリストを半人半馬のケンタウルスに見立てた命名」とのことです 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「フィナーレ:ロンド、アレグロ・モルト」の3楽章から成ります

ソリストの宮田大は2009年、ロストロポーヴィチ国際チェロコンクールで日本人として初めて優勝 これまで参加したすべてのコンクールで優勝している逸材です

藤岡の指揮で第1楽章が開始されます 目先がクルクルと変わる変化に富んだ曲想で、ダイナミックな音楽が展開、独奏チェロが力強くエネルギッシュな演奏を繰り広げます 第2楽章は独奏チェロが琵琶のような音色を響かせ、ハープとのコラボにより力強くも美しい演奏を展開します 第3楽章はまさに東洋と西洋の融合による音楽です 宮田は超絶技巧で躍動感溢れるスケールの大きな演奏を繰り広げ、オケと絡み合いながら圧倒的なフィナーレを飾ります

演奏後、満場の拍手が宮田氏に送られ、藤岡氏から会場のほぼ中央に座っていた吉松隆氏が紹介され、大きな拍手に包まれました

鳴りやまない拍手に、宮田は宮沢賢治(宮田大編)「星めぐりの歌」をアンコールに演奏しました バッハの無伴奏チェロ組曲の有名な「プレリュード」のメロディーがアレンジされて出てくる小品ですが、宮田は軽やかに演奏、再び満場の拍手を浴びました

 

     

 

プログラム後半はヴォーン・ウィリアムズ「交響曲第3番 ”田園交響曲” 」です この曲はレイフ・ヴォーン・ウィリアムズ(1872-1958)が1921年に作曲、1922年1月26日にロンドンでエードリアン・ボールト指揮ロンドン・フィルにより初演されたソプラノとオーケストラのための作品です 第1楽章「モルト・モデラート」、第2楽章「レント・モデラート」、第3楽章「モデラート・ぺザンテ」、第4楽章「レント」の4楽章から成ります

実は、ここ数日、ボールト指揮ロンドン・フィルのCDで予習していたのですが、どうも掴みどころのない曲でどうしたものか、と思っていたのです それはこの曲の全楽章が「モデラート(適度に)」か「レント(遅く)」で書かれており、「アレグロ(速く)」楽章がないからであることに気が付きました プレトークで藤岡氏は「演奏中、絶対に眠らせない」と決意表明していましたが、全体的にゆったりした曲を どのような演奏をするのでしょうか。興味津々です

 

     

 

藤岡氏の指揮で第1楽章が開始されます 冒頭、木管楽器のアンサンブルが幻想的な音楽を奏でます この楽章ではフルートの竹山愛、オーボエの本田啓佑、コーラングレの高橋舞の演奏が光りました 第2楽章では中盤における松木亜希のトランペットが第一次世界大戦で犠牲になった兵士への追悼のように響き渡りました 終盤には同じメロディーが谷あかねのホルンによって抒情的に演奏されました 第3楽章は全曲の中で異質な曲想で、スケルツォのように激しい音楽が展開します 「モデラート」の割には速めのテンポだと感じました この楽章の終盤に、小林沙羅が2階正面パイプオルガンの上手に白いドレス姿で現れ、スタンバイします 第4楽章に入ると、小林沙羅のソプラノ独唱(レチタティーヴォ)が2階席から降ってきます なんと美しくノーブルな歌声だろうか 彼女は歌い終わると一旦引き上げ、渾身の管弦楽の演奏が続きます。すると今度はパイプオルガンの下手に小林が現れ、オケと共にフィナーレに向かいます 第1ヴァイオリンの弱音とソプラノとが交じり合って静かに会場の空間に消えていきます 藤岡がタクトを降ろすと、会場溢れんばかりの拍手が小林沙羅と藤岡 ✕ 東京シティ・フィルの面々に押し寄せます    背筋が寒くなるほどの感動のフィナーレでした

この日のコンサートは、大好きなディーリアスの小品が聴けたし、宮田大のスケールの大きな演奏も聴けたし、滅多に演奏される機会のないヴォーン・ウィリアムズの交響曲が藤岡幸夫の指揮で聴けたし、大満足です それにしても、前日の夜に代演の依頼を受けて、その日の夜10時にピアニストを読んで譜読みを行い、翌日午前のリハーサルに臨んで、午後の本番を迎えた小林沙羅さんのプロ根性には敬服するしかありません 歌う内容が歌詞ではなく(分かりやすく言えばスキャットのようなもの)歌う時間も短いとは言え、初めて歌う歌を短時間で本番まで持っていくには、高度な歌唱力に加え、普段から「いつ何があっても対応できる準備」が出来ていなければなりません その意味では小林沙羅こそ真のプロフェッショナルと言えるでしょう

 

     

コメント
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