人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

原田マハ著「常設展示室」を読む ~ ピカソ、フェルメール、ラファエロ、ゴッホ、マティス、東山魁夷の絵画をモチーフにした6つの物語 / 新型コロナワクチン3回目接種券届く

2022年02月19日 07時20分14秒 | 日記

19日(土)。昨日、豊島区から「新型コロナウイルスワクチン接種券(3回目)」がやっと届きました 2回目接種が昨年7月4日だったので7か月以上経ったことになります さっそく豊島区のホームぺージにアクセスして来週火曜(22日)午前9時45分に近所のA中学校跡地で摂取するよう予約しました 1回目、2回目と同様モデルナにしました。また熱が出るんだろうな、と思いますが、当然 この日と翌日はコンサートの予定は入れていません

ということで、わが家に来てから今日で2597日目を迎え、ニューヨーク州の最高裁判所は17日、ドナルド・トランプ前米大統領と息子のドナルド・トランプ・ジュニア氏、娘のイヴァンカ氏の3人に対し、トランプ一族が経営する「トランプ・オーガニゼーション」が「資産評価で詐欺や誤情報」を通じて税制優遇措置や融資を獲得した疑いで、民事調査で証言するよう命じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプ一族のことだから 不服申し立てをしたり 黙秘権を行使したりするんだろ

 

         

 

昨日、夕食に2週間に一度のローテにより「鶏の唐揚げ」を作りました 今回は栗原はるみ先生のレシピによる「うまみ醤油」に半日漬け込んでから揚げたので、とても美味しく出来ました

 

     

     

         

 

原田マハ著「常設展示室」(新潮文庫)を読み終わりました 原田マハは1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史科卒業。伊藤忠商事、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館勤務を経て、2005年「カフーを待ちわびて」で日本ラブストーリー大賞を受賞し作家デビュー 2012年「楽園のキャンヴァス」で山本周五郎賞、17年「リーチ先生」で新田次郎賞を受賞しています

 

     

 

本書は著名な画家の描いた絵画をモチーフにして書かれた6つの短編から成ります

ピカソ「盲人の食事」をモチーフに書かれた「群青 The Color of Life 」は、ニューヨークの古いアパートで暮らす美術館のキュレーター(学芸員)をしている35歳の独身女性・美青(みさお)が主人公です 美青は障碍者向けのワークショップに力を入れますが、急激に視力の衰えを感じます 美術を扱うキュレーターに緑内障は致命的でした。障碍を持った子供たちと一緒にピカソの「盲人の食事」を前にした美青は、子供の頃に見た時に「あの水差しには何が入っているんだろう」と思い、「ワインが入っていますように。そうしたら、きっとこの男の人は嬉しいはずだ」と願ったことを思い出します この文章を読んだとき、「絵画というのはこういう風に観るのか」と新たな感慨を覚えました 私は目に見える”物としての水差し”しか見ていなかった、つまり何も見ていなかったのだと自覚しました

フェルメール「デルフトの眺望」をモチーフに書かれた「デルフトの眺望  A  view  of  Delft 」は、現代アートを扱う大手ギャラリーの営業部長をしている40歳の独身女性・七月生(なづき)が主人公です 仕事で世界中を飛び回っていますが、介護施設で寝たきりの父親のことが気にかかります 父親の死後、弟のナナオがポケットから何かを出してなづきに見せます。それはオランダのデン・ハーグ駅から出した「デルフトの眺望」の絵葉書でした そこには自分の字で「帰ったら、いっぱい話したいことがあります。話そう。3人で」と書かれていました 残念ながら一人欠けてしまいましたが、姉弟でいっぱい話をしたのでしょう

ラファエロ「大公の聖母」をモチーフに書かれた「マドンナ  Madonna 」は、大手ギャラリーでクリエイターをして世界中を飛び回っている46歳の独身女性・あおいが主人公です 大切な商談の真っ最中に一人暮らしをしている母親から「あのね、湯飲みが割れちゃったのよ」と電話がかかってきます 時々こういうことがあるのであおいは困っています。母親からハーモニカが壊れたので修理に出してほしいと頼まれますが、あおいは仕事で忙しく、口約束だけで失念してしまいます 訪問先のイタリアで時間が出来たので、ふと美術館に行ってみようと思いパラティーナ美術館を訪ねたあおいはラフェエロの「大公の聖母」と相対します この絵を観たあおいは、母親が病院の受付のデスクの前に貼っていた「大公の聖母」の古雑誌の切り抜き写真を思い出します そして、ハーモニカを修理に出すのを頼まれていたことを思い出します

この物語を読んで思ったのは、同じ芸術でも音楽と美術とでは大きな相違点があることです 音楽は再現芸術なので、ベートーヴェンだろうがマーラーだろうが、楽譜があり演奏者がいればいつでもどこでも再現できますが、絵画や彫刻などの美術は、本物は世界で1つしかないということです 本物以外はコピーか偽物かどちらかということ。本物を観るには、たとえ海外であっても展示してある美術館に観に行くか、日本で展覧会が開かれたときに観に行くかのどちらかしかありません

ゴッホ「ばら」をモチーフに書かれた「薔薇色の人生  La  vie  en  rose 」は、県の地域振興局内「パスポート窓口」で働く45歳バツイチの柏原多恵子が主人公です 窓口の後ろの壁には色紙が1枚飾られており、それには La  vie  en  rose と書かれています そこへフランス語ペラペラの中年男性・御手洗が現れ、この色紙をネタになぜか多恵子に思わせぶりな態度を見せます 1週間後、パスポートを受け取りに来た御手洗に誘われ一夜を共にします。パスポートがあるので身元はしっかりしているし、話によると親から受け継いだ有名な画家の絵を売ったお金で優雅に暮らしているということで、すっかり信じ込んでいました しかし、朝起きてみると、財布から現金が抜き取られ、ゴッホ展のチケットが入っていました もしや・・と思い、美術館に行ってみるとゴッホ展は終わっていました 手の込んだ新手の結婚詐欺ですが、「 La  vie  en  rose 」というよりも 「 C’est  la  vie 」(人生なんて、こんなもの)かもしれません

マティス「豪奢」をモチーフに書かれた「豪奢  Luxe 」は、現代アートギャラリーで働いていた時に、若手でIT企業を上場させたやり手の谷地に引き抜かれ、2号的な存在となっている24歳の女性・下倉紗季が主人公です 何でも買ってもらい不自由のない暮らしをしていた紗季は、パリのホテルで谷地と落ち合うことになっていました しかし、「急な仕事が入ったからそっちに行けなくなった」というメールが届きます 紗季は何度もメールをしますが返信がありません 紗季は谷地からプレゼントされたミンクのコートを羽織ってパリの街へ出ます。そして、ポンピドー・センターの近代美術館に立ち寄ります そこで、マティスの「豪奢」に出合います。「水辺に集まる3人の女性たち。中心になっているのは、一糸まとわぬ女性像。海の泡から、たったいま、ヴィーナスが誕生したのだ」。紗季は毅然と立ち上がった女神の前に佇んで、画家がこの絵に「豪奢」と名付けた真意を思います・・・この世で最も贅沢なこと。それは、豪華なものを身にまとうことではなく、それを脱ぎ捨てることだと そして、彼女はクロークの預けたミンクのコートを引き取らず、ワンピース姿で木枯らしの中へ走り出ます

これは一人の若い女性の喪失と再生の物語と言えるかもしれません。この作品を読んで思ったのは、バッハの音楽です 余計な要素をそぎ落とし 音の本質だけを残したのがJ.s.バッハの「無伴奏チェロ・ソナタ」や「平均律クラヴィーア曲集」ではないのか

東山魁夷「道」をモチーフに書かれた「道  la  Strada 」は、美術評論家でイタリアの大学の客員教授も務める42歳の既婚女性・貴田翠が主人公です 翠は「新表現芸術大賞」の審査員をしていますが、エントリーナンバー29番の作品が登場したとき、翠の心は大きく動かされます 100号の大きさの厚紙に書かれた水彩画で、画用紙をつなげて1枚の絵にしており、一本の道が描かれていました 翠は40年前の幼い頃に暮らした東京郊外の真新しい道の風景を思い出します。母親の死により、翠は一緒に暮らしていた兄と別れ、養女となって資産家に引き取られていったのでした 翠はその作品の作者・鈴木明人を探します。果たしてそれは幼い頃に生き別れた兄=本名・鈴森明人の作品でした 翠は兄を訪ねて故郷に戻りますが再会は果たされてませんでした しかし、兄には一人娘・彩が残されていました

この物語のラストは、親は死んでもその才能なり生きざまは子に引き継がれていくことを暗示していて希望が持てます

本書の「解説」を女優の上白石萌音さんが書いていますが、文章がとても上手で驚きました 「一芸に秀でる者は何とか」と言いますが、まさにマルチタレントと言えるかもしれません 彼女は「この本は美術館への招待状だ」と書いていますが、まさにその通りで、読んでいるうちに美術館に行って本物の絵を観たくなります 絵画好きだけでなく幅広く推薦できる本です

 

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