「優生思想」匿名を望む遺族

2020年01月18日 12時35分52秒 | 事件・事故

わたしたちメディアはなぜ、犠牲者の実名報道にこだわるのか。「生きた証し」を伝え、事件を社会全体で共有するため―。重度障害者19人が刺殺されたやまゆり園事件でも、クリエーター36人が放火で殺害された京都アニメーション事件でも、そう主張されてきた。(神奈川新聞報道部)

それは、命は等価であり、あるがままに尊いという通説によって立つ。やまゆり園事件の遺族は当初、障害者差別が潜在する現実を告発し、その通説自体を揺さぶり、そして匿名化を望んだ。

19人の呼称に「甲」とA~Sのアルファベットが割り当てられて始まった事件の公判。前夜、一人の遺族が3年半の沈黙を破り、「甲A」とされた末娘(当時19)の名前と顔写真の公表に踏み切った。一生懸命生きていた「美帆」の証しを残したい、と。

その決断は、命に優劣をつける被告の偏見、さらにはこの国のありようを克服するためでもあった。読者とともに考えたい。生きた証しとは、実名とは、何だろう。(神奈川新聞報道部)

【写真・記事まとめ】やまゆり園事件考~相模原障害者殺傷

繰り返す「あなた」の挿話 減じる参列者

 追悼とは、「遺影と名前に向かって祈るもの」と、神奈川県知事の黒岩祐治は考える。死者にも尊厳はあるから。

 県主催の追悼式が巡り来る毎夏、黒岩はその信念と現実との落差を突きつけられている。県職員が家族会と園の運営側に遺族の意向を確認するたび、実名による追悼は容易でないと思い知らされる。

 県は事件当初から、19人の実名を把握していた。匿名による対応を決めたのは、犠牲者の知的障害を理由に「遺族のプライバシー保護の必要性が極めて高い」と判断した県警と「歩調を合わせる」(保健福祉局)ためだった。

 黒岩は「障害者だから実名で追悼できないというのは違和感を覚える」とはがゆそうだが、「遺族の反対を押し切ってまで、実名は公表できない」と折り合ってきた。

 実名を匿いながら、しかし、19人の個性を尊重し、それぞれの死を悼むにはどうすればいいのか。県は腐心する。園職員に犠牲者の人柄について聴き取りを重ね、2017年7月の追悼式で試みたのが、生前のエピソードを紹介する次善策だった。呼称は無機質な記号でなく、「あなた」とした。

 祭壇に語り掛けるように、黒岩は670人の参列者に披露した。「寒い冬のラーメンを楽しみにしていた、あなた」「お天気が良い日の日なたぼっこが好きだった、あなた」

 以降、2回の追悼式。読み上げられたエピソードは一語一句、全く同じだった。昨夏は、入所者が19人をしのんで描いた絵を飾り、かろうじて既視感を払拭できた。今夏は未定だ。県職員は葛藤する。「本当は実名で追悼したい。事件を風化させないためにも」

参列した遺族は、3年前が12組25人、おととしが9組19人、昨年は7組10人と減じる一途だ。全国の知的障害者の家族を対象に共同通信が昨夏に実施したアンケート調査によると、8割近くが事件について「社会の関心が薄れている」と答えた。

「命は等価」の通説、揺さぶった遺族

 県警の匿名発表と県のその追認に対し、「手の合わせ方も変わり、今のような状況では一人ひとりの死を悼みにくい」(日本障害者協議会)といった批判が、障害当事者や福祉団体から集中した。

 実名報道を原則とする神奈川新聞も、「理不尽に『明日』を断たれた19人の人柄であり、生きた証し」(16年10月25日朝刊、社説)を語り継ぐには実名公表が不可欠である、と主張した。命は等価であるとも論じている。《世の中のあらゆるものの価値はすべて平等である。それぞれに尊い。みながみな心ゆくまま存在していい》(17年7月26日朝刊、1面コラム)

 こうした通説を、遺族の一人は、きれい事とみなしていた。弟を殺害された女性の談話が物語る。

 《わたしは親に弟の障害を隠すなと言われて育ってきましたが、亡くなったいまは名前を絶対に公表しないでほしいと言われています。この国には優生思想的な風潮が根強くありますし、全ての命は存在するだけで価値があるということが当たり前ではないので、とても公表することはできません》

 長男がやまゆり園に入所する男性が匿名で取材に応じ、遺族の苦悩を代弁した。「社会には、いろんな人がいますよ。悔しいが、偏見や差別をなくそうなんて、無理でしょう」。なぜ、実名を明かせないのか。「だって、いままでだって、ずっと、ひっそり生きてきたんだから」

 障害者が支援を受けながら集団で暮らす大規模施設は、欧米をまねて「コロニー」と呼ばれ、「親亡き後」の生活を託せる終生の居場所として1960年代に登場した。70年代に入ると、国や自治体はこぞって建設に乗り出す。適地とされたのは、人里離れた片田舎だった。

81年の国際障害者年を契機に当事者の人権が省みられ、脱施設化と生活の「地域移行」が唱えられるまで、コロニーブームは続く。東京五輪に沸く64年、山あいの集落に建てられたやまゆり園も、そのひとつ。3万平方メートルの敷地に並ぶ二つの居住棟に、事件前は160人が身を寄せていた。

 入所者は生前から「隠された存在」だった、と男性は明かした。

追悼された「才能」と「功績」

 京都市内、ほぼ満員の劇場。エンドクレジットに、死傷者全員の実名も並んでいた。昨秋に封切られた京都アニメーションの新作映画だった。

 共同通信によると、クレジットは「制作に参加した全員の生きた証し」(京都アニメーション)だった。場内にすすり泣く声が漏れ聞こえ、上映後に拍手も起こったという。第1スタジオの放火殺人事件から3カ月後の昨年10月、社長の八田英明は「やってきたことをフィルムに残すことはクリエーターとして大事なこと」と、会見で打ち明けた。翌11月の「お別れ会」に、2日間でファンら約1万人余りが参列したという。

 京アニ事件の犠牲者35人(当時)が一様に実名で追悼される転機は、事件40日後、京都府警が先行して公表した10人に加え、25人の実名を明らかにした昨年8月27日だった。25人は当初、やまゆり園事件の19人と同様、「遺族の意向」を根拠に警察に身元を明かされていなかった。

 実名公表を待たず、国内外から弔意が寄せられた。「我が国のアニメ界にとって、計り知れない悲しみであり、損失であります」(日本動画協会)、「京アニのアーティストは、その傑作で、世界中に世代を超えて喜びを広めている」(米AppleCEOティム・クック)といったように。

 共同通信は「あこがれの先輩」「抜群のセンスと作画技術」「クラスで3本の指に入るほど作画がうまかった」「才能がある上に勉強熱心ですごく努力をしていた」といった元同僚らの証言を配信し、神奈川新聞も社会面で「日本一のアニメーター」「絵の質支えた功労者」と見出しを打って生前の功績をたたえた。

被害者支援も「異例」だった。共同通信によると、義援金を寄せた個人や法人の税負担を軽減し、集まった33億円余りの全額が遺族や負傷者にそのまま配分されるよう、政府が制度設計した。特定の刑事事件被害者に対する寄付として、税金を優遇するのは初めての試みで、税制の公平性をめぐって国税庁内で賛否が割れたが、「被害の甚大さを踏まえ、自治体が主体となって義援金を集めることは問題ないとの結論に至った」(2019年9月18日配信)という。

記号化された19人「二重の殺害」

 「追悼って、何を悼むんだろう」。やまゆり園家族会の前会長、尾野剛志(76)は問い掛ける。一方はひとくくりに「あなた」と呼ばれて毎夏に同じエピソードが読み上げられ、他方はそれぞれの生前の功績がたたえられる。どちらの犠牲者も、当初は実名が匿われていたが、最終的に警察の対応は分かれた。支援の格差も歴然になった。

 長男の一矢(46)は、事件で瀕死の重傷を負っていた。尾野はさらに自問する。「生きた証し」ってなんだろう――。「ただ生きているだけじゃ、だめなのかな」。そして、同じ事件に遭遇した遺族の、あの告発が去来する。この国では「全ての命は存在するだけで価値があるということが当たり前ではない」という。堂々巡りだ。

 姉(当時65)を殺害された男性は、姉の知的障害を理由に、妻との結婚を相手方の親族に反対された。だから、「家族に障害者がいることで差別を受ける現実があることは知っています」。

 尾野は釈然としない。やまゆり園の19人は「人に有益かどうか」(被告の植松聖)で生殺を選別され、死後も「あるがままの生」が受け入れられないでいる。「それじゃ、二重に殺されたも同然じゃないか」

 事件の公判が今月8日、横浜地裁で始まった。一矢を除く被害者47人が「甲」「乙」「丙」にアルファベットを割り当てられ、匿名で審理されている。初公判の前夜、3年半の沈黙を破り、「甲A」とされた末娘(当時19)の名前と顔写真を手記とともに公表した母親がいた。「甲でも乙でもなく」「ちゃんと美帆という名前がある」から、と。

実名は一生懸命生きた「証し」

 美帆の呼称は16年7月の事件後、「A子さん」、「V1」、「甲A」と移り変わった。代理人の弁護士によると、これまで実名を明かせなかったのは、障害を隠そうとしたわけでない。メディアスクラム(集団的過熱取材)や、二次被害を恐れていたからだった。姓の公表は「恐い人が他にもいるといけないので」と控えた。公判で「美帆」のみの呼称を地裁に希望したが、「フルネームか匿名」しか認められず、「甲A」として審理が始まった。代理人はあらためて上申書を提出し、地裁は3回目の公判から「美帆」に変更すると決めた。遺族の願いがかなった。

 母親によると、美帆は自閉症で言葉こそ話せなかったが、物事が示されたカードや身ぶりで意思を伝えていた。児童寮に入りたてのころ、一時帰宅後に寮に戻ろうとしても「帰らない」といったそぶりで車から降りようとしなかった。2年ほどすると、リュックを背負って泣かずに帰寮できるようになっていた。面会後に「バイバイ」と手を振って見送ってくれた。「甘ったれの末娘」が、「ずいぶん大人になったな」。「親としては淋しい気持ち」もあったが、うれしかったという。16年4月にやまゆり園に入所すると、「かわいらしい笑顔で一躍人気者になった」と園職員は思い起こす。成人を控え、髪を伸ばして晴れ着姿で写真に納まるのを楽しみにしていた。

 一生懸命生きていた美帆――。「その証しを残したいと思います」。だからこそ、明らかにしたのが、実名だった。あるがままの生にほかならない。

 手記は伝える。「障害者やその家族が不安なく落ち着いて生活できる国になってほしい」「障害者が安心して暮らせる社会こそが健常者も幸せな社会だと思います」。母親は願う。「美帆の名を覚えていてほしい」。命の優劣を克服するために。

(敬称略)
文=川島秀宜
取材=竹内瑠梨 川島秀宜
企画統括=田中大樹

連載:#実名報道
 この記事は神奈川新聞と京都新聞、Yahoo!ニュースによる連携企画記事です。大きく報道される事件が発生するたび、氏名や顔写真の報道を巡って議論が過熱しています。なぜ、実名報道でメディアとユーザーは対立してしまうのか。考えるヒントとなる記事を不定期で連載します。

 

関連記事】





詩は身体に根ざした表現形式

2020年01月18日 12時29分30秒 | 伝えたい言葉・受けとめる力

詩においては、読むことと書くことが不可分な関係になる。
読むように書いたり、書くように読んだり。
それは、詩が散文に比べて、読み手の身体に根ざした表現形式だからなのだと思う。
日常生活で自分の感覚に注意を向ける機会は稀だろう。
無意識に苛立ったり、胸が熱くなったりするころがあるが、なぜそれが起きるのか、身体が今どのような状態にあるのか、よくわからないことが多い。
詩は今の自分を知るバロメーターだ。
詩からまず何を感じるか。
素直に受け取ってみよう。
歓びか、寂しさなのか。
突き上げるような興奮なのか。
詩のどの部分からその感情が湧き出しているのか、細部を観察してみる。
すると、今の自分にとって刺さる一行や、心地よい音の響きが見つかるだろう。
始めはわからなくてもいい。
「今は言葉が入ってこない」というのも、一つの発見だ。
日によって、気になる詩句も変わるだろう。
この読み方は、書き手の側になったとき「言葉の解像度」を上げる訓練になる。
一行を吟味する力を養い、表現を豊かにするのだ。
詩を通して、今の自分を知ってみませんか。
「詩のとびら」詩人 文月悠光(ふずき・ゆみ)さんの言葉


生きがいを与え合えるような絆

2020年01月18日 12時00分56秒 | 伝えたい言葉・受けとめる力

▽いったん約束したことは必ず実行する―<誓いを果たす>ことが、いちばん苦しそうに見えて、いちばん幸福な人である。
▽あまりにも厳しい社会情勢のなかにあって、常に明るく前進していく。
その姿こそ、<苦難に負けるな!>と励ます希望の存在となっていくだろう。
▽人と人との絆を、もう一度、取り戻すこと。
そこにこそ、現代における宗教の役割がある-ハーバード大学のハービー・コックス名誉教授の言葉。
▽<目の前の一人を大切にする> <絶対に見捨てない>との信念に基づいた仲間の<絆の強さ>。
▽いつでも、どこでも、誰でも、目の前に苦しんでいる人がいれば、親身に声をかける。
悩みを聞き、励ます。
▽仲間の絆は、深い信頼で結ばれた<居場所>であるとともに、新たな使命への挑戦を後押しする<跳躍台>でもある。
皆で支え合い、苦難を共に乗り越えていく。
▽長い人生の道のりにあって、人は誰しも、行き詰まりに直面したり、悩み、落ち込むことがある。
だからこそ、励まし合い、支え合いながら、共に人生の苦難を乗り越えていく、善き友、善き仲間の存在が何より大切だ。
▽人々が幸福を実現できる社会のために「共に人生を高め合い、生きがいを与え合えるような絆」が重要だ。
人間関係の希薄化や孤立化が憂慮される現代にあって、<心の絆>を広げ、使命の自覚を促し合う生き方が期待される。


民衆と民衆の相互理解が不可欠

2020年01月18日 11時24分44秒 | 伝えたい言葉・受けとめる力

▽自信こそ勝利の要件だ。
▽冬の間にこそ、どう戦い、どれほど充実した時を過ごすか、必ず来る春を確信し、どう深く生きるか-そこに勝利の要諦がある。

▽友好関係を築くためには、不断の努力と、誠実で粘り強く交流を積み重ねることだ。
永続的な良好な関係を築くためには、民衆と民衆の相互理解が不可欠だ。
とりわけ次世代を担う青年同士の交流の促進が重要になる。
▽芸術や学術、教育など多彩な分野で、より強固な友好の絆を結んでいくことが期待される。
▽生老病死や幸・不幸の問題は誰人も避けられないからこそ、生命の尊厳性を確立することが、今こそ強く求められる。
▽21世紀が生命尊厳の思想を根幹とする世紀となることを願いたい。
そのために<調和を創出>することだ。


アフガン戦争 米史上最長の18年間の犠牲者

2020年01月18日 10時48分10秒 | 社会・文化・政治・経済

アフガン戦争の犠牲者
米兵2437人が犠牲に 死者数(2020/1/11まで)
2001年10月7日に始まったアフガニスタン戦争は戦争は、前月の米同時多発テロを受けたものだ。
米史上最長の18年間
負傷者2万615人。

アフガニスタン戦争における民間人の死者(2007年以降)
3万6038人 うち空爆2万9054人
不明3848人

アフガン紛争における自爆攻撃や爆弾攻撃の被害が国内全土に及ぶ中、国連の統計によると、2018年の民間人死者数は前年から11%増えて3804人、負傷者数は7189人となった。 統計を開始した2009年以降の民間人死者総数は少なくとも3万2000人、負傷者は約6万人になるという。2019/02/24

襲撃事件が増加した2018年は、意図的に民間人を狙った攻撃による死者数も急増。大多数が旧支配勢力タリバン(Taliban)かイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」系の反政府勢力による自爆攻撃で死亡している。
これに加えて米軍と政府軍による空爆が増加したことも、民間人の死者が増えた一因となっている。国連によると、「空からの軍事攻撃」による民間人死者数は、統計開始以来初めて500人を超えた。

 アフガニスタン担当国連事務総長特別代表と国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)代表を兼務する山本忠通(Tadamichi Yamamoto)氏は、民間人の死傷者増加報告を受けて、アフガニスタンにおける「人類の惨状と悲劇に終止符を打つ時だ」と訴えた。

 アフガン紛争をめぐっては、昨年から米国とタリバンの間で、長年に及ぶ戦闘の終結に向けた交渉がカタールの首都ドーハなどで進められている。(c)AFP

-----------------------------------------------
戦闘員、民間人、ジャーナリスト…… 少なくとも50万人がイラク戦争とアフガニスタン紛争の犠牲になっていた
Daniel Brown (ダニエル・ブラウン)
Business Insiderの軍事・防衛チームの記者兼カメラマン。以前は、シカゴ・サン・タイムズの記者として速報ニュースや犯罪を担当。また、スタンディングロックやウクライナの戦争の最前線でフリーランスとして活躍した。メディールジャーナリズムスクールで修士号を取得。

レポート全文はこちら

アメリカが現在、テロとの戦いを進めている76の国の中でも、イラク、アフガニスタン、パキスタンの3カ国は犠牲者の数が飛び抜けて多い。
2003年3月には、核兵器を含む大量破壊兵器を保有しているとしてイラクに侵攻、サダム・フセイン体制を転覆させた。米軍は2011年に撤退したが、その後、ISISが台頭、再度展開している。
米軍 6951人。
イラク: 4550人
アフガニスタン:2401人
パキスタン:0
また、国防総省の民間人も、アフガニスタンで6人、イラクで15人、合わせて21人が死亡したという。
アメリカの請負業者 7820人
イラク:3793人
アフガニスタン:3937人
パキスタン:90人
それぞれの国の兵士と警察官 10万9154人
イラク:4万1726人
アフガニスタン:5万8596人
パキスタン:8832人
同盟国の兵士 1464人

イラク:323人
アフガニスタン:1141人
パキスタン:0
民間人 24万4124~26万6427人

2018年には首都カブールを中心に、少なくとも65件の自爆攻撃が発生。アフガニスタン全土では、民間人2200人以上がタリバンなど反政府勢力による攻撃の犠牲になった。
イラク:18万2272~20万4575人
アフガニスタン:3万8480人
パキスタン:2万3372人
敵対勢力の戦闘員 10万9396~11万4471人

イラク:3万4806~3万9881人
アフガニスタン:4万2100人
パキスタン:3万2490人
ジャーナリスト及びメディア関係者 362人
 

2018年9月7日。

Reuters
イラク:245人
アフガニスタン:54人
パキスタン:63人
人道支援機関やNGOの職員 566人
イラク:62人
アフガニスタン:409人
パキスタン:95人
合計 47万9858~50万7236人
フガニスタンで起きた自爆攻撃で
イラク:26万7792~29万5170人
アフガニスタン:14万7124人
パキスタン:6万4942人


いまだ行き先決まらぬ鳥谷敬

2020年01月18日 04時57分49秒 | 野球

中日は本当に手を出すべきなのか?〈dot.〉

 昨年阪神を退団し、いまだにその去就が決まらない鳥谷敬。しかしながら、一部報道では、ここへ来て中日が獲得に乗り出していると伝えられた。中日に鳥谷の活躍の場はあるのか、また鳥谷は中日にマッチするのか、現有戦力などから検証してみたいと思う。

【写真】「平成で最もカッコいいバッティングフォーム」はこの選手!

 まず、中日のショートは京田陽太が不動のレギュラーの座にある。昨シーズンも開幕スタメンこそ外れたものの、チーム3位となる140試合に出場している。特筆すべきはその守備力。記者投票によって選出されるゴールデングラブ賞の受賞こそ逃したものの、ショートでの刺殺数、補殺数、守備率はいずれもリーグトップの数字をマークしている。

 フットワークを生かした守備範囲の広さと安定したスローイングはセ・リーグでも随一と言えるだろう。気になるのはこの3年間でヒット数、盗塁数が徐々に減少している点だが、これは2番を打つ機会が多くなってバント数が増えた影響とも言える。打撃の確実性には確かに課題は残るものの、今年で26歳という年齢を考えてもまだまだ成長の可能性は高い。

 この京田を差し置いて鳥谷がスタメンで起用されるというのは誰が見ても考えにくい。球団としても獲得するのであれば、まず内野のバックアップとして考えているというのが現実的である。そこで他の内野陣を見てみると、サードは高橋周平、セカンドは阿部寿樹が昨年ブレイクを果たした。まだレギュラーとなって実質1年ということを考えると、確かに不安はあると言える。

 ただ、控えの一番手には堂上直倫がいる。内野の全ポジションを守ることができ、その堅実な守備には定評がある。打つ方も昨年は打率こそ2割台前半に終わったものの、チーム3位となる12本塁打を放った。チームが思い描いていた成長は見せていないものの、内野の控えとしては十分な存在感を示していると言える。

 ただ、それ以外の選手となると一気に格が落ちてくる。昨年はビシエド、阿部、高橋、京田、堂上以外で内野のスタメンで出場したのは福田永将、三ツ俣大樹、溝脇隼人、亀澤恭平という顔ぶれであり、亀澤は既に退団している。二軍を見ても期待の根尾昂は外野手での起用が現実的になってきており、他に有望な若手内野手となるとドラフト1位で入団した石川昂弥くらいしか見当たらないのが現状である。

球団の思惑としては、鳥谷は戦力としてだけではなく、営業面でのプラスという打算もあるだろう。一昨年、松坂大輔が入団した時にはキャンプから多くのファンが訪れ、グッズの売上もチーム内でトップクラスと大きな収益を生み出していた。現在の鳥谷であれば、出来高をつけたとしても年俸はかなり低く抑えられる可能性が高く、ある程度一軍で結果を残してくれれば十分に元は取れると考えてもおかしくない。

 以上のことを総合すると、内野手のバックアップ要員として中日が鳥谷を獲得する余地は“ないこともない”という結論になりそうだ。

 ただ、もちろん不安要素もある。チームは若返りの真っ最中であるが、その中に鳥谷が入ることで一軍の枠が一つ減り、若手の抜擢が遅れるというのがその一つだ。鳥谷の存在が根尾や石川の台頭に蓋をするようなことになると、チームにとっては大きなマイナスとなるだろう。

 そして最も大きいのは、やはり鳥谷自身が望む条件面である。抜群の実績を誇るだけに、複数年や一定の出場試合数を保証する契約を要求しているとも報じられているが、仮にそのような条件を受け入れての入団となると、チームに大きな軋轢を生む可能性も少なくない。松坂のような“陽”のキャラクターではなく、中日は地元志向が強い球団だけに、その点は注意が必要だろう。

 それを考えると、やはり最終的には鳥谷自身の問題になってくる。どんな条件でも、どんな役割でも受け入れてチームに少しでもプラスをもたらす。そのような姿勢を積極的に示すことができなければ、このまま引退が濃厚と言わざるを得ないだろう。(文・西尾典文)

●西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。


最終更新:1/17(金) 17:54