明党は「こどもの幸せを最優先する社会」をめざして、結党以来、教科書の無償配布や児童手当の創設等の政策を実現してきた。2006年には「少子社会トータルプラン」を策定し、幼児教育・保育の無償化や働き方改革などの政策を着実に具体化。昨年11月には、結婚、妊娠・出産からこどもが社会に巣立つまで、ライフステージに応じた切れ目のない政策を「子育て応援トータルプラン」として取りまとめた。
他方、「静かなる有事」「隠れた安全保障」とも言われる少子化はコロナ禍で急速に進展し、昨年の出生数は79万9728人と、1899年の統計開始以来初めて80万人を下回り、社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に直面している。また、出生率低下に加え、虐待、育児不安、産後うつ、貧困、不登校なども深刻化し、こどもの自殺者数は昨年1年間で512人と過去最悪となった。「育てる自信がない」という理由から、こどもを持ちたくないという若者も増えている。
このような我が国の危機的な状況や深刻さを社会全体で共有し、少子化を食い止めていくためには、社会全体の意識をガラッと一変させるような取り組みが必要不可欠と考える。
政府においては、こども政策の強化に向けた「たたき台」を3月末までに取りまとめ、6月の骨太方針までに将来的なこども予算倍増に向けた大枠を提示するとしている。そこで、公明党として、まず『次世代育成のための緊急事態宣言』を発令するとともに、2030年までの7年間を『次世代育成を最優先させる7年』と設定し、財源とともにその全体像を示し、国を挙げて取り組むことを提案したい。
具体的には、2023年度からの3か年を『次世代育成・集中期間』と定め、まずは以下の項目を3月末までに取りまとめられるこども政策の強化に向けた「たたき台」に盛り込み、確実に実施することを強く求める。あわせて、2030年までに、0~2歳児の保育料無償化・私立高校授業料の実質無償化・大学など高等教育無償化の段階的な拡大など、教育無償化のさらなる拡大をはじめとした「子育て応援トータルプラン」を7年間で最大限実現することを強く要望する。
1、経済的支援の強化
(1)児童手当の拡充
児童手当については、多子世帯の家計負担やこどもの教育費の負担が大きいこと等を踏まえつつ、こども政策の基盤を整備する観点から、まずは18歳までの対象年齢の拡大や所得制限撤廃に加え、多子世帯への加算を拡充すること。
(2)児童扶養手当の拡充
全てのこどもが夢と希望を持って頑張ることのできる社会を実現するため、こどもの貧困対策を総合的に推進するとともに、低所得のひとり親世帯の“命綱”である児童扶養手当については、まずは第2子以降の加算を拡充すること。
(3)高校3年生までの医療費助成の拡大
安心してこどもが医療を受けられるように、まずは国保の減額調整措置の見直しを進めるとともに地方財源を確保しつつ、高校3年生までの無償化をめざして、こども医療費助成の拡大を推進すること。
(4)「出産・子育て応援交付金」の恒久化等
妊娠期からの伴走型相談支援と、妊娠届出時に5万円分、出産届出後に5万円分、計10万円分の経済的支援を行う「出産・子育て応援交付金」を法律に位置付け、恒久化すること。妊娠・出産に係る保健医療サービスについては、費用の見える化を図るとともに、保険適用に向けた課題を整理すること。
(5)高校・大学など高等教育無償化
高校から高等教育までのこども・若者の学びを支えるため、私立高校授業料実質無償化の対象を年収910万円未満まで段階的に拡大することをめざすとともに、高校生等奨学給付金の増額や対象拡大を図ること。
また、大学などの高等教育無償化の対象範囲についても拡大することをめざし、まずは多子世帯や理工農系学部を対象に中間所得層まで拡大すること。
(6)学校給食の無償化
食のセーフティネット並びに経済的支援強化の観点から、学校給食の無償化をめざし、実態を把握するとともに課題を整理すること。
2、子育てサービスの拡充
(1)専業主婦家庭も定期的に利用できる保育制度の創設
0歳から2歳までの幼児教育・保育の無償化とともに、就業の有無にかかわらず利用できる制度の構築をめざし、保育所の空き定員や幼稚園、認定こども園、地域子育て支援拠点などを活用し、専業主婦の家庭も定期的に預けられるよう、モデル事業を実施し、その結果を踏まえ、速やかに全国展開を図ること。
(2)こども・子育て 支援の質の向上と量の拡充
幼児教育・保育をはじめとするこども・子育て支援の質の向上を図るため、保育士等の配置基準の改善や、処遇改善等を行うとともに、人材育成・確保策を講ずること。
待機児童を解消するため、「新・子育て安心プラン」を実行し、小規模保育や企業主導型保育、病児・病後児保育など多様な保育の受け皿を整備・拡大するともに、共働き家庭等の「小1の壁」を打破するため、全ての希望するこどもが放課後等を安心・安全に過ごし、多様な体験・活動を行うことができるよう、質の向上を図りつつ、「新・放課後子ども総合プラン」を着実に実施すること。
産後ケアや一時預かり保育、家事支援、伴走型支援等子育て世帯の多様なニーズに対応するサービスを確保するため、必要な量を把握するとともに、地域・民間・行政が一体となってサービスの量的拡充に取り組む地方自治体をハード・ソフト両面から支援する仕組みを創設すること。
3、働き方改革の推進
(1)育児休業制度の拡充等、自営業やフリーランス等の支援、時短勤務制度の拡充
正規・非正規など雇用形態にかかわらず育児休業を取得できるように取り組みを進めるとともに、出産・育児のために離職した方や、フリーランス、自営業者、専業主婦など、現行制度の対象外となっている女性に対する新たな支援策を講じること。
また、こどもが3歳になるまでの制度となっている現在の「短時間勤務制度」などを就学前まで利用可能にするとともに、短時間勤務しながら育児休業給付金を受給できる制度を創設すること。
(2)男性育休の取得促進等
女性のみならず、男性も育休を取得し、男性が子育てするのが当たり前となるよう、男性育休取得率目標(2025年50%、30年85%)を引き上げるとともに、男女ともに育児休業給付金の給付率を一定期間8割(実質10割)に引き上げること。その際、中小企業や小規模事業者等においても育休取得が進むよう、代替要員確保策も講ずること。あわせて、夫婦で家事・育児負担を分担するため、男性の残業免除や短時間勤務制度やフレックスタイム制度などの積極的活用を促す方策を講ずること。
4、若者の経済的基盤の強化
(1)貸与型奨学金の減額、返還制度の拡充等
貸与型奨学金(無利子・有利子とも)を返還中の既卒者が、結婚、子育て等のライフイベントにも対応できるよう、月々の返還額を変えられる柔軟な返還制度(減額返還制度)の年収要件を見直し、対象を拡大するとともに、マイナンバーを活用し、プッシュ型で減額返還や猶予等の制度利用につなぐ仕組みを構築すること。あわせて、地方創生や人材確保の観点から、奨学金負担軽減を図る取り組みを強力に推進すること。
(2)若者のセーフティネットの強化
若者の経済的基盤を安定させ、将来に希望を持てる雇用環境を整備するため、最低賃金の引き上げや男女間賃金格差の是正等賃金引き上げに向けた取り組みの抜本的な強化や、非正規雇用労働者の処遇改善や正社員への転換、社会保険・労働保険の適用拡大、同一労働同一賃金等の働き方改革などの取り組みを進め、雇用形態の違いによるセーフティネットの格差を是正する取り組みを進めること。あわせて、無料の職業訓練と月10万円の生活費等を支給する求職者支援制度など公的職業訓練の充実を図るとともに、空き家等を活用して低廉な家賃の住宅を確保できるよう取り組むこと。
5、様々な課題を抱えているこども・若者支援
いじめや不登校、貧困・虐待、障がい等様々な課題を抱えているこどもや若者が孤立せず、安心して学び、生きていけるよう、当事者を中心に、地域・福祉・教育等関係者が緊密に連携し、こどもの学習支援やこども食堂など居場所の確保やSNS・オンライン・アウトリーチ(訪問支援)を含む相談体制の強化、公教育の充実、医療的ケアを必要とするこどもへの支援、社会的養護の基盤強化、こども・若者の自殺対策の強化など、各種支援制度のさらなる拡充を図り、必要な支援に着実につなげる体制を整備すること。養育費の確保に関する取り組みなどひとり親への支援の充実を図ること。
6、次世代育成推進体制の整備
(1)「次世代育成のための国民会議」(仮称)の設置
『次世代育成のための緊急事態宣言』を踏まえ、次世代育成を最優先させる社会へと大きく転換していくため、当事者をはじめ政治・行政・経済・地域社会等各界で構成される「国民会議」を設置し、我が国の危機的な状況や深刻さを国民全体で共有するとともに、こどもの有無にかかわらず、全ての国民の皆様の理解を得ながら、こどもや子育てに優しい社会づくりに向けた国民運動を推進すること。
(2)こどもや若者・子育て当事者参画による政策評価の実施
政策の推進にあたっては、こどもや若者・子育て当事者に対するアンケートやグループインタビューなどにより政策効果を把握するとともに、進捗状況を適時把握し、政策効果を企画立案や予算等に反映させること。
2022年12月7日
子育て支援といえば公明党
対話のために
子育て支援といえば公明党です。古くは、教科書の無償配布、近年では幼児教育・保育の無償化など、多くの子育て施策を実現してきました。11月8日には、結婚、妊娠・出産から子どもが社会に巣立つまでを切れ目なく手厚く支援しようと「子育て応援トータルプラン」を発表。その一部は、今年度内にも実施される見通しです。
「トータルプラン」策定
結婚から出産、育児、巣立ちまで切れ目なく支える政策
ライフステージに応じた主な政策
「経済的基盤が安定せず結婚・出産に踏み切れない」「実家が遠くて周りに頼れる人がおらず、子育てできるか不安」「大学の学費負担が家計に重くのしかかる」……。子どもが生まれ、社会人として巣立つまでには、さまざまな不安や課題に直面します。
そうした子育ての実態を踏まえて具体的な政策をまとめて示したのが「子育て応援トータルプラン」です。希望する人が安心して子どもを産み育てることができるようにして、少子化・人口減少の克服にもつなげていくため、党内で議論を重ねて策定しました。
プランでは、子どもの年齢やライフステージに応じた具体策を示しています。例えば、「妊娠・出産」期は不妊治療・不育症の支援、「未就園児」期は産後ケアや訪問による家事育児支援の全国展開、「幼児教育・保育」期は0~2歳児の保育料無償化の対象拡大、「小中学校」期は将来的な30人学級の推進、それ以降は私立高校授業料の実質無償化の段階的な対象拡大や、高等教育無償化の中間所得層への拡充などを提示しました。
これまで公明党は2006年に「少子社会トータルプラン」を策定し、そこで提唱した幼保無償化など多くの施策を実現してきました。今回のプランは、今後10年を目標に実現をめざします。
今年度中にも実施へ
全国で伴走型の相談事業
妊娠・出産時に計10万円相当を支給
伴走型相談支援のイメージ
プランで掲げた政策のうち、妊娠期から子育て家庭に寄り添う「伴走型相談支援」、低年齢児に焦点を当てた「経済的支援」については、今年度中にも実施されます。両施策を一体的に行うための「出産・子育て応援交付金事業」が今月2日成立の22年度第2次補正予算に計上されました。公明党が提言していました。政府は来年度以降も継続的に実施する方針です。
伴走型相談支援では、妊娠の段階から保健師や助産師などによる面談を行い、出産までの見通しを立てて、各種サービスの手続きを一緒に確認。出産前後やそれ以降も、気軽に相談でき、状況に応じた支援(両親学級、産前・産後ケアなど)につなげる体制を築きます。
経済的支援では、妊娠・出生届時に計10万円相当を支給します。公明党の主張で、今年4月以降に生まれた子どもが対象となりました。支給方法は各自治体で検討されています。
なお、トータルプランで掲げた政策のうち、出産育児一時金の増額については、公明党の訴えを受け、政府が23年度予算に盛り込む方針を示しています。子どもの送迎バスの安全対策の強化については、22年度第2次補正予算に計上されました。
“若い世代の心に響く”
識者が評価
公明党の子育て応援トータルプランに対し、高く評価する識者の声が寄せられています(本紙11月20日付より抜粋)。
恵泉女学園大学の大日向雅美学長は「子どもの幸せを最優先する社会の構造改革に挑む決意にあふれたプラン」と指摘。「素晴らしいポイント」として、「子どもに関する政策を政治の中心に据えることを明確にした点」などを挙げています。
京都大学大学院の柴田悠准教授は「きめ細かく、多方面にわたった手厚い支援策が計画されており、さすが公明党だと感銘を受けました」と語り、「子どもたちの成育環境の保障は、日本社会の安定性や持続可能性も高めます」とプランの意義を強調しています。
日本大学の末冨芳教授は「若い世代や子育て世代の現実に根差した希望のプラン」と表明。高等教育無償化の中間所得層への拡充などが明記された点について「将来設計を考えている若い世代の心配や不安に対応した、心に響くものになっています」と述べています。