漆原将司は、島田明美を通じて、看護現場の過酷さんを知る。
明美の先輩たちの話によれば、過去の時代には、2・8闘争があったそうだ。
だが、「ニッパチ闘争」後も永遠に看護師不足は続いているのだ。
彼は、看護現場の厳しさを知るとともに、彼女から彼女が信奉する宗教団体の会合に誘われたことから、彼女との距離を取り始めた。
「あのたの人生の命題は、何なの?」その日のもスナック「リボン」で二人はデートしていた。
明美は、過酷な職場のストレス解消のために、ワインを飲んでいた。
「命題?」問われた将司は、言葉が詰まる。
明美には、明快な目的があったのだ。
それは、あくまでも恋愛感情を起点にするもではなく、彼女が信奉する宗教団体へ彼を折伏するのであったのだ。
命題は、内容が正しい場合、その命題は真であるといい、一方、内容が正しくない場合、その命題は偽であるという。
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・・・本には、そんな素朴な命題があって、思考も、探美も、挨拶も、みんな・・・ 太宰治「花燭」
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・・・そんな素朴の命題も、ふいと思い出されて、いまは、この闇の中の一寸・・・ 太宰治「八十八夜」
参考
1968年「夜勤は2人以上 月8回以内」をの命題を掲げて、看護師増員を求めて看護師達が行ったストライキが行われた。
一方では、島田明美が信奉する宗教団体では、慈悲の看護の実践者を標榜する「白樺会」が発足されていた。
慈悲の看護の実践者「白樺会」は、 「生命尊厳の世紀」の太陽と輝くとして、 3月21日が発足の記念日である。
2024年の本年は、創立者が「白樺」と命名して55年の節を刻む。
厳しい環境にあっても、強く美しく、凜として立つ「白樺の木」の清楚で気品あるたたずまいが、「抜苦与楽」の看護に従事する女性たちに重なると考えられ、「白樺」との名称とした。
抜苦与楽(ばっくよらく)とは、苦しみを取り除き、安楽を与えることを意味する四字熟語で、仏教用語。
“慈悲の看護の実践者”の白樺の使命「一人の生命を守り、慈しむ心は、そのまま、強き“平和の心”となる」と強調されている。
現代は医療の進歩により、専門性の高い看護も求められ、分野によっては専門看護師・認定看護師が誕生している。 在宅医療の拡大に伴い、訪問看護師の需要も高まっている。
<絶対に孤独にさせない>と祈り、訪問し続ける。
希望を見いだせるまで諦めない――そんな思いで、今日も患者さんの元へ向かう白樺の友が全国にたくさんいる。
「わが使命として/病める人/心の傷ついている人を/どうか 励ましていただきたい」との創立者の指導を抱き締め、看護の道を歩んできた。
これからも励まし合い、切磋琢磨しながら、妙法の看護者として成長していく―としている。