足立幸雄は、水野晃に誘われ大宮の彼のアパートへ行くこととなる。
その日、本橋一郎は大阪へ取材に行っていたので、本橋の弟の明彦が同行する。
兄弟は別々の専門新聞に携わっていた。
一郎は医療関係であり、明彦は保険関係だった。
水野も保険関係であった。
ドアーを開けると奥の部屋で赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。
「遠慮せず、上がってよ」水野が二人を促す。
奥さんが居間で赤ちゃんを抱いて立っていた。
「本橋君、久しぶりね。結婚式以来だわね」奥さんが笑顔で迎え入れた。
「あら、あなたが足立さんのね。聞いているわ。私の父と足立さんお父さんは同じ会社だっのね、偶然なのね」親しみを込めて微笑む。
「もしかして、俺より早く足立君と出会っていたら、二人は結婚していたかもしれないな」水野らしい想像性の領域である。
彼はロマンチストであり、夢を好む男であった。
3人はビールを飲み、奥さんの道子さんの手料理を食べ交歓した。
また、赤ちゃんが泣き出す。
「何で、お前は泣くんだ」水野は赤子の腹をさする。
すると泣き止んで大きな目で二人の客を見上げていた。
座布団に横たわる女の子は、水野にそっくりの瞳であった。
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